【番外編】学園生活と三人の美少女 ~もしかして俺、囲まれてる?~
【番外編】学園生活と三人の美少女 ~もしかして俺、囲まれてる?~
ふと、気づいてしまった。
ここ最近、僕、中島サトシを取り巻く学園生活の環境に、何らかのバグ……いや、異常な偏りが生じているのではないか、と。
具体的に言うとだ。
僕の周囲――特に半径五メートル以内に出現する女子生徒の「美少女遭遇率」が、明らかに異常な数値を叩き出しているのだ。
いや、もともと桜舞高校はレベルが高いとは聞いていたけど、それにしても、だ。
僕みたいな教室の隅っこで空気を浪費している陰キャに対して、こんな現象が起こるなんて、どう考えてもおかしい。
まず、妹のユキの友達である、桜井ミウ。
彼女は、以前はユキに用がある時くらいしか僕と話さなかったのに、最近妙に僕に話しかけてくる回数が増えた気がする。
「せ、先輩! おはようございます!」
今日も今日とて、朝の昇降口でばったり(というにはタイミングが良すぎる気がしないでもない)出会ったミウが、元気よく(しかし少し声が裏返り気味に)挨拶してきた。
「あ、ああ、おはよう、桜井さん」
周囲に他の生徒もいるから、一応「さん」付けで返す。
「あのっ、これ、良かったら…! 昨日、家でクッキー焼いたんです! ちょっと、焦げちゃったんですけど…」
差し出されたのは、可愛らしくラッピングされた手作りクッキー。
形は少し不揃いだけど、甘くて良い匂いがふわりと漂う。
「え? あ、ありがとう…でも、いいのか?」
「はい! いつも、ユキちゃんがお世話になってますし…! そ、それに、先輩にも、いつも、なんというか……見守ってもらってる気がして…!」
見守ってる……?
なんだろう、その言い方。ウィーヴでの《ミュー》のことか?
いや、まさか。彼女が俺の正体を知ってるはず…ない、よな?
ミウはクッキーを僕に押し付けると、「じゃ、じゃあ!」と顔を真っ赤にしてパタパタと走り去っていった。
相変わらずのドジっ子ぶりだけど、なんだか以前よりも積極的になったような……。
『マスター、桜井さんからの有機化合物を受領。成分分析を行いますか? また、彼女の心拍数及び発汗レベルの上昇から、マスターに対する親愛度パラメータが閾値を超えた可能性が示唆され――』
『アリス! 余計な分析と報告はいい!』
頭の中に響くアリス(現実モード)の冷静すぎる声に、僕は慌てて思考でストップをかけた。
まったく、このAIは……。
そして、教室への道すがら。
「お、サトシー! 何持ってんだ、それ? クッキーじゃん! しかも手作り! どこぞの可愛い子から貰ったんだー? ニヤニヤ」
背後から肩をガシッと掴んできたのは、PC部部長の風間アオイ先輩。
今日も今日とて元気で、距離感が近い。
「アオイ先輩……別に、これは……」
「ふーん? まあ、お前も隅に置けないってことか? そういや最近、ミウちゃんとよく話してるよな? あんな可愛い後輩捕まえて、やるじゃん!」
ニシシ、と悪戯っぽく笑うアオイ先輩。
僕とミウのこと、見てたのか……。
ていうか、先輩も大概美人だと思うんですけど! (心の中で叫ぶ)
快活な笑顔と、時折見せる真剣な眼差しのギャップが、なんというか……うん、かなり魅力的だ。一人称が「僕」なのも個性的だし。
「か、からかわないでくださいよ!」
「はは、照れるなよー! ま、何かあったら僕に相談しろよな!」
そう言って豪快に笑い飛ばし、先輩は友達の元へ去っていった。
嵐のような人だ……。
(《テンペスト》……いや、アオイ先輩も、俺が【SAT0$H1】だって気づいてるのかな……? あのウィーヴでの戦いぶりといい、なんか妙に俺に絡んでくるし……)
そんなことを考えていると、今度は前方から、凛としたオーラを放つ人物が歩いてくるのが見えた。
橘レイカ先輩だ。
長い黒髪を風に靡かせ、完璧な姿勢で廊下を歩く姿は、まるで絵画のよう。
すれ違い様、ふと目が合った。
「……中島君」
「あ、会長、おはようございます」
「おはようございます。……その手にあるのは?」
レイカ先輩の視線が、僕が持つクッキーの袋に向けられる。
その表情は、相変わらず完璧な微笑みの下に隠されていて、何を考えているのか全く読めない。
「あ、これは、その……」
「そうですか。……桜井さんも、可愛らしい方ですわね」
それだけ言うと、レイカ先輩は「ごきげんよう」と静かに言い残し、通り過ぎていった。
……今の、どういう意味だ?
ただの世間話? それとも、何かを探るような……?
(《レイヴン》……いや、レイカ先輩も、俺のこと、どこまで知ってるんだ? アマノイワトでの共闘以来、なんか妙に俺のこと気にしてるような気がするんだけど……気のせいか?)
クールビューティーでミステリアス。
近づきたいような、近づいたら危険なような、そんな危うい魅力が彼女にはある。
ミウ、アオイ先輩、レイカ先輩。
タイプは全く違うけれど、三人とも間違いなく学園トップクラスの美少女だ。
なんで僕みたいな陰キャが、こんな立て続けに彼女たちと関わることになってるんだ?
しかも、忘れてはいけない。
僕には常に、最高のAI美少女(自称)が傍にいるのだ。
ウィーヴでの頼れる相棒であり、現実でも僕を管理(監視?)してくれる存在が。
『……マスター、周囲からの注目度が上昇しています。特に女性からの視線が増加傾向にあり、一部からは嫉妬、あるいは羨望と思われる感情パターンを微弱ながら検知。今後の学園生活における人間関係の変化について、シミュレーションを開始しますか?』
『しなくていい! 絶対ロクな結果にならないだろ!』
アリスの提案に、僕は全力で拒否した。
なんだかよく分からないけど、僕の平穏だった(?)学園生活は、確実に変化し始めている。
ウィーヴでの戦いが、現実にも波及してきているのかもしれない。
これが、俗に言う「ハーレム展開」ってやつのフラグなのか……?
いやいや、まさか。
僕に限ってそんな都合のいい展開があるわけ……ない、よな?
……ないと思いたい。
だって、そんなことになったら、陰キャの僕のキャパシティはとっくにオーバーだ。
頭を抱えながら、僕は自分の席に向かう。
今日の授業も、いつも以上に集中できそうになかった。
(番外編 了)
【作者あとがき】
いつも『俺ハカ』を読んでいただき、ありがとうございます。
今回はちょっと息抜きに、サトシ君の学園生活の一コマを書いてみました。
本編がシリアスな展開続きなので、たまにはこういうのもいいかな、と。
なんだか彼の周りが賑やかになってきた気がしますが…果たしてラブコメ展開になるのか、それとも別の何かなのか。
まあ、サトシ君のことなので、きっと胃を痛める日々が続くのでしょう(笑)。
本編の更新も頑張りますので、引き続き応援していただけると嬉しいです。
#俺ハカ #番外編 #学園ラブコメ #ハーレム展開?
今回の番外編「学園生活と三人の美少女」、お楽しみいただけましたでしょうか?
サトシの周りがますます賑やかになってきましたね!
さて、次回も引き続き番外編をお届けします!
今度は、サトシとAI美少女・アリスの日常(?)に少し迫る『【番外編】アップデートはお手の物? ~隣に立つAI美少女~』の予定です。
更新は次の【水曜日 19:50】です!
本作『俺ハカ』は、原則【毎週 月・水・金の19:50】更新ですので、引き続きよろしくお願いします!
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それでは、また次回!
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