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238. 【亡者の行進と凍てつく王権】

黒石の扉が「月の欠片」の光に呼応して重低音とともに開くと、遺跡内部からは氷点下の冷気と共に、鼻を突く死臭が溢れ出した。

「……最悪ね。生体反応はゼロ。代わりに、動く死体が山ほどいるわ」

ローズがタブレットを掲げると、暗闇の中に無数の紅い光が浮かび上がる。それは行方不明になっていた冒険者たちの成れの果て――肌は青白く凍りつき、瞳から光を失ったアンデッドの群れだった。

「ひ、ひぃ……助け……て……」

喉を潰された亡者たちが、生前の記憶をなぞるように虚ろな声を漏らしながら襲いかかる。

「死してなお、その魂を弄ぶとは。悪趣味ですわね」

ヴァレスが漆黒の鞭を振るい、飛びかかってきたゾンビの首を容赦なく撥ね飛ばす。だが、斬られた死体は霧のような「影」に包まれ、再び立ち上がろうとしていた。

「無駄だ。元凶を叩かねば、この茶番は終わらぬ」

トリトスの視線の先、遺跡の回廊を漂う不気味な半透明の影が姿を現した。漆黒のローブを纏い、手に髑髏の杖を握るその正体は、高位の死霊術師が霊体化した「ネクロマンサーレイス」。

「クケケ……新鮮な器が三つも来たか。特にその青い髪の男、素晴らしい魔力だ……!」

レイスは耳障りな笑い声を上げると、なんと傍らに横たわっていた「自身の生前の死体」に憑依。物理的な肉体と霊的な魔力を兼ね備えた異形の戦士として、トリトスに猛攻を仕掛ける。

しかし、相手が悪すぎた。

「我に死を語るとは、滑稽だな」

トリトスが指先を軽く振るだけで、レイスの放つ闇の波動は虚空へと霧散し、逆に純粋な魔力の圧がレイスの「肉体」をミシミシと押し潰していく。

「ぬ、ぬうぅ!? バカな、何だこの魔力は……貴様、何者だ!」

勝てないと悟ったレイスは、絶叫とともに霧散。壁をすり抜け、遺跡の最深部へと逃走を図った。

三人が最深部の祭壇へ辿り着いた時、そこには異様な光景が広がっていた。

台座に鎮座する「紫の輝石」が禍々しい光を放ち、レイスはその膨大なエネルギーを無理やり引き出していた。

「輝石の力よ! 眠れる王を、古の軍勢を呼び覚ませ!」

レイスの叫びに呼応し、壁際のアウト・オブ・プレイスな石棺が次々と弾け飛ぶ。現れたのは、かつてこの地を支配していた古代兵士のアンデッド軍勢。さらには、豪奢な氷の王冠を戴く王族の死体までもが、紫の輝石の力を借りて玉座から立ち上がる。

「……ッ、冷気が急激に強まったわ!」

ローズが警告する間もなく、古代の王が杖を振るう。輝石から供給される膨大な魔力により、絶対零度に近い氷の魔法が三人を襲う。床も壁も、一瞬にして厚い氷層に閉ざされていく。

「古代の王家が死霊術の電池にされるとは。……お片付けのしがいがありますわね」


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