第1話 転生には最強という備えを
死について考えていた。
まだ17年しか生きていないが、死に直面すると誰しも平等なのかもしれない。
私は12歳の時に未知のウイルスの病気にかかり5年たった今でも良くならない。それどころか徐々に悪化していき、もう長くはない。現代の医学では治せないらしい。
病気になった頃は死ぬのがとても怖かったが、最近ではなんとなく受け入れられるようになった気がする。もう喋ることも体を動かすこともできなくなった私は機械に繋がれて、生きているといえるのかわからない状態だ。
今日は心が穏やかだ そしてやけに眠い。
いつのまにか眠ってしまったのか。目が覚めると見慣れない いくつもの光に囲まれていた。ここはどこだろう、宇宙か、、、そうか死んでしまったのか。不思議と驚きはない。いつか誰にでも訪れるものだから。
「あ〜、気がついた〜?」
どこからか女性の声がした。声のする方を見た。
そこには天使のような女性がこちらを見て立っていた。
体が動く。声も出る。何年ぶりだろう。
「あなたは天使か?それとも神様か?」
「ん〜、まあ女神ってところかな〜」
金色の髪をした、人間で言えば20歳くらいの容姿の女神はそう答えた。
「そうですか。それで私は死んでしまったのでしょうか?これからどうなるのですか?」
「あんた、本当に17歳なの?すごい冷静ね。も〜ショック〜とか思わないわけ?」
「思わないわけではないのですが長い間 病院にいたのでそんなものかなと。」
「ふ〜ん、そっかぁ。あのね実はね・・・」
女神は申し訳なさそうに続けた。
「あなたの病気のウイルスね、こっちの手違いで あなたに入ってしまったの。本当にごめんなさい。」
女神は頭を下げた。
「それでね、唯人君を異世界に転生して新しい人生を歩んでもらおうと思ってるの。病気になった12歳から。」
「異世界、ですか。いったいどんなところなんですか?」
「今までと違って 魔法があったりして、きっと気にいると思うわ。それにお詫びと言ってはなんだけど〜
何か加護をつけてあげるわ。」
「それでは、強い体をください。病気や怪我が怖いし魔法がある世界なんて何があるかわかりませんので。」
「オッケー、じゃあ最強にしておくね。魔法なんかもいっぱい使えるようにしとくから。」
「ありがとうございます。でも、いいんですか?私が何をするかわかりませんよ。」
「大丈夫!お詫びだし、信用してるから。それにね、人はね思考よりも行動なの。どんなに天才でも悪いことをすれば悪人だし、頭が悪くても人を助ければ英雄になるのよ。忘れないでね。」
「はい。肝に銘じておきます。」
「それじゃ、しゅっぱーつ! あんまり目立たないように森に送るから近くの村に行きなさいね〜。じゃあバイバーイ」
目の前が明るくなった。
そして目を開けると そこは 森。