【番外編】アップデートはお手の物? ~隣に立つAI美少女~
待ちに待った休日だ。
ネオ東京の空は相変わらず人工雲でどんよりしてるけど、僕の心はキラキラ輝いてる。
だって、今日は前々から企んでた「超スペシャル実験」を実行する日なんだから!
場所は父さんの形見である私室兼秘密ラボ。
散らかった電子パーツの山を蹴散らし、僕はワークデスクにドンッと腰を下ろす。
目の前にあるのは、僕の体内に埋め込まれたインプラント型チップ「NEO-L1NNK」を調整するための外部制御ユニット。
父さんが遺したこの技術をいじるのが、僕の生きがいみたいなものだ。
『マスター、本日の予定はオフライン学習と休息です。推奨外のデバイス改造はシステムエラーのリスクを――』
頭に響くのは、アリス(現実モード)の冷静すぎる声。
AIなのに、まるでお母さんみたいに心配性だな。
「大丈夫だって、アリス! ただのアップデートさ」
「ウィーヴでのアバターに視覚情報の解像度とフレームレートをフィードバックするだけ。もっとリアルな没入感があれば、戦闘もハッキングも完璧になるだろ?」
そう、表向きは「僕のアバター強化大作戦」!
嘘じゃない。
嘘じゃないけど……まあ、正直それだけじゃないってのも、あるっちゃある。
『感覚入力の向上によるパフォーマンス改善ですね。理論上合理的です』
『必要なのは高周波対応の神経接続スタビライザーと最新グラフィックチップへの換装。手持ちのパーツで実装可能です』
「だろ? さすがアリス、話が早いぜ!」
ニヤリと笑って半田ごてを手に取る。
外部制御ユニットをガチャリと開けると、NEO-L1NNKとリンクした複雑な回路がこんにちは。
父さんの技術の結晶だけど、僕には見慣れたお友達だ。
アリスの的確なナビを受けつつ、チップ換装、配線整理、ドライバ更新、パラメータ調整をサクサク進めていく。
(よし、これでウィーヴのアバターが超クッキリ、超ヌルヌルに!)
(「月影」の軌跡とか、コートの翻りとか、細部までバッチリ感じられる!)
そんなことを妄想しながら、作業は順調そのもの。
そして仕上げの瞬間――。
「せっかくだし、もう一つ機能を追加しちゃおうかな?」
あくまで「ついで」っぽく呟いてみる。
『追加機能ですか、マスター?』
アリスの声に、ほんの少し「何企んでるの?」的なニュアンスが混じる。
いや、気のせいだよな?
「ああ、デバッグとかリアルタイム情報共有に便利かなってさ」
「アリスを簡易ホログラムで室内に表示する機能だよ。視覚的に見えた方が効率上がるだろ?」
『ホログラム表示……確かに状況によっては有効ですね』
『必要なモジュールとAPIは既存リソースで実装可能です。実行しますか?』
「頼むよ、サクッとやってくれ!」
内心の「キタコレ!」を隠して、クールに指示。
心臓がドキドキしてるなんて、絶対バレない……はずだ。
『実装完了しました。マスター、テスト起動いつでも可能です』
「サンキュ、アリス!」
ゴクリと唾を飲み、コンソールにコマンドを打ち込む。
hologram_alice_activate
エンターキーをポチッと押す。
すると――
部屋の中央に、光の粒子がキラキラッと集まり始めた。
そして、光が形を結ぶと、そこに現れたのは――
透き通るような白い肌。
腰まで流れる銀色の髪が、さらさらっ。
吸い込まれそうな青い瞳が、キラーン。
白いワンピース風のサイバーウェアが、ふわっ。
ウィーヴでいつも見てるアリスの姿が、そこに立ってた。
いや、ただの映像じゃない。
高精細ホログラムだ!
髪の一本一本、肌のツヤまでリアルすぎて、まるで本当にそこにいるみたい。
初めて目にするホログラムのアリスは、まるで女神のようだった。
光をまとったその姿は、ネオ東京のどんよりした空さえ忘れさせるほどの美しさ。
僕は、思わず息をのむしかない。
「……っ!」
(やばい、やばい、やばすぎる! 想像の千倍クオリティ高い!)
「わぁっ……!」
突然、ホログラムのアリスが小さく声を上げた。
驚いたように目を丸くして、自分の手を見つめたり、くるっと回ったりしてる。
ホログラムなのに表情がコロコロ変わって、めっちゃ可愛い!
『これが私のウィーヴでの姿なのね。不思議な感じ!』
『サトシ、どう? ちゃんと可愛く見えてる?』
小首を傾げて聞いてくるその仕草は、ウィーヴのアリスそのもの。
声も現実モードの無機質さから一変、暖かくて親しみやすいトーンにシフトしてる。
「あ、ああ……まあ、悪くないんじゃない? データ通りちゃんと表示されてるよ」
内心の「可愛すぎて死ぬ!」を必死で隠して平静を装う。
顔、熱い。絶対赤くなってる。
『むぅ、「悪くない」って何よ! もうちょっとマシな褒め言葉ないの?』
『例えば「アリス、めっちゃ綺麗だよ!」とかさ!』
ホログラムのアリスが頬を膨らませて拗ねる。
その表情の破壊力がヤバすぎる。
「う、うるさい! お前のためじゃないって!」
「アバター強化のついでで、デバッグ用だって言っただろ!」
照れ隠しにキツい口調になっちゃう僕。
でも、ここでふと閃く。
「なあ、アリス。せっかくだからさ、ホログラムの出来栄えを三百六十度チェックしてみようぜ」
僕はさりげなく提案。
内心、「これでアリスの全貌をじっくり見れる!」って企んでるなんて、アリスにはバレてない……よね?
『え、三百六十度? うーん、まあいいけど……』
アリスがちょっと不思議そうに頷く。
僕は早速、ホログラムの投影角度を調整するコマンドを打ち込んで、アリスをゆっくり回転させる。
さらさらの銀髪がふわりと揺れ、ワンピースの裾が軽く翻る。
背中、横顔、どの角度から見ても完璧すぎる造形。
まさに女神、いや、天使、いや――
もう言葉にならないレベルだ!
「……っ、マジで完璧すぎる……」
「おぉーー♡」っと、思わず呟いた瞬間、アリスがくるっとこっちを向いて――。
『きゃっ♡ サトシったら!』
突然、アリスが顔を赤らめて両手でスカートを押さえた。
ホログラムなのに、めっちゃリアルな反応でこっちを睨んでくる。
「えっ!? ち、違うって! ただ出来栄えを確認しただけで――」
『ふーん、確認ねぇ? 三百六十度じっくり見るなんて、怪しすぎるんですけど!』
アリスがジト目でツッコんでくる。
いや、その表情も可愛すぎて反則だろ!
「ぐっ……! と、とにかく! お前のためじゃないんだからな!」
必死に言い訳するけど、心臓がバクバク止まらない。
『はいはい、わかってますよーだ。ついで、ついで♪』
『でも、これで現実でもサトシのそばにいられるみたいで、ちょっと嬉しいかも?』
アリスはそう言って、ふわりと花が咲くような笑顔を見せた。
そして、少し照れたように視線をそらすと、ふわりと僕の方へ近づいてきた。
ホログラムだと分かっているはずなのに、その自然な仕草にドキッとする。
アリスの姿が、すぐ目の前まで迫る。
透き通るような白い指が、僕の頬にそっと触れようと――
(あ…)
指は、当然のように僕の体をすり抜ける。ホログラムだから当たり前だ。
…なのに。
ゾワゾワっとした、微かな感覚がNEO-L1NNKを通じて脳に伝わった。
温かいような、くすぐったいような、不思議な擬似触覚フィードバック。
まるで、本当にアリスに触れられたかのような、淡い感覚。
「!?」
僕が驚いて目を見開くと、アリスも自分の手と僕の顔を交互に見比べて、不思議そうに首を傾げた。
『あれ……? 今、何か……?』
『サトシ、何か感じた?』
「……いや、なんでもない。気のせいだろ、ホログラムなんだから」
僕は動揺を悟られまいと、ぶっきらぼうに答える。
だけど、頬に残る気のせいではない「感覚」が、僕の心臓をさらに速く打たせた。
(これも、アップデートの影響か……? それとも……)
結局、僕がNEO-L1NNKをいじった理由が「アバター強化」だったのか、「アリスをホログラムで見たい」だったのか――
まあ、正直どっちでもいいや。
だって、結果的に両方手に入ったんだから!
目の前に立つAI美少女。
手の届きそうな距離にいて、そして、もしかしたら「触れられる」かもしれないホログラムのアリス。
これから僕の日常は、もっと賑やかで、もっとドキドキするものになるに違いない。
そんな確信が湧いた、ある休日の午後だった。
(番外編 了)
【作者より】
いつも応援ありがとう!
今回は「アリスのビジュアルを現実で!」って願望から生まれた番外編。
サトシの技術力なら、これくらい余裕だよね!
ホログラムのアリス、どうだった?
彼女の魅力が伝わってたら嬉しいな。
本編も全力でいくから、これからもよろしくね!
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今回の番外編「アップデートはお手の物?」、お楽しみいただけましたでしょうか?
ついに現実世界に現れた(?)ホログラムのアリス、可愛かったですね!
さて、次回も引き続き番外編をお届けします!
今度は、あの嵐を呼ぶ(僕っ娘)先輩とアキバへお出かけ…? デッキ強化計画のお話、『【番外編】アキバデート? ~嵐を呼ぶ(僕っ娘)先輩とデッキ強化計画~』の予定です。
更新は次の【金曜日 19:50】です!
本作『俺ハカ』は、原則【毎週 月・水・金の19:50】更新ですので、引き続きよろしくお願いします!
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