114.【精算:汚れた報酬と銀の板】
「……Fランクだと舐めるな。こっちは正規の訓練を受けた『銀鋼騎士団』の端くれだぞ!」
先頭の守衛がメイスを振り下ろす。重厚な鎧が放つ圧力は、これまでの魔物とは比較にならない。
だが、その一撃が届く直前。
「――おっと、そいつは『サービス料』に含めるには重すぎるな」
アリエルが、ボトルのネックを掴むような自然な動作で、メイスの柄を横から叩いた。
『ドォン!』
パワー22の衝撃が、騎士の腕を強引に逸らす。体勢を崩した騎士の懐へ、イーグルが影のように滑り込んだ。
「ローズ、こいつらの鎧の『結合部』をマークしろ」
「了解。……左肩の魔力循環ラインが脆弱よ。そこを叩けば、その重い缶詰はただの鉄屑になるわ!」
ローズのナビゲートに合わせ、イーグルが狼の牙のナイフを閃かせる。
『ガギィィィン!』
火花と共に騎士の肩当てが外れ、内部の魔導回路が露出した。
「……なっ、馬鹿な! Fランクが我らの装備の弱点を……!?」
「……無駄な足掻きを。その魔力、我に返してもらうぞ」
トリトスが虚空を指差すと、騎士たちの足元の汚水が紫色の幾何学模様を描いて凍りついた。
『――スキル【魔力分解・広域】発動――』
「ぐわぁぁ!? 鎧の動力が……消える……!?」
重装騎士たちが、自らの鎧の重さに耐えかねて次々と膝をつく。彼らにとっての「守り」が、トリトスの分解によって「枷」へと作り変えられた。
「……目障りですわ。退きなさい」
ヴァレスが優雅に腕を振る。掌から直接放たれた紫色の魔力弾が、無防備になった騎士たちの腹部を正確に捉えた。
『ドゴォォォォン!!』
魔族としての純粋な魔力出力が、騎士たちを隠し扉の奥へと吹き飛ばす。
「……よし、掃除完了だ」
イーグルがナイフを収め、冷徹に指示を飛ばした。
「アリエル、隅っこに転がってるロープを持ってこい。こいつら、装備も金目のもんも全部剥いで縛り上げろ。パンツ一枚にする勢いでな」
「へへっ、任せな。剥ぎ取りは得意分野だ」
アリエルが手際よく騎士たちの身ぐるみを剥ぎ、ロープで芋虫のように繋ぎ合わせる。その横でイーグルとローズは、倉庫の棚を端から順に「査定」していった。
「ローズ、一番マシな魔石と保存食を選別しろ。……アリエル、持ってきた袋を広げろ。一人一枚、まずは『俺たちの取り分』を確保する」
市場で調達した五枚の大袋に、高純度の魔石や高級食糧を文字通り「根こそぎ」詰め込んでいく。ギルドに報告する前に、まずは自分たちの拠点であるBARへと運ぶのが「ブラックボックス」流のルールだ。
「……イーグル、ここにある分だけで、BAR【プラチナ】の開店資金どころか、数ヶ月は遊んで暮らせる価値があるわよ」
ローズがタブレットで在庫の総額を弾き出し、吐息を漏らす。
「まだ足りねぇよ。……アリエル、ヴァレス、まずはこいつらをBARまで運ぶぞ。三往復だ。……受付の姉ちゃんに報告するのは俺たちの蔵が一杯になってからだ」
数時間後。BAR【プラチナ】の奥に十分な物資が運び込まれたのを確認し、イーグルはようやく最後の一本のタバコに火をつけた。
「……よし、受付に行くか。……『掃除は終わった。今からゴミ(証拠品)を返品しに行く。……お釣りはたっぷり用意しておけ』ってな」
ドブ板の下の強奪劇を完璧に終え、五人は「証拠品」という名目の残骸を抱え、悠然と地上への階段を上り始めた。




