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250. 【金貨の唸りとイーグルの再来】

アストラル・ノアの目抜き通りを、アリスとフェネカは確かな足取りで歩いていた。アリスが抱える革袋からは、歩くたびに「ジャラリ……」という、一般の冒険者なら一生拝むこともないような重厚な金貨の唸りが漏れている。

「金貨400枚……これ、アリエル様に見せたらどんな顔するッスかね? フェネカ、ちょっとだけ驚かせてみないッスか?」

アリスがオッドアイを輝かせて提案すると、フェネカは笑いながら、その大きな耳を器用に動かした。

「アリエルならこの位の金貨、見飽きてると思うよ。それよりも、ローズたちが無事に帰ってきたんだ。あっちでの『ウチュウフク』や『ボンベ』について詳しく聞きたいね。あの技術、俺のメカニックとしての勘が騒ぐんだよ」

「確かにそうッスね! 未知の技術の謎が明らかになるッス! 楽しみッスねー!」

アリスは跳ねるような足取りで、金貨の詰まった袋を大事そうに抱え直した。

一方その頃、レインボー・ガルドの西端。

往復6日間の強行軍を終え、再びミスト村の寂れた酒場に姿を現したイーグルは、泥と疲労にまみれながらも、その瞳には鋭い光を宿していた。

「……待たせたな、サイラス」

酒場の扉を開けたイーグルの視線の先には、約束通り多足族のサイラス、そして彼の隣に座る一際巨大な影があった。

深い緑の毛並みに、威厳に満ちた鋭い眼光。立ち上がれば2メートルはゆうに超えるであろう巨躯。毒霧の深淵に住まう種族、グリーンライオン族の長その人であった。

「本当に戻ってきやがったか、イーグル。こいつが、前に話した長だ」

サイラスが複数の腕を広げて紹介する。長は無言のまま、イーグルが抱える重厚な木箱をじっと見つめていた。

イーグルはカウンターに木箱を置くと、アリエルから託された二本のボトルを抜いた。

一本は、焦がした樽の香りが力強く鼻を突く至高の『バーボン』。

そしてもう一本エルフの秘蔵酒『千年の夢』

栓を抜いた瞬間、淀んでいたミスト村の空気は一変した。

悠久の時を封じ込めたような神々しい香りが広がり、酒場の親父が驚きで息を呑む。サイラスの触角が激しく震えた。

「……信じられん。これが、人族の言う『至高』か……」

サイラスが一口含み、その絶品さに「キキキ」と歓喜の声を上げる。続いて、グリーンライオン族の長が静かにグラスを口にした。

「…………」

沈黙が流れる。だが、長がグラスを置いた時、その瞳には明確な敬意が宿っていた。

「……深い眠りから覚めた森の声がする。よかろう、人族のイーグルよ。この『供物』に免じ、我らが力となり、人族でもポイズンミスト渓谷を歩けるよう助力しよう」

イーグルは、アリエルの言葉を反芻していた。

『最高級の酒は、一滴で相手の魂を掴む』

「……ふん。一撃で完了だ」

イーグルは残りの酒をグイと煽り、静かに立ち上がった。至高の酒が繋いだ奇妙な縁と共に、赤き輝石が眠る呪われた渓谷への門がいよいよ開かれる。



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