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65.その後の『プラチナ』

イーグルが持ち帰った大量の現金がカウンターの上に山となって積み上げられ、BAR『プラチナ』には、バーボンと煙草の紫煙に加え、札束特有の紙の匂いが満ちていた。

シスターダリアは、目の前の金額に圧倒されていた。

「これほどの…!私は、このお金をどうすれば…」

「どうするも何も、お前の自由だ。悪魔から街の金を奪い返した戦利品だ。」

イーグルはバーボンを飲み干し、氷をガラリと鳴らした。

トリトスは冷静に状況を整理する。

「シスターダリアよ。ジーク神父は意識不明で病院に運ばれ、お前の証言は妄想として片付けられる。だが、神父が不在の間に、教会には復旧資金が必要になるだろう。

お前がこの金を教会の再建費用に充てるか、それともお前自身が安息の地を探すために使うか。

それはお前の選択だ。」

ダリアは札束を見つめ、静かに答えた。

「私には、このお金を私的なものとして使うことはできません。ジーク神父様は病に倒れましたが、教会は残ります。

私は、このお金を教会の名誉回復と、地下で苦しんだ魂のために使います。

そして…、イーグル様、トリトス様。本当に、本当にありがとうございました。」

ダリアは深く頭を下げ、その表情には、もはや当初の怯えではなく、強い決意が宿っていた。

イーグルはタバコを灰皿に押し付けた。

「けっ。結局、救済されたら皆善人ぶるもんだ。

まあいい。お前が納得してるなら、俺の手間賃も無駄じゃねぇ。」

シスターダリアは、札束の山からわずか1万2000クレジットを抜き取り、カウンターの上に置いた。

「このお金は、依頼料として。そして残りの全てを、教会に寄付します。」

トリトスはそれを見て、苦笑した。

「相変わらず律儀な。イーグル、お前はどうする?」

イーグルは1万2000クレジットを見て、鼻を鳴らした。

「バーボン一杯の代金にもなりゃしねぇな。だが、最初の依頼料として受け取っておく。」

イーグルは1万2000クレジットをポケットにねじ込むと、アリエルに視線を向けた。

「アリエル、この残り全部、教会の口座に送金する手配を頼む。俺のツケと、トリトスの迷惑料を引いた上でな。」

アリエルは黙って頷き、電話を取り上げた。

トリトスは、イーグルの人間的な優しさとプロフェッショナルな打算が混ざり合った行動に、やれやれと肩をすくめた。

「結局、貴様は手間賃として、この大金をルビーから現金に変えただけで、ほとんど手元に残さなかったな。」

イーグルは新しいタバコに火をつけ、紫煙を燻らせた。

「金は稼ぐ手段であって、目的じゃねぇ。

それに、手間賃を請求したおかげで、シスターダリアは良心の呵責なく大金を使える。

これこそが、完璧な救済だろ?トリトス。」

イーグルは笑った。その顔は、ただの裏社会何でも屋ではなく、複雑なルールの中で生きる仕事人のそれだった。

夜が明け、シスターダリアはアリエルに案内され、教会へと戻っていった。

BAR『プラチナ』には、ルビーの残滓が残した巨額の現金の匂いと、三人の男たちの静かな時間が戻った。

「さてと、俺のバーボンも奢りじゃなくなったな。」

イーグルはグラスを持ち上げ、トリトスとアリエルに視線を送る。

「乾杯だ。1万2000クレジットの救済に。」

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