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136.【深淵の狩場:潜入者と地下の悲鳴】

白銀の巨狼に導かれ、ついに辿り着いたエルフの里。だが、そこに「故郷の安らぎ」はなかった。

家々は荒らされ、働き盛りの若者たちの姿が消えている。

「……何があったの!? みんな、どこへ……!」

駆け寄るエーシャに、生き残った老人が震える声で告げた。

「ギルドの兵たちが……『身体強化』と称して、若者たちを地下ダンジョンへ連れて行ったんじゃ……」

里の広場で、フェンリルは一度だけ低く悲しげに遠吠えをした。

「……お前はここまでだ。里を守ってやれ」

イーグルがそう言うと、フェンリルは静かに頷くように首を下げ、里の入り口へと引き返していった。

「イーグル様、すぐに行きましょう! 地下へ……!」

焦るエーシャを、イーグルが強引に掴んで制止した。「待て。……鼠が一匹、紛れ込んでる」

イーグルの視線の先、不自然に物陰へ隠れ、指先で魔力通信を試みる警備担当のエルフの男がいた。

「……何を、私はただ通信を……」

「ギルドに『獲物が来た』と報せようとしたのか? 」

イーグルは容赦なく男の膝を撃ち抜いた。悲鳴を上げる男の傷口をブーツの先で踏みにじり、淡々と問い詰める。

「地下の構造と、戦力配置を吐け。三秒以内に答えなければ、次は指を一本ずつ飛ばす」

数分の凄惨な「尋問」の後、男は泡を吹いて全てを吐き出した。

「……実験の主導者は、ギルドの特別顧問……連れ去られた者は、魔力抽出の……触媒に……」

「そうか。お疲れさん」

イーグルは冷徹に引き金を引き、男の眉間を撃ち抜いた。死体を一顧だにせず、彼は血に汚れたブーツを拭う。

「内通者の掃除は『何でも屋』の基本業務だ。……さて、次は本件の依頼を片付けるぞ」

イーグルはエーシャを連れ、病床の父のもとへ急いだ。

瀕死の父の状態を診るなり、イーグルはバックパックからフェネカ特製の「密閉型ガスマスク」と、見たこともない「銀色の針(注射器)」を取り出した。

「エーシャ、お前の魔力で親父さんの心臓を一定のリズムで叩け。血流を止めさせるな。……残りの毒素は、この抗生剤(化学)で焼き切る」

「……はいっ!」

エーシャが魔力で心肺機能を維持する中、イーグルは適切な箇所に薬剤を注入し、さらに傷口へサバイバル用の消毒と縫合を施していく。近代医学の知識と魔法の補助。数刻の後、父の呼吸は劇的に安定し、死の淵から生還した。

「親父さんの峠は越した。……後はここで看護と防衛を固めてろ」

イーグルはバックパックから、予備の弾倉と爆薬を取り出し、ベストのポーチへ詰め込む。

「一人で行くつもりですか!? あそこは、Aランクの私でも一人では……!」

「アリエルには、通信機で『少しばかり多めに働いてくる』と伝えてある。『死ぬなよ』と許可を貰った」

イーグルはジッポの音を立ててタバコに火を点けた。

仕事ビジネスに情は持ち込まない主義だが、ガキや女を実験体に使うような手合いは……俺の死生観に反する。報酬チップは、親父さんの命で十分だ。……後は、俺の『趣味』に付き合え」

紫煙を残し、イーグルは一人、闇が口を開ける地下ダンジョンへと足を踏み入れた。

その背中は、もはや「何でも屋」ではなく、腐敗した世界を物理的に穿つ、一発の冷徹な「弾丸」そのものだった。

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