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225. 【生活感と戦利品】

「……、臭っ。何これ、何の匂い?」

ユリオンの隠れ家に足を踏み入れた瞬間、ローズは顔を顰めてレザージャケットの襟で鼻を押さえた。窓が閉め切られた室内には、饐えたような死臭と、安っぽい香料が混じり合った吐き気を催すような悪臭が充満している。

「腐敗臭だな。……ローズ、このキッチンの床にある扉が地下への入口だ」

「まったく……、イカれた研究者ってのは、この匂いの中でどうやって生活してるのかしら。うわっ、ちょっと待って、虫がいる……。トリトス、そこ開けて。私は触りたくないわ」

「我からすれば、ローズが今までどうやって生活してきたかが疑問だがな……」

かつては神として崇められた魔王も、今や掃除屋の相棒。トリトスは呆れたように肩をすくめると、床の扉を無造作に引き開け、指先に淡い魔力の灯りを灯した。

「ゆくぞ。我が先に行く」

「あ、先に行ってて。ちょうどいい麻袋があるから、これにフライパンとかも根こそぎ持っていくわ」

階段を降りようとしたトリトスが、信じられないものを見る目で振り返る。

「……。泥棒だな、ローズ」

「失礼ね、回収と言いなさい。洗えば使えるでしょ! 生活備品を揃えるのも馬鹿にならないのよ。」

イーグル顔負けの図太さを見せるローズを背に、トリトスは深い地下へと降りた。

地下室は、地上とは比較にならないほど濃密な魔力と狂気が渦巻く「実験場」だった。

中央には煤けた魔法陣。机の上には、腐乱した魚の肉に腕輪が埋め込まれた不気味な試作品が放置されている。

「最初は小さな生命力から試していたようだな……。執念というか、矮小というか」

トリトスは独り言ち、壁際の本棚に目を向けた。占星術、召喚魔法、禁忌の魔導書。その中に一冊、表紙の擦り切れた『研究日誌』を見つける。

トリトスがその狂気の記録を読み耽っていると、背後からガサゴソと麻袋を引きずったローズに肩を叩かれた。

「トリトス? 財は見つかったの? 本を読んでるってことは、もう片付いたのよね?」

「……、すまぬ。ついな。この本棚をどかせば、その裏が財の部屋だ」

トリトスは日誌をローズの麻袋(中には本当にフライパンや鍋が入っていた)に放り込み、本棚を片手で軽々とスライドさせた。

隠されていた扉をローズが開けると、そこにはユリオンが60年かけて奪い取ってきた「清算の残骸」が山を成していた。

溢れんばかりの金貨、鈍く光る宝石、そして生命力を奪われた冒険者たちの遺品である装備。

「金貨1000枚……。ふふ、悪くないわね。さて、パッキングしたらヴァレスの元に戻るわよ」

ローズは手際よく金貨を詰め込むと、満足げに口角を上げた。アステリアの闇を掃除した報酬としては、十分すぎる「収穫」だった。



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