224. 【清算の代償と収穫】
「さて……、『収穫』の時間ね」
ローズは冷淡に言い放つと、床に散らばっていた予備の腕輪をすべて回収し、力なく横たわるユリオンの両手足に容赦なく嵌め直した。
「なるほどな……。ローズ、なかなか残酷な事をするな。我も手伝おう」
トリトスは老婆と化したユリオンの眉間に細い指を突き立て、その脳内に直接干渉して記憶を読み取っていく。
「市場街の一角にユリオンの家がある。その家の地下に財を隠しているようだ。……最悪なのは、ユリオンはこの不死を目的とした術を60年前に完成させていた事だ。自身の美貌を餌に、多くのパーティーに入り込んでは腕輪を渡し、仲間の生命力を少しずつ吸い続けてきたようだな」
トリトスの報告を聞き、ローズの瞳に一際冷ややかな侮蔑の光が宿った。
「オーケー、トリトス。ユリオンはこれで用済みね。……私、寄生虫は嫌いなの」
ローズはタブレット端末を叩き、床に描かれた魔法陣の術式を強制的にハッキングした。演算の火花が散り、青白い術式が赤黒い「反転」の色彩へと書き換えられていく。
「奪ったものは、利子をつけて返しなさい」
魔法陣が逆回転を始め、ユリオンの体に残っていたわずかな生命力と、彼女が60年間蓄積してきた「偽りの時間」が、腕輪を通じて強制的に吸い上げられていく。
「あああああああああああッ!!」
ユリオンはしわがれた悲鳴を上げ、その肉体は見る間に変色していった。皮膚は枯れ木の皮のように垂れ下がり、目元は深く窪み、最後には生ける屍のような無惨な姿へと成り果てた。吸い上げられた光は、夜空へと霧散し、因果の糸を辿ってアステリア中の被害者たちへと還っていく。
「市場街に向かうわよ。……馬鹿な研究をしていた愚かな魔法使いは、実験の失敗で倉庫にて自死。明日のアステリアの噂はこれで決まりね」
ローズは端末を閉じ、一瞥もくれずに歩き出した。
「フハハ……。そこまで真相に行き着く輩がこのアステリアにいるかは疑問だがな」
トリトスは不敵な笑みを残し、ローズの後に続いた。
背後の倉庫では、枯れ果てた老女の形をした「抜け殻」が、冷たい潮風に吹かれて静かに横たわっていた。




