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21 八百比丘尼の伝説
数日後、港に向かう道で、青は漁師のじっちゃんと出くわした。
「青、元気ねぇな。」
じっちゃんは青の顔を見て、ふっとため息をついた。
「母さんが……病気で。」
青がぽつりと言うと、じっちゃんは少し考え込んだように、海の方を見た。
「昔からこの辺にはな……“八百比丘尼”って伝説がある。」
「八百比丘尼?」
「ああ。人魚の肉を食べた女が、不老長寿になったって話だ。何百年も生きちまったそうだ。」
じっちゃんの声は低く、波の音と混ざって青の耳に届いた。
「そんなもん、今じゃ昔話だが……もし本当なら、病も治るかもしれん。」
そう言ってじっちゃんは歩き出した。
青はその場に立ち尽くした。頭の中で、ナギの顔と母さんの顔が交互に浮かび上がった。




