61.イーグル、地下へ
トリトスがキメラの群れと対峙し、戦闘態勢に入ったその瞬間、教会の上階から激しい銃声と破壊音が響いた。
ドォン!ガラガラッ!
「ちっ、こんな面倒な悪趣味に巻き込まれやがって!」
トリトスが振り返る間もなく、崩れた天井の穴から一筋の影がロープを伝って地下へと降下してきた。全身にタクティカルベストを着用し、アサルトライフルを構えて着地したのは、コート姿のイーグルだった。
イーグルは、口元で咥えていたタバコを指で弾き、紫煙を立ち昇らせる。
彼の鋭い眼光は、地下の実験場と、おぞましいキメラの群れ、そして漆黒のシェイプシフターを順に捉えた。
「アリエルがよ……『嫌な予感がする。トリトスは面倒な案件に首を突っ込んだようだ』とため息交じりでな。保護をトリトスに押し付けられたシスターダリアは、俺のバーボンを見ながら神に祈ってるぜ。」
トリトスは肩をすくめた。
「我は賭けに負けたのでな。お前の助けは助かるぞ、イーグル。見ろ、この外道な実験の産物を。」
トリトスは、猛禽類の頭を持つキメラに紫色の魔力弾を撃ち込み、その身体を吹き飛ばしながら答える。
イーグルはライフルを肩に固定し、シェイプシフターに銃口を向けた。
漆黒の悪魔、シェイプシフターは、突如現れた新たな敵に苛立ちを覚えた。
その敵が魔力を持たぬ人間であるにも関わらず、その手中にある兵器から感じる破壊力に、本能的な警戒心を抱いた。
「余計な邪魔者が!トリトスよ、鉛玉を頼るとは、随分と落ちぶれたな!」
「我の仲間は効率重視でな。さて、貴様には一番面倒な奴がお似合いだ。」
トリトスがそう言い放つと、イーグルはニヤリと笑った。
「言われるまでもねぇ。トリトス、雑魚の片付けは任せたぞ。
この黒いドブネズミは、俺の最新の玩具で相手してやる。」
イーグルはライフルを構え直し、シェイプシフターに向かって一歩踏み出した。
「お前が教会で何をしようと知ったこっちゃねぇがな。俺の呑み代をケチらせる奴は許さねぇ。
それに、この騒ぎはすぐに終わらせてもらうぜ。」
シェイプシフターは巨大な爪を変形させ、イーグルに突進する。しかし、イーグルは冷静だった。
ドガガガガ!
イーグルが引き金を引くと、ライフルから特殊な徹甲弾が連射され、シェイプシフターの黒曜石のような体表に火花を散らした。通常の弾丸ではない。
それは、対戦闘機用に加工された高威力の弾薬だった。
悪魔の体が僅かに揺らぎ、悲鳴を上げる。
「グアァッ!この忌々しい金属が!」
一方、トリトスはキメラの群れを殲滅し始めていた。
トリトスは両手から紫色の魔力の鎖を放ち、複数のキメラを同時に拘束する。
その鎖には、魔族にとって強烈な毒となるエネルギーが込められており、キメラたちは痙攣しながら次々と倒れていった。
「我の邪魔をするな、外道よ。我は貴様の悪趣味な実験を止める。
それが、貧乏なシスターからの1万2000クレジットの依頼の裏側で貴様が1万2000倍の悪事を働いた代償だ!」
トリトスは、残るキメラの檻に向かい、浄化の呪文を唱え始めた。
彼の目的は、戦闘ではなく、このおぞましい研究の破壊へと切り替わっていた。
「させん!」
シェイプシフターはトリトスの動きを止めようと、イーグルを振り切り、巨大な闇のエネルギーボールを生成した。
「そいつはさせねぇよ!」
イーグルはライフルを背中にマグネットで固定すると、腰からグレネードランチャーを引き抜いた。
カシャン!
イーグルは即座に閃光弾を装填し、シェイプシフター目掛けて撃ち込む。
パンッ!という音と共に、閃光弾は悪魔の目の前で爆発し、強烈な光と音波を放った。
「グオオオオオオ!!!」
高位の悪魔であっても、この物理的な衝撃と光は回避できなかった。
一瞬視界を奪われ、よろめいたシェイプシフターを視界に捉え、イーグルは即座にライフルに持ち替える。
「残念だったな、シェイプシフター。お前らは魔力に頼りすぎだ。」
イーグルは、冷静なプロの目で悪魔の急所めがけて、対戦闘機用徹甲弾を三点バーストで撃ち込んだ。




