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35.過去の残骸、未来の光

地下の研究室「D-7」。アリエルは、視界を奪う白い煙の中で、幻覚と戦っていた。

脳裏には、過去に奪った無数の命が血と化した滝のように流れ、耳には断末魔の叫びが響く。

イシュタルの嘲笑がその幻覚と混ざり合い、アリエルの精神を深く侵食していく。

「どうした、アリエル。その幻覚は、君が殺した人々の血の記憶だ。君は、どれだけの命を奪ってきた?その全てが、今、君の心に突き刺さっている…」

アリエルは膝をつき、呼吸が乱れる。だが、その時、遠くで聞こえたサイレンの音が、彼の意識の霧をわずかに晴らした。

それは、イーグルが率いる軍の特殊部隊だった。イーグルはイブから聞いた情報をもとに、急いで自分の部下達に連絡しこの施設に駆けつけたのだ。部隊の隊員たちが廃墟と化した研究施設に突入し、警報を鳴らす。

そのサイレンの音は、アリエルに現実を呼び戻した。彼は、幻覚の中にいた自分が、かつての暗殺者「シャドウ」の姿でいることに気づく。

「俺は…シャドウじゃない」

アリエルは震える声で呟き、過去の幻影を振り払うように、強く頭を振った。

その瞬間、別の扉が勢いよく開き、一人の女性が飛び込んできた。息を切らしながらも、彼女はまっすぐにアリエルを見つめている。

「アリエル!」

それはローズだった。彼女はアリエルの顔を見て、その苦しみを瞬時に察した。彼女は彼の傍に駆け寄り、その手を握りしめる。

「大丈夫よ。あなたは、もう昔のあなたじゃない。あなたはこの街を救ってくれた、アリエルよ!」

ローズの声が、アリエルの心を覆っていた闇を切り裂く。彼女の手の温もり、その声の響きは、彼が築き上げてきた穏やかな日々の確かな証だった。

「…ローズ」

アリエルは彼女を見つめ、少しだけ微笑んだ。彼の瞳には、もう過去の幻影は映っていなかった。

「ふざけるな…!」

イシュタルの声が、怒りに満ちて響く。彼は、アリエルの精神を完全に支配できると確信していた。しかし、目の前で起きた出来事は、彼の計算を狂わせた。

アリエルは立ち上がり、静かにローズを背後にかばう。彼のナイフを持つ手は、もはや迷いなく、かつてないほどの鋭さを宿していた。

「イシュタル…お前は、過去の幻影に囚われている」

アリエルの言葉に、イシュタルは顔を歪ませる。

「黙れ!この『黒い花』こそが、この街を、世界を変える力だ!過去の残骸に、未来の光などない!」

イシュタルは叫び、アリエルに襲いかかる。

しかし、アリエルはもう迷っていなかった。彼は、この街にいる大切な人々のために、戦う。それは、かつての任務のためではない、守るための戦いだった。

アリエルはナイフを投擲し、イシュタルの攻撃をかわしながら、彼の死角を縫うように動く。イシュタルはアリエルの動きを追うことができず、焦燥に駆られていた。

その瞬間、イーグルが率いる特殊部隊が研究室に突入し、イシュタルを包囲した。イシュタルは武器を捨て、両手を挙げる。彼の顔は、悔しさと絶望に満ちていた。

「…なぜだ…」

イシュタルの言葉に、アリエルは答える。

「俺には、守りたい未来があるからだ」

アリエルはそう言い、ローズの隣に立った。彼は、もう一人ではない。彼の周りには、彼を信じ、彼を支えてくれる仲間たちがいた。

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