48. アリエルの情報収集と装備品の準備
BARプラチナを出たアリエルは、すぐに人影のない裏通りでタブレットを取り出した。
彼のぶっきらぼうな態度の裏側には、仕事に対する冷徹なプロ意識が隠されている。
情報収集:ティアマトの監視とエメラルドマウンテン
アリエルが最初に調べたのは、採掘権を持つ組織ティアマトについてだ。
「ティアマト…東方系の密輸組織。
金と宝石の採掘を主な資金源とする。
武装は重いが、監視体制は機械よりも人的リソースに頼る傾向があるな。」
タブレットの画面には、山脈の航空写真とティアマトの巡回ルートの予測図が重ねられていく。
「エメラルドマウンテンの旧鉱脈は、入り口が一つしか残っていないはず。
奴らはそこを集中的に監視している。だが、それは表向きだ。」
アリエルは地図を拡大し、誰も気づかないような山肌の小さな窪みに目をとめた。
旧鉱脈が使用されていた時代に、資材搬入に使われていたであろう廃棄された通気口だ。
「ここだ。メインルートからの潜入は正面衝突のリスクが高すぎる。
鉱脈の深部に直接通じるこのルートを使う。」
次に、標的である『虹色のムーンストーン』の特性を調べる。
「光に敏感、衝撃に弱い。少しの揺れで輝きが失われる…デリケートすぎる。」
アリエルは、採掘と運搬の方法について深く思考した。
物理的な衝撃だけでなく、温度や湿度も考慮する必要がある。
通常のケースでは確実に失敗するだろう。
装備品の選定:無音と精密
アリエルは情報収集を終えると、信頼できる裏ルートを通じて必要な装備を手配した。
彼の任務は「潜入」と「精密作業」に特化する必要がある。
静音型潜入スーツ: 特殊繊維で作られた全身スーツ。周囲の環境熱を吸収し、暗視装置からの熱反応を極限まで抑制する。動きの摩擦音もほぼゼロ。
超振動カッター(小型): ムーンストーンの周囲の岩盤を傷つけずに切り出すための特殊ツール。
微細な振動で岩を削り取るため、採掘音はほぼ無音だが、作業には極度の集中力が要求される。
零度シールドケース: 宝石を光、衝撃、温度変化から守るための特製運搬ケース。
内部には特殊なゲル状のサスペンションと、光を完全に遮断する多層構造の遮蔽材が用いられている。また、ムーンストーンが最も安定するであろう一定の低温を保つ機能が搭載されている。
改良型多機能ゴーグル: 暗視、赤外線、そしてティアマトが使用しているであろう無線周波数をキャッチする盗聴・監視用機能を統合。
「潜入は通気口から。ムーンストーンの採掘は、呼吸も止めるほどの集中力が必要になる。」
アリエルは全ての装備が整ったことを確認すると、明日夜の集合に備え、BARの別室で静かに待機した。
彼の視線は、既に東の山脈、深い闇に包まれた鉱脈の奥深くへと向けられている。




