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【番外編】「私のターン!」で入部届!? ~謎のPC部とTCG大会~

「サトシー! サトシも出るんだよ! 学内『修羅』大会!」

その日、僕こと中島サトシの比較的平穏だったはずの放課後は、廊下に響き渡る快活すぎる声によって、突如として終わりを告げた。

声の主は、PC部部長、風間アオイ(かざま あおい)先輩。

嵐のような勢いでこちらへ向かってくるその姿に、僕は確信する。

――また、面倒なことに巻き込まれる、と。

情報収集と解析作業のため、いつものように桜舞(おうぶ)高校のとある部室――PC部へ向かっていただけなのだが。

「先輩、いきなり何ですか…大会って?」

追いつかれ、勢いよく肩を組まれながら、僕は尋ねた。

「おう! 超ビッグニュースだ! 今度、生徒会主催で学内『修羅』大会が開催されることになった!」

「へえ、それは盛り上がりそうですね」

「だろ!? しかも今回は特別ルール! 全員L1NNK社支給の**『標準スターターデッキ』限定**! さらに3対3の団体戦だ!」

標準デッキ限定の団体戦?

普段の『修羅』のように、自慢のアバターやカスタムカードが使えない、純粋なプレイヤースキルとチームワークが問われる形式か。

それはそれで面白そうだが……。

「…で、それがどうかしたんですか?」

「決まってんだろ!」

アオイ先輩はニカッと笑って、僕の肩をバンと叩いた。(痛い)

「サトシも出るんだよ! PC部代表として!」

「ええっ!? いや、だから僕は部員じゃ……」

「細かいことは気にするな! いつも部室使ってんだから実質部員! それに、部活対抗だからな、ぶっちゃけ頭数が足りねーんだよ! な、頼むって!」

ぐいぐいと部室へ引きずられながら、断る隙を与えない、いつもの強引さにため息をつく。

脳内でアリスが冷静に分析を始める。

『マスター、この大会は学内ネットワーク上で行われるTCGシミュレーションのようです。参加者として登録されれば、通常はアクセスできない生徒会管理下のネットワーク領域への一時的なアクセス権限が得られる可能性があります。情報収集の観点から見ても、参加するメリットは大きいかと。風間さんや、運営に関わるであろう橘会長、他の生徒の動向を探る良い機会でもあります』

……アリスまで乗り気かよ。

というか、現実だと先輩にも「さん」付けなんだな。

「はぁ……わかりましたよ。出ますよ、出ればいいんでしょ」

「よっしゃ! さすがサトシ、話が分かる!」

部室に到着すると、アオイ先輩はガッツポーズ。

その時、僕は改めて部室の隅に目をやった。

そこには、前回来た時よりも明らかに増えている布の束、数種類のミシン、そして壁にはカラフルな糸がびっしりと掛けられている。

どう考えてもコンピューター関連ではない。

(……一体何の部活なんだ、ここは……?)

疑問は深まるばかりだが、今は大会に集中するしかない。

「それでな、サトシ。3人チームなんだが、あと一人足りないんだ」

アオイ先輩は顎に手を当ててうーん、と唸る。

「あたしがガンガン攻める前衛だろ? サトシが後ろで作戦立てる司令塔的な感じだろ? となると、やっぱチームを守ってくれるサポート役が欲しいよな……誰かいないか……?」

その、あまりにも都合の良いタイミングで、部室のドアが控えめに開かれた。

「あの、風間先輩、いらっしゃいますか…?」

そこに立っていたのは、小動物のような愛らしさを持つ後輩、桜井ミウ(さくらい みう)だった。

手には何か小さな包みを持っている。

アオイ先輩の目がキラリと光った。

「おおっ、ミウ! ちょうどいいところに! 飛んで火にいる…なんとやらだなw あんたも大会出るぞ!」

「え、えええ!? わたしですか!? あの、TCGなんて、やったことなくて……!」

慌てふためくミウに、アオイ先輩は有無を言わせず詰め寄る。

「大丈夫だって! サトシもいるし、僕がしっかり教えてやる! な? 女子がいた方がチームも華やかになるし、頼むよ!」

「あ、あの……中島先輩も、出るんですか……?」

ミウが、ちらりと僕の方を上目遣いで見てくる。

(うっ……その目で見られると断りにくい……)

「あ、ああ、まあ……成り行きで」

「そ、そうですか……。じゃ、じゃあ……先輩が出るなら、私も、その、足を引っ張らないように、頑張ってみます……!」

頬を赤らめ、小さな声でミウが参加を表明した。

持っていた包みは、どうやら僕に渡そうとしていた手作りクッキーだったらしい。

タイミングを逃したのか、ぎゅっと握りしめている。

(……完全に巻き込まれた形だな、ミウも)

僕は心の中で呟いた。

『マスター、桜井さんの参加は好都合です。彼女のウィーヴにおける《ミュー》としてのサポート能力が、TCGにおいても潜在的に発揮される可能性があります。興味深いデータが収集できそうです』

アリスはどこまでも冷静だ。

こうして、僕(助っ人司令塔?)、アオイ先輩(自称前衛)、ミウ(初心者サポート)という、なんとも即席感あふれるチーム「PC部(仮)」が結成されたのだった。

アオイ先輩は「よーし、まずはチームお揃いのリストバンドでも作るか!」と、早速裁縫道具を取り出している。

……本当に作る気らしい。

◇◆◇◆◇

大会まであと数日。

僕たちはPC部室で練習に励んでいた。

まずは、アリスによるTCG団体戦モードのルールと、「本来のプレイ手順」のレクチャーからだ。

『皆さん、よろしいですか? この団体戦モードでは、3人が同時に同一フィールドで戦います。チームでライフポイントを共有し、これがゼロになると敗北です』

アリスが部室の大型モニターに、ルール説明のグラフィックを表示する。

『各プレイヤーは個別の手札とマインドコストを持ちますが、カード効果の対象は敵味方問わず指定可能です。味方への支援、敵への妨害、ユニット連携が勝利の鍵となります』

『そして重要なのが、プレイ手順です。普段のウィーヴ戦闘では最適化されていますが、この大会では正式な手順を踏む必要があります』

モニターに表示される手順。

①ターン開始宣言: 「私のターン!」 → ドロー

②カードセット宣言: 「〇〇(カード名)をセット!」 → プレイ準備

③デプロイ宣言: 「〇〇(カード名)をデプロイ!」 → 実行

④効果説明/処理: カード効果を宣言し、実行、解決

『普段のマスターの戦闘は②と③、そして効果発動までを思考と同時に行っていますが、今回は一手一手、この手順で行います。思考時間制限もありますので注意してください』

「へえ、これが本来のやり方なのか。ウィーヴって奥が深いんだな」

アオイ先輩が感心したように頷く。

「よーし、早速やってみっか! 俺のターン! ドロー! うーん、これだ! 《突撃用ゴーレム》をセット! よし、デプロイ! 効果は…えーっと、突撃!」

『アオイさん、効果は「このユニットはデプロイされたターンに攻撃できる」ですね。正確にお願いします』

アリスの冷静なツッコミが入る。

「は、はいっ! わ、私のターン! ドローします……。えっと、これかな? 《守りの光》のカードをセット……! あの、デプロイします! 効果は、味方ユニット一体の防御力を、次の相手ターン終了時まで少しだけ上げます!」

ミウは緊張しながらも、一生懸命手順を確認しながらプレイしている。

健気だ。

「なるほどな……。僕のターン。 ドロー。……相手の動きを止めたい場面だな。よし、《システム・フリーズ》のカードをセット。 コスト確認……問題ない。《システム・フリーズ》をデプロイ。 効果は、相手プレイヤー一人のマインドコスト回復を次のターン、1減らす」

普段のハッキングのように、相手のリソースを削る戦術を試してみる。

僕たちはアリスの指導のもと、標準デッキのカードを使い、この「丁寧な手順」での連携練習を繰り返した。

アオイ先輩のパワープレイ、ミウの献身的なサポート、そして僕の状況判断とハッキング的思考。

最初はぎこちなかったが、徐々にそれぞれの役割が定まり、チームとしての形が見え始めてきた。

僕がミウにアドバイスする場面も増えた。

「ミウ、その防御カードは、相手が攻撃宣言した後に出した方がいいぞ」

「は、はい! ありがとうございます、先輩!」

素直に聞き入れ、少しずつ上達していくミウの姿は、見ていて悪い気はしない。

むしろ、少し楽しいかもしれない、なんて思ってしまった。

◇◆◇◆◇

そして大会当日。

会場の体育館は、普段とは違う熱気に包まれていた。

各部活の代表チームが集い、観客席も多くの生徒で埋まっている。

ステージ上では生徒会長の橘レイカ(たちばな れいか)先輩が、完璧な所作で開会宣言を行っていた。

「それでは、第一回桜舞(おうぶ)高校『修羅』TCG団体戦、開会を宣言します!」

僕たちチーム「PC部(仮)」の初戦の相手は、意外にも「文芸部チーム」だった。

物静かそうな生徒たちだが、侮れない雰囲気を醸し出している。

「よーし、いっちょ派手にかましてやろうぜ!」

アオイ先輩が腕まくりをして意気込む。

手首には、彼女が徹夜で作った(らしい)お揃いのリストバンドが巻かれていた。布製だ。

「は、はい! 頑張ります!」

ミウもリストバンドを握りしめ、深呼吸している。

「落ち着いていきましょう。練習通りにやれば大丈夫です」

僕は二人を励まし、対戦フィールドへと向かった。

「「「ゲーム、スタート!」」」

試合が始まった。

序盤、文芸部チームは手札を充実させながら、じっくりと盤面を構築してくる。

アオイ「ちまちまと面倒だな! 俺のターン! 《ヘヴィ・ストライカー》セット、デプロイ! 効果はこのターン攻撃可能! 行けぇ!」

アオイ先輩が早速ユニットで攻め込むが、相手チームの一人が冷静に対応する。

文芸部員A「私のターン。 《詩的防御》セット、デプロイ。 効果は、相手ユニット一体の攻撃を無効化し、そのユニットの次の攻撃力を1下げる」

アオイ「なにっ!?」

サトシ「アオイ先輩、焦らないで! ミウ、サポート頼む!」

ミウ「は、はい! 私のターン! 《癒やしの雫》セット、デプロイ! 効果で、アオイ先輩のユニットの下がった攻撃力を元に戻します!」

サトシ「僕のターン。 相手は防御を固めてきたな……。アリス、相手の手札予測は?」

アリス『高確率でコンボパーツを揃えに来ています。キーカードは《文学的連鎖》と予測。コストが溜まる前に妨害が必要です』

サトシ「了解。《データ・リーク》セット、デプロイ。 効果は、相手プレイヤー一人の手札をランダムに1枚公開させる。…やはり《文学的連鎖》か。なら、《コスト・バーン》セット、デプロイ! 効果で、相手チーム全体の次のターン使用可能コストを1減らす!」

僕たちの連携で、相手の戦略を少しずつ崩していく。

アオイ先輩が前線でプレッシャーを与え、ミウがそれを守り、僕が相手の狙いを読んで妨害する。

練習の成果が着実に出ていた。

文芸部チームも粘り強く抵抗してきたが、最後は僕たちの連携が上回り、初戦を突破することができた。

「やったー!」

ミウが小さく飛び跳ねて喜ぶ。

「へへ、なかなかやるじゃねえか、俺たち!」

アオイ先輩も満足そうだ。

その後も僕たちは順調に勝ち進んだ。

対戦相手は様々だった。

パワー重視の「運動部連合チーム」、トリッキーな戦術の「科学部チーム」、意外な堅実さを見せた「料理部チーム」……。

どの試合も楽ではなかったが、その度に僕たち3人の連携は深まっていった。

ミウは試合を重ねるごとに自信をつけ、的確なサポートでチームを何度も救った。

アオイ先輩は持ち前のパワーで重要な局面を打開し、ムードメーカーとしてもチームを盛り上げた。

そして僕は、アリスの分析と自身の判断でチームを導き、相手の戦略の裏をかくようなプレイで勝利を手繰り寄せた。

観客席からも「あのPC部、強いぞ!」「特にあの指示出してるメガネの奴、何者だ?」という声が聞こえてくる。

少し気恥ずかしいが、悪い気はしない。

そして、ついに僕たちは決勝戦へと駒を進めた。

相手は、やはりというべきか、「生徒会チーム」。

メンバーは、橘レイカ会長、そしていかにも切れ者といった風情の副会長と書記の3人だ。

「いよいよ決勝だな!相手にとって不足なし!」

アオイ先輩が拳を握る。

「ぜ、絶対に勝ちましょうね、先輩!」

ミウの瞳にも強い意志が宿っている。

「ええ。ここまで来たら、優勝しましょう」

僕も頷き返し、決勝のフィールドへと歩を進めた。

◇◆◇◆◇

決勝戦は、序盤から息詰まるような高度な読み合いとなった。

生徒会チームは、レイカ会長を中心とした完璧な連携を見せつけてくる。

無駄のないカードプレイ、的確な状況判断、そして相手の思考を先読みするような戦術。

標準デッキとは思えない多彩な攻めを見せてくる。

副会長「私のターン。《規律正しき騎士》セット、デプロイ。 効果で場のユニットを強化」

書記「私のターン。《精密なる分析》セット、デプロイ。 効果で中島君の手札を一枚確認させてもらいます」

レイカ会長「私のターン。《会長の威令》セット、デプロイ。 効果により、相手チーム全体の次の行動コストを増加させます」

流れるような連携で、僕たちは徐々に追い詰められていく。

チームライフはじりじりと削られ、盤面も不利な状況に。

アオイ「くそっ、硬え上に厄介な効果ばっか使いやがって!」

ミウ「ライフがもう…!」

アリス『マスター、厳しい状況です。相手の連携を断ち切らなければ、あと2ターンで敗北する確率、92.4%』

(ここまでか……? いや、まだだ!)

僕は必死に活路を探す。

アリスの分析、盤面の状況、そして相手の表情。

全てを統合し、一筋の可能性を見出した。

「アオイ先輩、ミウ、次のターンで全てを賭けます! 僕の指示通りに動いてください!」

僕の声に、二人は力強く頷いた。

そして、運命のターンが訪れる。

サトシ「僕のターン! ドロー! ……これだ! 《逆転のプログラム・コードX》セット!」

手札に来たのは、一見地味だが、特定の条件下で強力な効果を発揮するプログラムカード。

これに賭ける!

アオイ「おう! 俺も合わせるぜ! 《捨て身の突撃ユニットY》セット!」

アオイ先輩も、僕の意図を察したかのように、攻撃的なユニットをセット。

ミウ「私も…! 信じます! 《絆の支援フィールドZ》セット!」

ミウも、震える手で支援カードをセットした。

相手チーム、レイカ会長のターン。

彼女は完璧な微笑みを崩さない。

レイカ会長「詰め、ですね。私のターン。《最終宣告》セット、デプロイ。 効果で…」

サトシ「その瞬間を待っていた! 全員、デプロイ!!!」

僕の叫びと同時に、僕、アオイ先輩、ミウの3人が、それぞれのセットしたカードを同時にデプロイした!

通常の手順を無視した、息の合った同時発動!

レイカ会長「!?」

さすがのレイカ会長も、一瞬だけ驚きに目を見開いた。

サトシ「《逆転のプログラム・コードX》の効果発動! 相手の効果発動にチェーンし、このターン、俺たちのチームライフがゼロにならなくなる! さらに!」

アオイ「《捨て身の突撃ユニットY》デプロイ! 効果でレイカ会長のユニットに特攻!」

ミウ「《絆の支援フィールドZ》デプロイ! 効果で、アオイ先輩のユニットの攻撃力を、サトシ先輩の場のカード枚数分、大幅にアップさせます!」

サトシ「そして僕の最後のカード! トラップカードオープン! 《カウンター・ハック》! 相手が効果を発動した時、その効果を無効にし、相手チームライフに効果ダメージを与える!」

全ての効果が連鎖し、炸裂する!

レイカ会長が発動しようとした《最終宣告》は無効化され、超強化されたアオイ先輩のユニットの攻撃が相手ライフを大幅に削り、僕のトラップカードがとどめの一撃を叩き込んだ!

生徒会チームのライフポイントを示すゲージが、ゼロになる。

『……Winner, Team PC部(仮)!』

アナウンスが響き渡り、一瞬の静寂の後、体育館は割れんばかりの歓声に包まれた。

僕たちは、優勝したのだ。

「「「やったーーー!!!」」」

僕たちは思わずハイタッチを交わしていた。

アオイ先輩は僕の背中をバンバン叩き、ミウは嬉し涙を浮かべている。

◇◆◇◆◇

表彰式。

レイカ会長自ら、僕たちに賞状と優勝カップを手渡してくれた。

その表情はいつも通りの完璧な微笑みだったが、瞳の奥にわずかな悔しさと、それ以上の興味が宿っているように見えたのは、気のせいだろうか。

レイカ会長「素晴らしいチームワークと、見事な逆転劇でした。PC部の皆さん、優勝おめでとうございます。…つきましては、記録のため、部の正式名称を伺ってもよろしいでしょうか?」

アオイ先輩は、受け取った優勝カップを高々と掲げ、満面の笑みで答えた。

「おう! やったぜお前ら! これぞ桜舞(おうぶ)高校『Patchwork Circle』(パッチワークサークル)のチームワークだ!」

その瞬間、僕とミウ、そして会場の多くの生徒たちの動きが止まった。

サトシ・ミウ「「………え? パッチワーク!?」」

体育館が、先ほどとは違う意味のどよめきに包まれる。

アリス『……音声認識、データベース照合完了。正式名称『パッチワークサークル』。略称PC。登録情報と一致しました。合理性はともかく、事実は事実のようです』

僕の脳内に響く、どこか面白がっているようなアリスの声。

……お前もグルだったのか!?

◇◆◇◆◇

後日、PC部室改め、パッチワークサークル部室。

真新しい優勝カップと、増殖し続ける大量の布や手芸用品に囲まれて、僕たちはいた。

「先輩、一つ聞いてもいいですか?」

僕はずっと疑問だったことを口にした。

「この部室、なんであんな高性能なワークステーションがあるんですか? 手芸系の部活には不釣り合いな気が……」

アオイ先輩は、製作途中らしきクッションを脇に置き、悪びれもなく答えた。

「ん? ああ、これか? これは僕が趣味でパーツかき集めて魔改造したやつなんだよ! 最新パーツは高いから無理だけど、工夫次第で結構使えるマシンになるんだぜ? デザイン考えたりするのにも便利だしな!」

なるほど、先輩の自作だったのか。

「それに、学校側もさ、僕が『PCサークル』って申請したら、『パーソナルコンピューター』の方だと勘違いしたみたいで、なぜかモニターとか周辺機器の予算だけは出してくれたんだよな! ラッキー!みたいな?」

……半分は学校の勘違いも利用していたらしい。

アオイ先輩らしいというか何というか。

「まあ、お陰で優勝できたし、結果オーライってことで!」

アオイ先輩はそう言って笑うと、僕とミウに例の紙を突きつけた。

「というわけで、優勝メンバーは強制的に正式部員な! ほら、入部届!」

そこには、既に僕とミウの名前(おそらくアオイ先輩の代筆)が書かれ、生徒会受理印まで押されていた。

サトシ「勝手にぃぃ!」

ミウ「あ、あの、よろしくお願いします!」

ミウはもう諦めたのか、あるいは満更でもないのか、ぺこりとお辞儀をする。

アオイ「よーし、じゃあ優勝祝いと新入部員歓迎会兼ねて、みんなでお揃いのティーコゼーでも作るか!」

アオイ先輩が早速、型紙と布を取り出す。

手際がいい。

サトシ「ティーコゼーって、なんですか?」

僕が素朴な疑問を口にすると、アオイ先輩とミウがきょとんとした顔でこちらを見た。

ミウ「えっと、紅茶のポットを保温するカバーですよ? 先輩、知らないんですか?」

アオイ「マジかサトシ! 女子力低いなー!」

僕は二人に若干引かれつつ、これから始まるであろう新たな日常に思いを馳せた。

ミウ「はい! 私、デザイン考えます! 可愛いのがいいですね!」

ミウは目を輝かせている。

…とその時、アオイ先輩がふと真顔になって呟いた。

「ふぅーコレで廃部の危機も脱出だな」

サトシ「(やっぱりそれが目的かよ!!! 大会優勝が条件だったのか!?)」

まあ、いいか。

チームで力を合わせて何かを成し遂げるのは、思った以上に悪くなかった。

それに、ここなら高性能ワークステーションも使えるし、ミウとも一緒にいられるし、アリスとの秘密の作業も安全に進められるかもしれない。

こうして、ハッカーと巫女と元ランカー(?)による、廃部寸前(?)から奇跡の復活を遂げた(かもしれない)、奇妙で賑やかな新生パッチワーク(兼 電脳活動?)サークルが、正式に始動したのだった。

(番外編 了)

番外編「「私のターン!」で入部届!? ~謎のPC部とTCG大会~」、お楽しみいただけましたでしょうか!

今回は学内TCG団体戦の裏側を描きました。まさかのパッチワークサークル爆誕!(笑) アオイ先輩の強引さと、ミウちゃんの可愛らしい健気さが光る回でしたね! サトシも巻き込まれつつ、しっかり勝利に貢献してました。

普段の電脳無双とは一味違う、ちょっとドタバタした学園コメディとして楽しんでいただけたら嬉しいです。

【今後の更新】

次回は本編、第九話です!

本編『俺ハカ』は毎週月・水・金19:50更新予定です!

ブックマークや更新通知設定をお忘れなく!

【応援のお願い】

「番外編も面白い!」「PC部(仮)の今後が気になる!」と感じていただけたら、ぜひ下の☆評価やブックマーク、感想で応援をお願いします!

皆さまからの反応が、本編はもちろん、こうした番外編執筆の励みにもなります!

それでは、また本編でお会いしましょう!

#俺ハカ #番外編 #TCG #パッチワークサークル #学園コメディ #アオイ先輩 #ミウちゃん #なろう #毎週月水金更新

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