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66.星渡の古書

欲望と金の街ブラックボックス。

そんな街の郊外のスラムにあるBARプラチナ。

バーテンダーのアリエルがグラスを磨き、トリトスはフロアの清掃をし、カウンターにはイーグルがタバコを吸って入り浸っている。

静かなBARには穏やかなJAZZが流れている。

アリエルは思い出した用にイーグルに話しかけた。

「そういえば、イーグル。組織からお前に依頼があるんだ。

ここから北の街グレイパレスの図書館で『星渡の古書』を探してほしいと言う依頼だ。

報酬は1000万クレジット。

図書館には清掃員に変装して潜入という形になる。絶対に本を開かない事が条件、やるか?」

イーグルはカウンターに肘をついたまま、咥えたタバコを深く吸い込んだ。

紫煙が天井へと立ち昇り、店の薄暗い照明に溶けていく。

「1000万クレジットか……。前の依頼で悪魔が教会の地下に隠してた裏金よりも、桁がでけぇな。」

イーグルはグラスの中の氷をガラリと鳴らし、アリエルと視線を合わせた。

彼の鋭い眼光は、いつものバーボンを求めるそれとは違い、獲物を定める猛禽類のようだった。

「グレイパレスの図書館。そこまで遠征して、清掃員。しかも『絶対に本を開かない』、か。」

トリトスはフロアを拭く手を止め、イーグルに話しかけた。

「ふむ。ただの古書であれば、開くか開かないかなど条件にせぬ。

その本には、触れた者の魂、あるいは精神に干渉する高位の魔術が施されていると見るべきだ。

報酬が破格なのは、そのリスクへの対価だろう。」

「チッ、魔王は黙ってろ。」

イーグルは毒づきながらも、トリトスの分析を否定しなかった。

彼は、この依頼のリスクを正確に把握していた。1000万クレジットという報酬は、彼の命と引き換えにしても惜しくない、非常に危険な対価だ。

イーグルは空になったグラスをカウンターに叩きつけるように置くと、ニヤリと笑った。

「報酬が1000万、そして命の保証なし。組織の連中も随分とケチになったもんだ。だがよ、」

彼は新しいタバコに火をつけ、カウンターの上に立つ。

「やる。ただし、報酬は1000万クレジットに加えて、アリエル。俺のバーボンをあと10年分、ツケにしてくれ。」

アリエルはため息をついた。

「またツケか。まあいい。組織には報酬1000万クレジットと、バーボンを人質にとったと伝えておこう。」

アリエルはそう言うと、いつものように電話を取り、組織との連絡を取り始めた。

トリトスは、やれやれと肩をすくめた。

「イーグルよ、貴様はいつも、金と酒のために命を懸けるな。我も共に行く。

もしかしたら魔術的な対処が必要になるだろう。」

イーグルは、トリトスを一瞥し、紫煙を吐き出した。

「必要ねぇよ。だが、お前がバーボン代わりになるなら、連れて行ってやってもいいぜ。グレイパレスか……。久々の遠出だ。」

イーグルはコートの内ポケットに手を入れ、特殊な弾薬が詰まった弾倉の感触を確かめた。

彼の次の舞台は、夜霧と法の街グレイパレス、そして秘密を厳重に守る図書館の闇へと移る。

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