58.1万2000クレジットの救済
ある日の夜のBAR『プラチナ』。
バーテンダーのアリエルがいつも通りグラスを磨いている。
カランカラン!
扉のカウベルが鳴ると、ぶっきらぼうにアリエルが「いらっしゃい」と言った。
扉を開けたのはイーグルだった。
イーグルはカウンターに座ると、咥えていたタバコに火をつけて一言「バーボン、ロックで」と言った。
アリエルはため息を付きつつもグラスにバーボンを注ぎ、イーグルの前に差し出す。紫煙が店内をゆっくりと漂う。
その合間に、またカウベルが鳴る。
カランカラン!
「いらっしゃい」
またしてもぶっきらぼうにアリエルが言うと、人間に変装したトリトスだった。
「うむ……、15分前だな。今日もよろしく頼む、アリエル。」
そういうとトリトスはバックヤードに着替えに向かった。
イーグルはアリエルに話しかけた。
「……、魔法は禁じたのか?」
「あぁ、手間ではあるだろうがこのBARでは、俺がルールだ。」
アリエルはそう言って違うグラスを手に取る。
カランカラン!
カウベルが店内に響く。
「いらっしゃい」
扉から入ってきたのはフードを被った客だった。
フードを被った客は静かにカウンターに座ると、バーテンダーアリエルに1枚の紙切れを渡してきた。
アリエルはその紙切れを見ると、フードの客を奥の部屋に連れていった。
代わりにトリトスがカウンターに立つように伝えて。
カランカラン!
カウベルが忙しくなる中で扉が開く。スーツの男が2人BARに入ってきた。
スーツの男はカウンターに近づくとトリトスに話しかけた。
「ここにフードを被ったやつが来なかったか?」
トリトスはイーグルに酒を注ぎながら答えた。
「……、きてないな。見ての通り閑古鳥が鳴いておる。貴様らも飲んでいくか?」
男達は舌打ちをすると、店を後にした。
「アリエルよ、奴らは出ていったぞ。」
トリトスがそういうと、奥からアリエルとフードを被った客が出てきた。
「……、ここには俺達しかいねぇ。そろそろフードを取ったらどうだ?」
イーグルがバーボンを飲みながら話す。
フードの客は頷きフードを脱ぐ。
「私はシスターダリア。お願いします!助けてください!」
「……、金はあるんだろうな?」
イーグルは鋭い眼光を光らせ、シスターダリアを見ながら答える。
ダリアは懐を探ると、財布を取り出しイーグルに渡す。
「……、1万2000クレジットか。」
イーグルは中身を確認しタバコの煙を吐くと、財布をダリアに返す。
「シスターダリア。申し訳ないが、この金額では依頼を受けられない。」
アリエルは申し訳なさそうに頭を描いた。
「それなら、助けてくれそうな方を紹介して下さい!私には時間がないんです!」
その時、トリトスがダリアに話しかけた。
「シスターダリア、我と賭けをしないか?
なに、簡単な賭けだ。
我は今から貴方に催眠術をかける。
貴方には我が化け物に見えるようになる。その姿を見ても助けを求めるなら、貴方の勝ちだ。」
ダリアはコクリと頷く。
トリトスは、顔面の皮膚を自分の手で勢いよく剥ぐと、紫色の肌に角が2本、青色の髪をなびかせ目は緑色に光っている。
ダリアはその姿を見ても尚、
「お願いします!助けてください!」と懇願した。
「よかろう、貴方の勝ちだ。我が依頼を受ける。アリエル、イーグル異論ないな?」
トリトスはそう言うと、2人を見た。
2人はやれやれと肩を竦め頷いた。
「シスターダリアよ。依頼を話せ。」
トリトスはダリアをカウンターに座るように促した。
ダリアはカウンターに座り口を開く。
「私の務めている場所は、街の中心にある聖ホワイトクリスタル教会です。ここは数多くの有権者の方々の支援で成り立っています。
しかし、私の直属の上司であるジーク神父がある日、人が変わったようになりまして……。
原因を探っていたら、さっきの人達に追われるようになりました。」
トリトスは暫く考えると疑問を口にした。
「情報が足らん。アリエルよ、今回は魔法を使わせてもらうぞ。」
「上手くやるならいいぞ。」
アリエルはため息をついた。
トリトスは手をダリアの前に突き出し呪文を唱えた。
「少しだけ、頭の中をみせてもらうぞ。
……。なるほど、コイツがジークか。暫く尾行が必要だな。」
トリトスは突き出した手を自分の顔の前に持っていき、別な呪文を唱えた。
すると、トリトスの身体が透明になっていった。
「アリエル、イーグル、ダリアの保護を頼む。
我は今からジークを尾行する。」
そういうと扉が開閉され、カウベルが店内に響いていった。




