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51. 嵐の前の静寂:最終確認

翌日の夜。

BARプラチナには、昨日とは異なる種類の静けさが漂っていた。

外はまだ降っていないものの、明後日から始まるという雨を予感させる、重い空気が窓の外に広がっている。

カウンターには、ローズとトリトス、そしてアリエルとイーグルの四人が揃っていた。

皆、普段着ではあるが、その瞳の奥にはこれから挑む任務への集中と、わずかな緊張が張りつめている。

アリエルは磨かれたグラスを眺め、イーグルは紫煙を静かに吐き出す。

トリトスはグラスを拭きながら、四人の間に横たわる静寂を意図的に破ろうとはしなかった。

ローズがその沈黙を破った。

彼女はウィスキーを一口飲み、満足げに微笑んだ。

「全員、予定通りね。準備は万端かしら?」

アリエルがぶっきらぼうに応じる。

「問題ない。ティアマトの巡回ルートと、鉱脈の入り口は特定した。

ムーンストーンを収める零度シールドケースのチェックも終えている。

あとは、いかに音を立てずに岩を削り取るかだけだ。」

イーグルはタバコを灰皿に押し付けながら、鋭い視線を向けた。

「ネイビーフォレストの洋館の構造は頭に入れた。アイザック・ゲイルのセキュリティは複雑だが、弱点もある。

『奈落の果実』の本物と贋作を見分ける微細なサインのパターンも、シミュレーション済みだ。

必ず本物を掴む。」

トリトスは静かにグラスをカウンターに置いた。

「我とローズの任務、『ミルストンの遺産』は、深度500メートルの旧ディープサファイア研究所。

特殊な磁場を用いた非接触ポッドの調整は済んでいる。

我が水中での作業中、ローズは、未知の脅威、あるいは研究所の残存セキュリティへの対処を頼む。」

ローズはトリトスの言葉に満足げに頷いた。

「私の役割は、水中での護衛と、不測の事態への『契約の履行』よ。誰も死なせない。

—特に、初仕事のパートナーをね。」

ローズの言葉には、トリトスへの信頼と、彼を試すようなニュアンスが混ざっていた。

トリトスは表情を変えず、ただ静かにグラスにウィスキーを注ぐ。

その琥珀色の液体は、作戦開始前の緊張を映し出すように鈍く光っていた。

「全員、健闘を祈るわ。次、このBARで四人が揃って酒を交わすのは、全ての獲物を手に入れた後よ。」

ローズはそう言うと、立ち上がった。

「解散。各自、明日からの任務に備えて休息を。…特に、雨を味方につけるのは、私たち側の人間だということを忘れないで。」

ローズが扉に向かうと、トリトスとイーグルも立ち上がった。

静かに、しかし確かな決意を胸に、彼らはそれぞれの戦場へと向かうため、BARプラチナを後にした。

アリエルはカウンターに一人残り、流れるジャズの音だけが、嵐の前の静寂を優しく包んでいた。

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