62.シェイプシフターの断末魔と決着
イーグルが放った対戦闘機用徹甲弾は、閃光弾で動きを止められたシェイプシフターの急所を正確に捉えた。
ドッ!ドッ!ドッ!
三発の弾丸が、硬質な黒曜石の皮膚を貫通し、悪魔の内部で炸裂した。
「ガアアアアアアアアアア!!!」
シェイプシフターは、断末魔の叫びを上げ、その巨大な黒い体躯は激しく痙攣した。
漆黒の体表から、硫黄臭の強い黒い液体が噴き出し、冷たいコンクリートの床を汚す。
悪魔の体が、急速に萎んでいく。
巨大な角はみるみるうちに短くなり、漆黒だった皮膚は元の土気色のジーク神父の皮膚へと戻っていった。
イーグルは冷静に弾倉を交換しながら、その様子を見守る。
「……随分と簡単に剥がれる皮だな。脆弱な人間の皮に戻りたかったか。」
完全に変身が解け、床に倒れたのは、意識を失ったジーク神父の姿だった。
彼の額には、悪魔の角が突き出ていた場所の皮膚が、ひどくただれている。
イーグルの銃撃によりシェイプシフターが倒れたのを確認すると、トリトスは浄化の呪文を唱え終え、地下室のおぞましい研究施設へと魔力を解放した。
「万象よ、穢れを払え(アブソルート・パージ)」
トリトスの紫色の魔力が、地下室全体に波紋のように広がり、壁沿いに並ぶフラスコや実験台、そして残っていたキメラの死骸全てを光の塵に変えていった。
空間を満たしていた硫黄と腐敗の匂いが薄れ、清浄な空気に入れ替わっていく。
イーグルは倒れているジーク神父を見下ろし、トリトスに尋ねた。
「おい、この神父はどうする?警察沙汰になるのは面倒だぜ。」
トリトスは、浄化作業を終えてから神父の前に歩み寄った。
「我の仕事は悪趣味な実験を止めること。そして、この神父を解放することだ。イーグル、記憶の処理を頼めるか?」
「……チッ。魔族の仕事を人間がやるってのは、どうにも気に入らねぇがな。」
イーグルはそう毒づきながらも、ライフルをコートの内側に収め、神父の意識に干渉するための特殊なデバイスを取り出した。
人間の科学技術による記憶操作は、魔族の魔法によるものよりも痕跡を残さない。
トリトスは神父を抱き上げ、彼を元の寝室に戻す手筈を整えた。
「我らは、聖ホワイトクリスタル教会を襲ったのは、泥棒と火災の痕跡を残す。
シスターダリアの報告は、神父の精神的な疲弊による妄想として処理されるだろう。
教会から金脈が途絶えれば、奴を追っていた信奉者たちも消える。」
トリトスは静かに言った。
「これで、1万2000クレジットの依頼の裏側で街全体を救ったことになる。救済とは、手間のかかるものだな。」




