45.ローズ、再び
BARプラチナ。バーテンダーのアリエルがグラスを磨き、同じくバーテンダーのトリトスがカウンターにいるイーグルに酒を注ぐ。
イーグルはタバコを吸って入り浸っている。
静かなBARには穏やかなJAZZが流れている。そんな穏やかな雰囲気を破る様に、BARの扉が開いた。
「いらっしゃい。」
アリエルがぶっきらぼうに言うと、扉を開けたのはローズだった。ローズはカウンターに座るとトリトスに話しかけた。
「アンタがトリトス? 私はCodename:ローズ。アリエルとイーグルはビジネスパートナーよ。いずれアンタともパートナーになるかもしれないからよろしくね。」
トリトスはローズのタバコを咥える姿を静かに見つめた。
その表情は無感情にも見えるが、わずかに口元が動いた。
「パートナー、か。」
トリトスはそう呟くと、ローズの前に立つと、グラスにウィスキーを注ぎ始めた。
その手つきは流れるような美しさがあり、カウンターに置かれたグラスに琥珀色の液体が満ちていく。
「我はトリトス。BARプラチナのバーテンダーだ。それ以外の肩書は、現時点では必要ない。」
グラスをカウンターにそっと置くと、トリトスはローズの眼差しをまっすぐに見返した。
「我らがビジネス、その本質は酒を媒介とした契約だ。
どのような関係になるか、それは時の流れが決めるだろう。
しかし、今、この場所では、一献の酒を交わすことが、最良の挨拶だ。」
そう言ってトリトスは、自身もグラスを手に取り、静かにローズに向かって掲げた。
「歓迎する、Codename:ローズ。BARプラチナへようこそ。」
イーグルは、紫煙をゆっくりと吐き出しながら、その一連のやり取りをまるで舞台を見ているかのように傍観していた。
タバコの灰が、吸い殻入れへと静かに落ちる。
「…まぁ、警戒するのはわかるが。ローズ、まずは品定めだろ。」
イーグルは、煙の合間からローズに向けて、ニヤリと笑った。
鋭い目つきの中には、好奇心と警戒が入り混じっていた。
アリエルは、カウンターの奥でグラスを磨く手を止めず、無言でその場を見守っていた。
彼のぶっきらぼうな態度とは裏腹に、店内の空気は再び穏やかなジャズの調べに包まれ始めていた。
新しい波紋が、静かな水面に広がり始めた瞬間だった。




