17. 研究区画、そして見つかった証拠
アリエルの圧倒的な力に驚愕しつつも、イーグルとローズは倉庫の奥へ進んだ。そこには厳重なセキュリティゲートがあり、ローズは慣れた手つきでハッキングを始めた。
「ここのシステムは複雑だわ。キラー曹長、本気ね」
ローズはそう呟きながら、端末のキーボードを猛烈な速さで叩く。イーグルは背後を警戒しながら、ローズの作業を見守った。やがて、カチッという小さな音と共に、ゲートの電子ロックが解除された。
「開いたわ」
ローズはそう言うと、先に研究区画へと足を踏み入れた。イーグルも彼女に続き、中に広がる光景に息をのんだ。そこは、教会の地下にあった実験場よりもはるかに大規模な、生体兵器の製造工場だった。
巨大なタンクがいくつも並び、その中には培養液に浮かぶ、不気味な生物の胚が確認できる。周囲のモニターには、生物の遺伝子配列や成長データがグラフで表示されていた。
「…ひどいな」
イーグルは、その光景に吐き気を催した。ローズは冷静にモニターのデータを確認し、カメラで撮影していく。
「このデータは、キラー曹長が開発している生体兵器が、人間と動物の遺伝子を組み合わせたハイブリッド兵器であることを示している。そして、その最終目標は…」
ローズの言葉が途切れる。彼女の視線は、モニターに映る一つのデータに釘付けになっていた。
「…どうした、ローズ?」
「この生体兵器は、人間の『特殊な遺伝子』を持つ者でないと、適合できないようになっているわ。その適合者のリストがこれよ…」
ローズが指し示すモニターには、たくさんの人名が並んでいた。そして、その一番上に記された名前を見て、イーグルの全身に電流が走った。
「…イーグル・メタルバレット軍曹…」
自分の名前が、生体兵器の適合者リストの筆頭に挙げられている。イーグルは、愕然として立ち尽くした。
「嘘だ…なぜ俺が…」
「おそらく、軍にいた頃、何らかの実験に参加したんじゃないかしら。それに、このデータによれば、キラー曹長は、あなたを『最高傑作』として、次の段階に進めるつもりだったようね」
ローズの言葉に、イーグルはかつての訓練期間を思い出した。確かに、彼は新兵器の実験に参加したことがあった。だが、それがまさか、このような恐ろしい計画の一環だったとは。
「つまり、俺は…キラー曹長にとって、最高の生体兵器になるための『素材』だったってことか…」
イーグルの脳裏に、キラー軍長の言葉が蘇る。
「私を…この国の未来を理解しようとしない貴様を、私は許さない!」
その言葉は、イーグルを裏切った理由ではなく、彼を生体兵器として完成させられなかったことへの怒りだったのかもしれない。
その時、ローズの端末が警告音を発した。
「まずい、警備員に見つかったみたい。早く脱出しないと」
イーグルは、自身が背負わされた重い運命に打ちのめされそうになりながらも、ローズに続いて駆け出した。キラー軍長の真の目的を知った今、イーグルの戦いは、単なる裏切り者への復讐ではなく、自らの運命、そしてブラックボックスの未来をかけた戦いへと変わった。




