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239. 【凍てつく玉座の終焉と略奪の果て】

「王の眠りを妨げ、その力を私欲に染める不届き者……。一気に掃除させていただきますわ!」

ヴァレスが叫び、漆黒の鞭を振るう。古代の王族アンデッドが放つ絶対零度の氷塊が飛来するが、ヴァレスはそれを鞭で鮮やかに弾き飛ばした。同時に、紅い瞳を輝かせ、自身の魔力で熱を帯びた魔力爆発を引き起こし、迫りくる氷層を力技で溶かしていく。

「ぬかせ、小娘! 輝石の魔力は無限! 貴様らなど氷の塵にしてくれるわ!」

レイスが叫び、紫の輝石から供給される膨大な魔力を古代王の死体に流し込む。遺跡全体が軋みを上げ、巨大な氷の槍が天井から雨のように降り注いだ。

「無限、か。その程度の器で口にする言葉ではないな」

トリトスが静かに一歩前へ出た。彼が軽く指を鳴らすと、降り注ぐ氷の槍は着弾する直前で静止し、逆に粉々に砕け散った。トリトスの背後に、一瞬だけ禍々しい魔王の影が浮かび上がる。

「……何……!? 氷の魔法が、魔力ごと消し飛ばされただと……?」

「これが本物の『規格外』だ。絶望して眠れ」

トリトスが手をかざすと、不可視の魔力の波動が炸裂。古代兵士の軍勢は塵となり、王族アンデッドの肉体さえもミシミシと崩壊を始めた。

その激闘の隙を突いて、ローズが祭壇へと駆け上がる。

「トリトス、欠片を!」

トリトスが背後へ投げ飛ばした「月の欠片」を、ローズは空中で鮮やかにキャッチした。祭壇の台座では、紫の輝石が禍々しい咆哮を上げるかのように明滅している。ローズは迷うことなく、台座の窪みに「月の欠片」を叩き込んだ。

「適合、同期開始……! 封印強制解除!」

青白い月の光が紫の闇を貫き、輝石を縛っていた古代の術式が次々と剥がれ落ちていく。レイスとの接続が断たれ、供給源を失ったレイスは「ギ、ギャアァァァ!」という断末魔と共に霧散していった。

静寂が戻る中、ローズは台座から剥き出しになった「紫の輝石」を奪取し、ヴァレスに渡す。ヴァレスはアイテムボックスと化したピンク色の手提げ鞄に輝石を収めた。

「……ミッション完了。さて、凍える前にここを出ましょうか」

ローズがタブレットを閉じると、ヴァレスは大きくため息をつき、再び船酔いを思い出したのか顔を青くした。トリトスは消えゆく王の残滓を冷徹に見届け、出口へと歩き出す。

だが、彼らの仕事はこれで終わりではなかった。

「……待て。まだ『回収』が終わっていない」

トリトスは淡々と、転がっている行方不明の冒険者たちの遺体へ歩み寄った。慣れた手つきで彼らの装備品を剥ぎ取り、懐からギルドカードを回収して、ガランフィールで買ったあの麻袋へ次々と放り込んでいく。

「これが彼らの生きた証であり、我らの報酬の証拠だ。無駄にはせん」

一方、ローズとヴァレスは互いに視線を交わすと、足早に奥の宝物庫へと向かった。

「折角ここまで来たんですもの。この程度の『清掃代』は頂いても罰は当たりませんわよね?」

「ええ。この世界を渡り歩くには、軍資金はいくらあっても足りないわ」

二人は手際よく遺跡を探索し、古代の王族が遺した金銀財宝や魔導具を次々と発見していった。ローズが価値を瞬時に鑑定し、ヴァレスがそれを手下げ鞄へと詰め込んでいく。

「……回収完了。トリトス、何をそんなに見てるの?」

麻袋を肩に担いだトリトスが、出口付近で立ち止まっていた。

「いや……この遺跡、まだ奥に『何か』がある。だが、今の我らには不要なものだ」

三人は戦利品と輝石、そして多くの亡骸の記憶を背負い、再び極寒の雪原へと足を踏み出した。

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