10 ナギ、初めてのフライドチキン
学校にもすっかり慣れてきたナギは、青のお母さんとも仲良くなった。
家が隣同士なので、しばしば顔を合わせるようになったのだ。
ある日の午後、青のお母さんはにっこり笑って言った。
「ナギちゃん、青と一緒にケンタッキーに行かない?」
ナギは目を輝かせた。
「ケンタッキー? それってなんだか美味しそう!」
青のお母さんの車に乗り込み、青とナギは小さな冒険に出かけた。
ナギにとっては、初めてのフライドチキン。
熱々のチキンを手にしたナギは、一口かじるとその香ばしさとジューシーさに驚いた。
「うわあ! こんなにおいしいもの、初めて食べた!」
青は、お母さんにもナギが人魚だということをまだ言えないなあと思い、お母さんに耳打ちした。
「前の村じゃ、きっと刺身ばかり食べてたんだろうな」
「そうね、ナギちゃんは海の子だからね。こういう揚げ物は珍しいよね」
チキンを頬張りながら、ナギは青のお母さんに尋ねた。
「青のお父さんとお母さんは、どうやって出会ったの?」
「俺も聞きたい」
ナギと青は、身を乗り出した。
「……え? いきなりどうしたの?」
青のお母さんは一瞬きょとんとしたが、ふっと遠くを見るようにして、やがて微笑んだ。
「神戸よ。母さんの故郷は。学校を卒業して、会社のOLをしていたの。仕事終わりに、同僚と一緒にちょっと高めのお寿司屋さんに入ったの」
「神戸? 母ちゃん、神戸の人だったんだ」
青は驚いたが、クラスの女子たちに青は田舎の子には見えないねって言われたことを思い出した。
「おしゃれな街だけど、そのお店は港に近い下町の方でね。気取ってなくて、職人さんの腕で勝負してるようなお店だったの」
青は頷きながら聞いていた。ナギもじっと耳をすませていた。
「そのカウンターの端にいたのよ。ちょっと日焼けした漁師風の男の人。白いシャツを着て、腕にロープの跡がくっきり残ってて」
「それが父ちゃん?」
「そう。青の父さんよ。あの人、母さんが頼んだマグロの赤身を見て、いきなり言ったの。『それ、俺が昨日釣ったやつだ』って」
「えー! やっぱナンパじゃん!」
「ちがうのよ、あれは。自慢とかじゃなくて、ほんとに嬉しそうだったの。自分の獲った魚が、こんな風に都会で出されて、誰かが美味しそうに食べてるのが、すごく誇らしいって顔してたの」
お母さんの声は、どこか懐かしそうで、ちょっと照れているようでもあった。
「そこからいろんな話をしたわ。港町の暮らし、海のこと、魚のこと。母さんはその頃、都会のオフィスで毎日パソコンと向き合っててね……。目の前の世界が全部、同じ色に見えてた。でも、あの人の話す海の景色は、キラキラしてた」
「……へえ」
青は、お父さんをもっと知ったような気がして、胸が少し熱くなった。
「でもね、周りの人はみんな言ったわ。『なんで、そんな遠くの漁師さんと?』って。母さん自身も悩んだの。でも、あの人と話すたびに、心がまっすぐになるのを感じたの。……海の人って、風に逆らわないで進む術を知ってるのよ」
「風に……」
「うん。真っ直ぐで、優しくて、頑固だけど、包み込むような人だった。父さんは」
お母さんは笑いながら、ちょっとだけ目を潤ませていた。
ナギはその話にじっと耳を傾け、どこか懐かしい気持ちになった。
そして、青の隣でふと小さくつぶやいた。
「青も、そういうあたたかい家族に育っているんだね」
青は照れ笑いを浮かべながら、ナギとお母さんの優しい視線に包まれた。
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私も昨日知りました。




