表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/123

75.イーグルの孤立:屋上への突破

緊急上昇を始めたエレベーターの中で、イーグルは急速に冷静さを取り戻した。

トリトスの魔力炸裂音が遠ざかる中、彼が持っているのは、『星渡の古書』という高額な報酬そのもの、そしてライフルと特殊な弾薬だけだ。

「魔王の野郎、手間のかかる置き土産を残しやがって。」

イーグルはコートの内側でライフルを再調整し、弾倉をセットした。

彼の目的地は、転送ゲートが待つグレイパレス郊外の廃墟へと戻るための「アーク・ゲート」の起動地点、すなわち図書館の屋上だ。

ガタンッ!

エレベーターが最上階で停止した瞬間、扉が開く前に、イーグルはエレベーターの制御盤に仕掛けていた小型の電磁パルス(EMP)発生器を起動させた。

バチバチッ!

エレベーターホールの照明が一瞬にして消え、警報システムが断続的なノイズを上げ始めた。

「よし、これで数秒は稼げる。」

イーグルは扉を蹴破り、最上階のホールに飛び出した。そこは、館長の執務室や貴重な美術品が展示されたエリアであり、警備が最も厳重な場所だ。

警備員たちが既に異変に気づき、ホールに集結し始めていた。

彼らは単なる制服警官ではなく、強化装甲エンハンスド・アーマーを身につけたプロのPMC(民間軍事会社)の人間だ。

「侵入者だ!武装しているぞ!撃て!」

警備員の一人が叫び、トリトスがエレベーターに仕掛けたEMPで完全に機能停止していない光学センサーが、イーグルの姿を捉えた。

イーグルは即座にライフルを構え、警備員の足元に向けて特殊な閃光弾フラッシュ・グレネードを撃ち込んだ。

ドォン!

爆音と共に強烈な光がホール全体を包み込み、警備員たちは視界を奪われて叫び声を上げた。

「くそっ、目潰しだ!」

その一瞬の混乱を利用して、イーグルは警備員たちを避け、屋上へと続く非常階段を一気に駆け上がった。

彼の背中には、厳重な魔力結界に包まれた『星渡の古書』が重くのしかかっている。

イーグルが非常扉を蹴破って屋上に出たとき、グレイパレスの街並みは夜明けの夜霧に包まれていた。

屋上には、転送ゲートの担当者と、彼を守るように武装した組織の工作員が二人、既に待機していた。キャンピングカーの荷台に隠されていたアーク・ゲートは、起動準備が完了し、青白い光を帯びて回転していた。

「無事か!」

フードを被った担当者がイーグルに駆け寄った。

「報酬は確保した。早く起動させろ!」

イーグルは本の入った結界を担当者に投げ渡す。

担当者はその強大な魔力に怯むことなく、即座に特殊なケースに本を収めた。

その時、屋上への扉が再び開き、強化装甲の警備員が二人、ライフルを構えて飛び出してきた。

「侵入者を確保しろ!射殺許可!」

「チッ、しつこい!」

イーグルは躊躇なく、警備員に向けてライフルの引き金を引いた。

彼の銃弾は、装甲貫通能力を持つ特殊な合金製であり、PMCの強化装甲を容易く打ち抜いた。

ドスッ、ドスッ!

二人組の警備員はうめき声を上げて倒れ伏した。

「ゲートを起動しろ!急げ!」イーグルは叫んだ。

担当者は慌ててゲートの起動キーを差し込んだ。

アーク・ゲートの光が屋上を満たし、強烈な風が発生する。

「トリトスは!?」イーグルは一瞬、図書館の下層階にいる相棒のことを思い出した。

「魔族の方はどうなってる!?」

担当者は冷徹に答えた。

「我々の仕事は本の回収のみです。あの魔族は、時間を稼ぐための捨て駒と見なされています。

生存確認は不要です。」

イーグルは怒りで顔を歪ませたが、時間はない。

転送ゲートの光は最大強度に達していた。

「クソッ、ふざけやがって……!」

彼はライフルを構えたまま、ゲートの光の中へと飛び込んだ。

グオォォォ……!

次の瞬間、屋上にはイーグルと『星渡の古書』の姿はなく、ただ倒れた警備員と、起動し終えた転送ゲートだけが残されていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ