表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
231/265

229. 【出航の前日】

翌朝、アステリアを覆っていた不自然な冷気は嘘のように晴れ、窓からは澄んだ冬の陽光が差し込んでいた。

ラウンジのソファでは、トリトスが少し腫れた左頬を忌々しげにさすりながら、昨日回収したユリオンの「研究日誌」と古びた「占星術」の本を熱心に読み耽っている。その横で、ローズは宿の主人と手短に交渉を済ませ、金貨をカウンターに並べた。

「これで、ネリーとお母さんの今後の面倒を見て。市場街の治安の良い場所に家を借りる手配と、二人が落ち着くまで護衛を一人付けてちょうだい。あとの余った分は、あんたへのチップよ」

「へ、へえ! 畏まりました、お任せください!」

宿の主人は金貨の輝きに目を丸くし、揉み手で承諾した。ローズは振り返り、準備を整えた仲間たちにテキパキと指示を飛ばす。

「ヴァレス、マール、ジェシカ。ネリーを連れて市場街へ行ってきて。向こうでの日用品の買い出しと、何より港で『定期船』が出るか確認してきて。デッドロックへ向かう航路が動いているかどうかが最優先よ」

「承知いたしましたわ。ネリーさん、お買い物に参りましょう。わたくしが最高級の品を選んで差し上げますわ」

ヴァレスが優雅に頷き、期待に目を輝かせるネリーを連れて部屋を出ていく。マールとジェシカも、昨夜の騒動の気恥ずかしさを振り切るように、元気に後に続いた。

静かになったラウンジで、ローズはトリトスの隣に腰を下ろした。

「……何か分かった?」

「うむ。……この女、単に長生きしたかっただけではないな。デッドロックの先、極北の果てに現れる『星の配置』が、魔力の増幅に最適な場所だと確信していたようだ。そこに『紫の輝石』の共鳴が重なれば、不老不死どころか、世界の理そのものを書き換えられると信じておった、眉唾だがな……。」

トリトスがページをめくる。そこには、歪な魔法陣と共に、アステリアを封鎖していた術式の構造が記されていた。

数時間後、買い出し組が息を切らせて戻ってきた。

「ローズ様! 定期船、明日の朝に出るそうです! 氷を砕く特殊な大型船が、デッドロックへ向けて出航すると港で触れ回っていました!」

マールの報告に、ローズは小さく口角を上げた。

「……明日ね。いいわ、アステリアでの『依頼』はこれで完了。いよいよ本命の場所へ向かいましょうか」


ローズは窓の外、白く輝く極北の海を見つめる。

翌朝の出航。それは、BAR【プラチナ】の遠征組にとって、本当の闘いの始まりを意味していた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ