117.【開店準備:兵站と居住区の構築】
新調した装備の重みを確かめながら、五人は手分けして「BAR PLATINUM」を真の拠点へと造り替える作業に入った。ただの酒場ではない。ここは彼らにとっての城であり、作戦室であり、休息の地だ。
■アリエル・イーグル:最高の「在庫」と「肴」
二人は活気付く市場の喧騒の中を歩いていた。アリエルの鋭い鼻が、雑多な臭いの中から「本物」を嗅ぎ分ける。
「この世界の安酒は、アルコールの純度が低すぎる。……だが、この『火トカゲの蒸留酒』なら、少し手を加えれば化けるぜ」
アリエルは次々と樽を買い付け、イーグルは背後で周囲の視線を牽制しながら、保存の利く食材を吟味する。
「酒だけじゃ客の口は開かねぇ。……晶狼の燻製肉に、この『痺れ岩塩』か。アリエル、こいつをプロの味に仕上げるのがあんたの仕事だ」
大量の酒瓶と食材が、二人の手によって次々と「兵站」として店へ運び込まれていった。
■ローズ・ヴァレス:魔導要塞と安らぎの私室
一方、店内に残った二人は、内装の劇的なリフォームに着手していた。
「地下の倉庫を『作戦室兼・資材庫』に変えるわよ。ヴァレス、そっちの棚に防波の魔石を配置して」
ローズは市場で調達した魔導ジャンクパーツを使い、地下室に巨大なサーバーラックのような防衛網を構築していく。
一方で、二階部分は殺風景な廃屋から一変。ヴァレスが選んだ上質な布地と、ローズが計算した最適な配置により、機能的かつ優雅な「寝室」へと生まれ変わった。
「……ようやく、靴を脱いで眠れる場所ができましたわね」
ヴァレスの柔らかな微笑みが、殺伐としたスラムに灯る一筋の安らぎとなった。
■トリトス:叡智の収集
一人、街の最奥にある不気味な路地裏にいたのはトリトスだった。
埃を被った古書店の奥底で、彼は黄金の瞳を光らせ、山積みの書物を漁る。
「……ふむ。アストラル・ノアの建国神話、そして七つの月の運行周期か。歴史を知らぬまま世界を買い取るなど、無粋だからな」
店主すら存在を忘れていた古地図と、禁書に近い歴史書を数冊。トリトスはそれらを「対価」を払って手に入れ、懐に収めた。
この世界の「地脈」と「過去」を把握した彼の足取りは、もはや迷い迷い込んだ異邦人のものではなかった。
夕刻。
改装の終わった「BAR PLATINUM」のカウンターで、五人は再び合流した。
地下には堅牢な防衛機構、二階には清潔な居住区。そして一階のバックバーには、厳選された酒が並ぶ。
「……整ったわね。この街の『不条理』を迎える準備は」
ローズがメインモニターを起動し、街の全域マップを映し出す。
「ああ。……アリエル、店を開けろ」
イーグルが、新調した【魔導狙撃銃・黒曜】をカウンターの隅に置いた。
カラン、と。
待っていたかのようにドアベルが鳴り、一人の「招かれざる客」が影を落とした。




