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218. 【港の強襲】

アステリアの港、古びた倉庫。潮風と冷気に混じって、重油と何かが腐敗したような不快な臭いが鼻を突く。ローズとトリトスは、マールの「視縛」が示した巨大な赤錆びた倉庫の前に立っていた。

「……ここね。この世界は監視カメラもないし、警備も甘いから腕が鈍りそうだわ」

ローズはレザージャケットの内側からタブレット端末を取り出し、空中にホログラムの構造図を展開した。

赤く点滅する光点が、倉庫の最奥に位置するターゲット――ユリオンの現在地を示している。

「フッ……、だが貴殿らの世界にはない『魔法』がある。油断するな。魔法は監視カメラとは違い、理屈の外から意外性を突いてくるぞ」

「ご忠告どうも……。さっきヴァレスから連絡もあったし、後はこのユリオンを始末するだけよ」

ローズは重厚な扉の鍵を慣れた手つきのロックピックで解錠すると、隙間から音もなく滑り込むように扉をスライドさせた。

倉庫の中は、外見からは想像もつかないほど禍々しい空間に変貌していた。

天井からは幾本もの「黒い糸」が、吊り下げられた無数の腕輪から伸び、床に描かれた巨大な魔法陣へと生々しい生命力を注ぎ込んでいる。

その中心に立つのは、ピンク色の髪をなびかせた女、ユリオンだった。

「……あら、招かれざる客ね。私の『収穫』を邪魔しに来たのかしら?」

ユリオンが冷たく言い放つ。彼女の瞳は黒く濁り、手にした杖からは、丘の母親を苦しめていたものと同じ、反吐が出るほど不快な魔力が溢れ出していた。

「あいにくだけど、あんたの『収穫』はここで打ち切りよ」

ローズがタブレット端末から「戦闘モード」のプログラムを起動させると、演算処理に伴う青白い光と共に、彼女の周辺に鋭い魔力が漂い始めた。

「……ローズ、下がるがよい。この女から漂うのは、命を弄ぶ者の腐敗臭だ。この手の魔力は、我の得意分野でな」

トリトスの周囲に、金色の魔圧が渦巻き始める。それは元魔王としての格の違いを見せつけるかのような、圧倒的な威圧感だった。港の静寂を切り裂くように、復讐と制裁の幕が上がった。

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