124.【鉄の咆哮と五色の光芒】
フェネカの工房を取り囲んだのは、この界隈を縄張りとする武装集団「錆びた牙」の精鋭たちだった。彼らの目的は、フェネカが隠し持っているとされるロストテクノロジーの奪取。だが、彼らは知らなかった。今日、この場所が新たな「伝説」の実験場になることを。
「……さて、まずは挨拶代わりだ」
イーグルが腰のホルスターから、完成したばかりの無骨な鉄のリボルバーを抜き放った。
「なんだ、その古臭い鉄屑は! そんなもので我らの魔力障壁が――」
敵の重装歩兵が嘲笑いながら盾を構えた瞬間、爆音が響いた。
――ドォォォン!!
魔力弾のような甲高い音ではない。薬薬の爆発が鉄の弾丸を押し出す、暴力的なまでの重低音。
放たれた「ただの鉄」は、敵の魔力障壁を干渉することなく、物理的な質量と速度だけで紙細工のように食い破った。
「な……がはっ!?」
盾ごと胸を撃ち抜かれた重装歩兵が吹き飛ぶ。魔力防御を前提としたこの世界の住人にとって、純粋な物理衝撃は「防御不能」の悪夢だった。
「あぁ……いつの間にか懐かしくなっちまったが、この指に伝わる反動……最高だ。」
「アリス! 起動しなさい!」
ローズの叫びに、アリスが震える手で銀色の多機能拳銃【ステラ】を構えた。
「お願い……動いてッス! 【解析魔法】、リンク開始!」
アリスの膨大なMPが銃に流れ込む。チャンバーが高速回転し、アリスの思考に合わせて最適な属性をセレクトした。
「火、雷、土――三連装射撃ッ!」
引き金を引くと同時に、銃口から異なる色の閃光が噴き出した。
着弾した敵は爆発に焼かれ、雷撃に痺れ、隆起した岩に打ち上げられる。アリスの解析能力が敵の弱点を瞬時に見抜き、属性を自動で切り替えるその姿は、一人で魔導士一個小隊に匹敵する制圧力を見せつけた。
「すごい……これが、私の力……!」
「やれやれ、ボクの工房を荒らしたツケは高くつくよ?」
フェネカが指を鳴らすと、工房の壁に埋め込まれていたスクラップが組み合わさり、二体の【魔導ゴーレム・プロトタイプ】へと変貌した。
ゴーグルを輝かせたフェネカが、二本の尻尾をタクトのように振る。
「ローズ、そっちは索敵を頼むよ。ボクの可愛い子たちに、逃げる鼠のケツを追い回させてやるからさ!」
ローズがタブレットで敵の逃走経路を遮断し、フェネカのゴーレムが物理的な暴力で敵を粉砕していく。
異世界の軍事知識、超高密度の魔力、そして現地の天才的な技術。これらが融合した「チーム・プラチナ」の火力は、もはやスラムの勢力争いという次元を遥かに超越していた。
数分後、工房の周囲に立っている敵はいなかった。
「ふぅ……。代金はこれで十分か、フェネカ?」
イーグルがリボルバーのスイングアウトを行い、熱を持った薬莢を排出した。
フェネカはキツネの耳を満足げに揺らし、ニヤリと笑う。
「……合格だね。アンタたち、気に入ったよ。BAR【プラチナ】だったね? 専属メカニックとして、ボクを雇う気はないかい?」




