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青い海のナギ  作者: 村松希美


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28/31

27 青の誕生日




 春の陽が、海面をきらきらと揺らしていた。


 青は小舟をゆらゆらと揺らしながら、網と潜水具を片づけ、クーラーボックスにサザエとアワビをしまい込んだ。


 潮の香りに包まれたまま、櫂を脇に置いて、ごろんと船底に寝転がる。

 空はどこまでも青く、海と溶け合う境目が見えない。


「なあ、ナギ……聞こえるか?」


 誰もいない海に向かって、ふと声をかける。


 あれから十数年、青の中ではナギは海の女神になった存在だった。

 けれど、なぜか今日は、やけに鮮やかに思い出される。


「俺さ、ナギに似てる嫁さんをもらったんだ」

 青は片腕を額の下に入れ、にやりと笑った。

「……あ、このことは嫁さんには内緒な」


 その瞬間だった。

 脳裏に電光のようなひらめきが走った。

 心臓がドクン、と強く鳴る。


 ——入江凪沙。

 あの微笑みも、海を見つめる瞳も、潮風に揺れる髪も——全部、ナギのものだった。


 今さらどうして気づかなかったんだ、と、青は上体を跳ね起こした。


 櫂を握りしめ、海面を蹴るように小舟を漕ぐ。

 波が弾け、陽光が水しぶきにきらめく。

 岸が近づくたび、胸の鼓動はますます速くなる。



 家の玄関を飛び込み、青はリビングの戸を開けた。


 そこでは、エプロン姿の凪沙が、二人の幼い子どもたちと一緒にケーキに苺を並べていた。


 テーブルの上には「HAPPY BIRTHDAY AO」と書かれたチョコプレート。


「おかえり!」と、子どもたちが駆け寄る。

 凪沙は驚いたように振り向き、青の顔を見た瞬間、その表情がふっとやわらいだ。


「……気づいたんだね」

 その声は、十数年前のあの日、波打ち際で聞いた声と同じ響きをしていた。


 青は息をのんだまま、ゆっくりと彼女に歩み寄る。

「……ナギ、だったんだな」


 凪沙は微笑み、少し涙ぐんだ瞳でうなずいた。

「私、海の女神になるより、人間になってずっと青の側いたかった。それには、掟があって……今日、掟が解けたの。だから、私から言おうと思ってた。でも……先に気づいてくれて、嬉しい」


 青は彼女の手を取り、子どもたちの前でぎゅっと握りしめた。


 2人の幼い息子たち、航太と櫂は、そんな青とナギを見て、

「ラブラブ! ラブラブ!」

 と、はやしたてた。そして、自分たちも、ナギたちに突進して行った。


 青は、幼い息子たちを引き入れて、ナギを囲んで、4人の笑顔はいつまでも止まななかった。



 人魚の掟とは、ナギが海の女神ではなく、人間になるなら、青の26歳の誕生日まで、ナギだと青に知られてはならないことだった。



 窓の外では、春の海が柔らかくきらめいていた。

 それは、もう二度と離れることのない、家族の海の色だった。



           





読んでいただき、ありがとうございます。


青たちが大人になってからの物語もアイデアを出して、AIが書いたものを加筆修正しました。


青い海のナギには、人魚伝説の海の女神、悲恋、八百比丘尼の不老長寿の要素を入れたかったのです。


でも、人魚の悲恋で、ナギと青を別れさせるのは嫌だなあと思いこういう物語にしました。


初めの予定では、ナギが海の女神になって、海で、見えないナギに青がお嫁さんの話をして終わろうかなと思ったのですが。


まだ、後日談もあります。


よろしくお願いいたします。

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