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240. 【欠片の返却と氷結の依頼】

遺跡から溢れ出していた禍々しい気配が消え、デッドロックの雪原には本来の静謐な冷気が戻っていた。ブラッドアイの村へ帰還した三人は、真っ先に族長の屋敷へと足を運ぶ。

「……無事に戻ったか。その様子、首尾は上々のようだな」

族長が安堵の息を漏らす中、ローズは預かっていた聖遺物を手渡した。

「約束通り、『月の欠片』を返却するわ。これのおかげで最深部まで辿り着けた、感謝するわ。……それと、あなたが気に病んでいた遺跡の『影』についても、もう心配ないわよ。元凶は完全に排除したから」

ローズの淡々とした「問題解決」の報告に、族長は目を見開いた。代々恐れられてきた禁域の脅威が、こうもあっさりと片付けられたことに驚きを隠せないようだったが、やがて深く頷き、感謝の印として深く頭を下げた。

その傍らでは、ヴァレスがマールとジェシカを捕まえて、真剣な面持ちで地図を広げていた。

「お二人さん、ギルドの採取依頼にもあった『氷結の実』ですけれど、このあたりで最も質の良いものが採れる場所を教えていただけますかしら?」

『氷結の実』。極北の特定エリアにのみ自生し、強力な冷却魔法の媒体となる希少な果実だ。今回の遠征において、輝石の回収と並ぶ重要なサブミッションである。

「氷結の実ですね! 村から北西にある氷の崖の下に、青白く光る茂みがあるんです」

「あそこの実は魔力が凝縮されていて、触るだけで指が凍るほど強力ですよ。でも、果実の中身は甘くて瑞々しいですよ! 実を採取してから3日経つと(魔力が安定して)食べられますよ。採取する時は耐寒手袋を3枚付けるように!」

ジェシカとマールはそう言うと、自分たちが使っている予備の頑丈な耐寒手袋をトリトスたちに手渡した。彼女たちが教える座標は、帰り道のルートからわずかに外れた、より魔力濃度の高い危険地帯を指していた。

「ふむ、氷結の実か。強力な冷却媒体になるだけあって、採取には細心の注意が必要だな」

トリトスが肩に担いだ麻袋(カチコチに凍った首と装備品の山)をドサリと置きながら、分析を加える。3枚重ねの手袋を眺めるその瞳は、実の危険性と有用性を冷静に見定めていた。

「……強力な冷却魔法の媒体、ね。ガランフィールに戻れば高値で売れるわ。決まりね。明日の出発早々、その崖に寄ってから帰路につくわよ」

ローズがタブレットに新たな座標を書き込む。

家族との再会を果たし、故郷の平穏を取り戻した姉妹の晴れやかな笑顔。それを見届けた三人は、デッドロック最後の夜、石造りの家で出発の準備を整えるのだった。

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