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251. 【獅子の秘宝と深淵の試練】

「……改めて名乗らせてもらおう。私はグリーンライオン族の長、グラティカルだ」

ミスト村の境界線。白く濁ったカーテンのような霧が不気味に渦巻く渓谷の入り口で、巨躯の獅子が静かに口を開いた。グラティカルは、人間を優に超える大きな掌をイーグルの前に差し出した。それは、力のみを信じる獣の種族が、一人の男を対等な「交渉相手」として認めた証――握手の要求だった。

イーグルは黒のハットの鍔を指先で少し上げ、無言でその厚い掌を握り返した。黒のロングコートが、渓谷から吹き下ろす冷たい風にたなびく。

「イーグルだ。……あんたの助力には期待している。俺はあいにく、あの中を素顔で歩けるほど頑丈な体は持っていないんでな」

グラティカルは満足げに喉を鳴らすと、霧の深淵を見据えて静かに微笑んだ。

「いいだろう。我が一族に伝わっている秘宝を貸し出そう。それをつけろ」

差し出されたのは、鈍い光を放つ薄緑色のネックレスだった。イーグルがそれを首にかけると、石から淡い輝きが広がり、肌を刺すような毒気の感触が瞬時に霧散した。

「……なるほど、これが『通行証』か」

イーグルは腰のリボルバーの感触を確かめ、バックパックの中にある折りたたみ式のアサルトライフル、そしてフェネカ特製のステッキ型スタンガンの重みを感じながら、霧の中へと一歩を踏み出した。

「キキキ! 感心してる暇はないぞイーグル! まずは俺の集落に寄ってくれ。案内してやる!」

サイラスの言葉に促され、一行は渓谷の上部へと足を進める。足元には、脈打つような赤い結晶の苔が這い回り、進むにつれ周囲の光景は地獄の様相を呈し始めた。だが、異変は景色だけではなかった。

「……おい、あれを見ろ」

イーグルがリボルバーを流れるような動作で引き抜き、その銃口を向けた先。白い霧の向こうから、毒斑をまとう狼たちが、獲物を待ち構えていたかのように二匹、三匹と、音もなく姿を現した。その数は瞬く間に増え、イーグルたちを包囲していく。

「キッ……!? イーグルの匂いにつられてきたか?」

サイラスが鋭い鎌を構え、声を上げる。しかし、グラティカルは動かなかった。それどころか、悠然と腕を組み、イーグルの背中を見据えた。

「試練の時間だ。人族の戦士よ、お前さんの実力を見せてもらおう。この程度の牙に苦戦するようなら、今すぐこのネックレスを返して帰ってもらう」

グラティカルの黄金の瞳が、イーグルの力量を測るように細められる。

イーグルはハットを深く被り直し、リボルバーの撃鉄ハンマーを静かに起こした。

「……目を広げて、よく見てな」

カチリ、という硬質な音が静寂に落ちる。次の瞬間、乾いた銃声が毒霧の渓谷に響き渡った。

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