10. 脱出と残された謎
アリエルが投げつけた球体は、怪物の足元で強烈な閃光を放った。それは兵士たちの目を眩ませ、一瞬の隙を作り出す。同時に、球体から放たれた衝撃波が怪物を吹き飛ばし、実験器具の棚に叩きつけた。
「今だ!行け!」
アリエルの叫び声に、イーグルは素早く反応した。兵士たちの視線が閃光に眩む中、彼はローズが指し示した脱出口へと駆け出した。ローズは既に脱出口の扉を開き、イーグルとアリエルを待っていた。
「早く!」
ローズが促す中、イーグルは最後の力を振り絞って扉をくぐり抜けた。アリエルもすぐ後に続き、ローズが素早く扉を閉めた。背後から、怒号と怪物の奇声が聞こえてくる。
三人が飛び出した先は、教会の裏手の、薄暗い路地裏だった。雨が降り始めており、冷たい水が彼らの体を打ちつけた。
「ちくしょう…まさか、あんな化け物までいるとはな」
イーグルは息を切らしながら、機関銃を構えたまま周囲を警戒する。ローズはトランシーバーを取り出し、どこかに連絡を取り始めた。
「アリエル、教会の地下にあった実験場は一体何なんだ?あの怪物も…」
イーグルの問いに、アリエルは雨に濡れた顔を上げ、静かに答えた。
「あれはキラー曹長が開発を進めていた『生体兵器』だ。ブラックボックスの裏社会を牛耳るため、テロリストどもと組んで、禁断の技術に手を出していた…」
「生体兵器だと…!?」
イーグルは驚愕した。キラー曹長がただの裏切り者ではなく、恐ろしい計画を進めていたことに戦慄したのだ。アリエルはさらに続けた。
「あの実験場には、まだ多くの謎が残されている。我々の組織は、その全貌を暴くために動いている。イーグル、あんたにはその手助けをしてもらいたい」
アリエルの言葉にイーグルは自身の過去とキラー曹長に対する怒りが再び込み上げてくるのを感じた。彼はタバコを取り出し、雨で濡れないように注意深く火をつけた。
「…そうか。分かった。俺はやる。キラー曹長を、この手で…」
イーグルの目は、雨に濡れてもなお、強い光を宿していた。彼の決意に、アリエルは満足そうに頷いた。ローズは通信を終え、二人の方を振り返る。
「アリエル、回収地点を手配したわ。もうすぐ迎えが来る」
「よし。イーグル、ローズ。まだ終わりじゃない。これからが本番だ」
三人は雨の中、暗い路地裏を進んでいった。彼らの背後には、地下深くで蠢く、新たな脅威と、ブラックボックスの街に渦巻く、巨大な陰謀の影が迫っていた。イーグルにとっての「真っ当な仕事」は、今、始まったばかりだった。




