表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
202/265

200. 【掃除屋の矜持と紅い警告】

「クックッ……。すまねぇなお嬢さん。力加減を間違えちまったようだ」

アリエルはそう言うと、首の骨を鳴らしてシガーをくわえ直し、ゆったりと紫煙を吐き出した。

その表情には、術を破られたことへの怒りも、圧倒的な力を見せつけた傲慢さもない。

ただ、依頼人の「実力」を正当に測り終えた後の、プロの顔があった。

「いえ……。これほどとは思いませんでした。貴方を甘く見ていた私が悪いんです。すみません」

カウンターに突っ伏したまま、マールは力なく首を振った。顔を上げた彼女の額には汗が滲み、紅かった瞳は通常の色彩へと戻っている。

だが、その瞳に宿る光は、先ほどまでの絶望ではなく「確信」へと変わっていた。

「姉はキャラバンの護衛の為にこの街にやって来ました。念の為、魔道具で連絡を取り合っていたのですが、1週間連絡が無かった為、探しに来た次第です」

その告白を聞き、カウンターの奥で重厚な古書を閉じたトリトスが、静かに、だが重みのある口調で告げた。

「一週間……。マズイな。水や食料を与えられていないとすれば、生存していたとしても相当に衰弱しているはずだ。……時間はないぞ」

トリトスは緑色の鋭い眼光をマールに向け、淡々と残酷な事実を並べる。

「しかし……、我が以前読んだ禁書には、ブラッドアイ(血眼族)はその身すべてが希少な魔導触媒、あるいは万病を癒やす『薬』になると記されていた。それが血か、肉か、あるいはその眼か……。どこが狙いであれ、獲物を生かしたまま解体するのが奴らの常套手段だ」

「解体、なんて……そんな……っ!」

マールの顔から一気に血の気が引いていく。その肩を、アリエルの大きな手が無造作に、だが力強く叩いた。

「おい、トリトス。お嬢さんを脅すのはそこまでにしとけ。……いいかマール。この街の『ゴミ箱』は、死体よりも生きた獲物の方が隠しにくい。一週間も生かされているなら、まだそのクソ野郎の喉元に手は届く」

アリエルはカウンターに置いてあったマールの銀貨を一枚だけ指で弾き、空中で掴み取った。

これは『着手金』だ。残りは……姉さんを救い出した後、二人のこれからの人生のために取っときな」

アリエルが立ち上がると、BARの隅に潜んでいたアリスが音もなく姿を現し、イーグルがリボルバーの装填を終えて不敵に笑う。

「さあ、掃除の時間だ。フェネカ、その魔道具の残滓ログを追え。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ