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135.【深淵の共鳴:鋼の弾丸と氷華の鎖】

翌朝、エルフの里を目前にした森の深部。二人は異様な地鳴りと、木々がなぎ倒される凄まじい破壊音に遭遇した。

開けた空間に飛び出した二人の目に映ったのは、絶望的な光景だった。

森の守護者である巨狼、【フェンリル】。その高潔な白銀の毛並みは汚れ、無数の粘着質な糸に絡め取られて地面に縫い付けられている。対峙するのは、巨大な女郎蜘蛛の魔獣【アビス・アラクネ】。その首には、禍々しく発光する金属製の「首輪」が食い込んでいた。

「フェンリルが……身動きを封じられている?」

エーシャが息を呑む。フェンリルは必死に抗うが、絡みつく糸は鋼のように硬く、さらにアラクネの首輪から供給される魔力によって、千切れるそばから再生・強化されていた。

「エーシャ、あいつの脚を狙え。動きを止めろ。トドメは俺が刺す」

イーグルがゴーグル越しに戦況を読み、素早く指示を出す。だが、その言葉がエーシャの「Aランク」としての矜持に触れた。

「……何でも屋に指図されるまでもありません! 私の魔法なら、あんな糸ごと粉砕できます!」

イーグルの制止を聞かず、エーシャは杖を掲げ、高位氷結破壊魔法の詠唱を開始した。

「凍てつけ、万物を拒絶する氷の葬列――【アイス・ディザスター】!」

しかし、放たれた猛烈な氷の奔流は、アラクネに届く直前、首輪から発せられた不可視の障壁に霧散させられる。アラクネの隠蔽スキルと「対魔法コーティング」を施された首輪の前に、正面からの魔法攻撃は無力だった。

「なっ……、私の魔法が、通じない……!?」

硬直したエーシャに、アラクネの鋭利な脚が迫る。死の予感に体が竦んだ瞬間、イーグルの手が彼女の襟首を掴み、強引に岩陰へ投げ飛ばした。

「素人の特攻かよ。……『見よう』としねぇからそうなるんだ」

イーグルはライフルを構え、火薬の爆音と共にアラクネの首輪――制御装置の結合部をピンポイントで撃ち抜いた。

火花を散らして首輪が弾け飛ぶ。供給源を断たれた糸が急速に強度を失い、呪縛から解き放たれたフェンリルはその瞬間、守護者としての威厳を取り戻した。

フェンリルは怒りの咆哮を上げると、逃げようとするアラクネを瞬きする間に追い詰め、その巨大な牙と爪で、獲物を文字通り「細切れ」に解体してみせた。

凄惨なまでの「解体」だった。

フェンリルは、細切れになったアラクネの肉塊――その中でも特に上質な部位を咥え、無造作にイーグルとエーシャの足元に置いた。

「……これ、お礼のつもりか?」

イーグルが尋ねると、フェンリルは一度だけ短く吠え、二人の先に立って歩き出した。「付いてくる気らしい。……ほら、素材だ。拾っておけ、エーシャ」

エーシャは震える手で、バラバラになった肉塊を拾い上げた。その際、砕け散った首輪の破片の裏側に、彼女が見慣れた【冒険者ギルド上層部の秘蔵刻印】を見つけてしまう。

「……嘘。これ、ギルドの……。イーグル様、私、自分の愚かさが情けないです。あなたの言うことを聞いていれば……」

「反省は後だ。ギルドは森の魔物を操って、里を完全に孤立させようとしていたらしい」

イーグルはリボルバーを回し、弾丸を確認する。

「フェンリルを味方につけたのは有難い誤算だ。……行くぞ。」

白銀の巨狼に導かれ、二人はついにエルフの里へと足を踏み入れる。


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