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■四章 聖夜の魔法が送る初恋 1


 生きていることの意味が変わる。

 少し大袈裟かもしれないがそれが恋なのかもしれない。

 一途な恋は炎ように激しく燃え広がり、激しく熱を放つ。

 恋は相手が居ないと成立しない。

 君に会えなければ、恋は生まれない。

 君の裸を見るまでは……恋は続く。

 豪雨に晒されても、全てを拭き呼ばすような嵐が訪れても。

 恋の炎は消えない。

 例え、消えたと思っていても、火種が残っていれば再び激しく燃えるかもしれない。

 何気ない悩みや発見も君と共有したい。

 恋の主役を目指すなら――聖夜の魔法が最も身近な手段と言えるかもしれない。

 言い方を変えれば私立桜花学園の在校生なら誰でも主役になれるチャンスがある。


「凄い賑わってるな」


 恋人(仮)の二人は手を繋いで、私立桜花学園の正門にやって来た。

 いつもの殺風景な景色とは違い、赤、黄色、緑、青の花で装飾が施された大きな看板や大きな祝宴の華が並べられている。


「だね~、今日はOBの先輩たちも駆けつけて屋台を出したり踊りや演劇で盛り上げてくれる特別な日だからね! ってことで早く中に入ろう?」


「そうだな」


 和田と北条はいつも違う校門の中に入っていく。

 ずっと待っていましたと言わんばかりに男女の盛り上がり方が凄い。

 特にテンションが高いメンツは今日のフィナーレを飾る目玉イベント聖夜の魔法で主役になろうとする者たちだ。

 今から緊張しては夜まで持たないだろう。

 違うのだ、若い彼ら彼女らは夜に向けて今からテンションをさらに上げて行き、最高の状態で意中の相手を落とすのである。

 そこに水をかけるのは御法度である。


「おっす! 相変わらず仲良しだな」


 和田と北条に声を掛けて来たのは両手に焼きトウモロコシを持った坂本だった。

 浮かれているのか、いつもより声に元気がある。


「今日は一人か?」


「んなわけねぇだろ。千沙と一緒」


 和田が近くを見渡すが何処にもいない。

 それに気づいた坂本が口を開く。


「並ぶの嫌だから買ってこいって言われた。アイツならほらあそこ」


 坂本の視線の先には腕を組んで壁に背中を預けて待つ千沙の姿があった。


「なんか機嫌悪そうだけど坂本君なにしたの?」


「し、してねぇよ……。まだ……」


「なに企んでるの?」


「正確には今は企んでねぇ。昨日他校の女の子とデートしてるの見られて、それどころじゃないからな」


「相変わらずのカスだな、お前」


 和田はため息がでた。

 手が早くて範囲が広いと思っていたが、まさか他校の女子とまで遊んでいたとは思わなかったからだ。


「お前にしては珍しいな」


「……そうなんだよな。俺もなんでバレたかわからんで困ってる。それがわかるまでは大人しくするつもりだ」


 もう一度和田と北条が千沙を見ると、たしかに怒っていて不機嫌なように見える。

 どうしようもない男を好きになった千沙に二人は同情する。

 千沙がそれに気づいたのか、ハンドシグナルで早く来いと坂本に指示を送る。


「早く行ってあげて。千沙ちゃんこれ以上不機嫌になったら手と足が出る子だから」


 北条の言葉に「やべっ」と声を漏らした坂本は、


「な、ならまた後で会えたら会おうぜ二人共!」


 そう言って小走りで千沙の元に行く。

 珍しく弱々しい坂本の背中を見送る二人は同じことを思う。


「尻に引かれるタイプだね、あれは」


「だろうな」


 和田は心の中で坂本を反面教師にした。

 北条が和田の顔を覗き込む。


「なら私たちもなんか食べながら見て回らない?」


「そうだな」


「なに食べたい?」


「なんでもいいが、軽いものがいいな」


 和田がそう言うと、「あっ、なら待ってて! 私食べたいのあるから」と言って繋いでいた手を離して何処かへ走っていく。

 数分後戻って来た北条の手には大きな綿菓子があった。

 和田はそんな北条を見て可愛いなコイツ、と思った。



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