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140.【人造の神、鉄の審判】

地下最深部。そこは、エルフの里の美しさとは対極にある、真鍮と魔導回路が蠢く異形の空間だった。

中央に鎮座する巨大な「魔導抽出炉」の周囲には、無残にも命を落とし、干からびたエルフたちの骸が転がっている。

「見よ! 死亡したエルフの肉体を基盤とし、森の魔獣、さらに昆虫の生命力を練り合わせた魔法文明の極致! 『人造魔人』の誕生だ!」

ギルド特別顧問バルザスが狂喜の声を上げると同時に、背後の培養槽が内側から爆発した。

中から現れたのは、顔が三つ、腕が八本、足が六本という、この世の冒涜を形にしたような異形だった。背中には不気味に脈打つ羽が生え、全身は硬質な昆虫の外皮に覆われている。

「さあ、行け! 我が神よ! 目の前の虫ケラを――」

バルザスが命じようとした瞬間、魔人の三つの顔が同時に彼を向いた。

「な、……何を――ぎゃあああああああッ!?」

魔人の腹部に裂けた獣のような巨大な口が、一瞬でバルザスを噛み砕き、飲み込んだ。生みの親を「最初の餌」として喰らった魔人は、さらなる飢えを満たすように、地面に転がるエルフの死体を次々と八本の腕で掴み取り、咀嚼し始めた。

バリ、ボリと、骨が砕ける嫌な音が静寂に響く。

やがて、魔人の三つの顔が、岩陰に潜む「生きた獲物」――イーグルを捉えた。

三つの口から、同時に濁った咆哮が放たれる。

「……趣味の悪いペットだな」

イーグルは無言でライフルの引き金を引いた。だが、放たれた弾丸は魔人の周囲に展開された青黒い多重障壁に触れた瞬間、運動エネルギーを奪われ、飴細工のように潰れて落ちた。

魔人の腹部の口が大きく開かれ、黒紫色のエネルギーが収束する。

「――っ!」

反射的に跳んだイーグルの背後で、怪光線が石柱を一瞬で蒸発させた。

爆風に煽られ、壁に強く打ち付けられるイーグル。左肩の傷が激しく疼き、意識を削る。だが、彼は荒い呼吸を整え、冷徹な瞳を崩さない。

イーグルは岩陰で、バックパックの底、二重のロックがかかった硬質ケースをこじ開けた。

取り出したのは、一本の重厚なボルトアクション弾。フェネカが「もし万が一、この世界のことわりそのものと戦うことになったら」と手渡してきた、超高密度対魔導中和弾――通称【ゼロ・バレット】だ。

「……。使いたくなかったが、あんな『悪趣味な継ぎ接ぎ』が相手じゃ、出し惜しみは無しだ」

イーグルはライフルの薬室に、鈍く黒く光るその一発を装填する。

「……お前も、食い過ぎて腹を壊す前になんとかしてやるよ」

魔人の三つの顔が同時にイーグルを捉え、再び腹部の口が怪光線を放とうと輝きを増す。

イーグルが引き金を引いた瞬間、爆音はしなかった。代わりに、空間が内側へ爆縮するような、奇妙な「沈黙」が地下を支配した。

放たれた黒い閃光。

それは魔人が誇る多重障壁に触れた瞬間、その莫大な魔力を「燃料」として吸収し、より巨大な「虚無」へと膨れ上がった。

障壁がガラスのように砕け散り、黒い弾丸は魔人の胸部にある、黒く淀んだ魔石コアを正確に貫いた。

魔石が砕け、魔人の肉体は内側から崩壊を始める。同時に、あるじと核を失った魔導抽出炉が過負荷の火花を散らし、地下全体が激しく揺れ始めた。

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