託す者たち
目の前の老人と対峙した時、二人の恩師の顔が浮かんでいた。
そう言えば、あの人達にも敵わなかったな。二人には初めて力の差を思い知らされた。
豪剣士の達人オルフェンと武の化身アルム。良く笑う豪快な漢で闘気のオーラを隠す事が出来ないのでいつも身にオーラを纏っていた。対してアルムは寡黙な漢で目の前に居ても気配を感じないくらいだ。
古代龍を頭とした竜の群れと対峙した時の事だ。
オルフェンは竜達の放つブレスを器用に避けながら次々と首を落として行く。アルムは静かに竜の背後に回り込み頭部を粉砕して行く。10体は居た竜はもう古龍を残すのみである。
古代龍の放った数々の魔法はアルムには素手で払われ、オルフェンには剣で断ち切られる。魔法って払ったり切ったり出来るんだと知った。(多分、二人が異常です普通はできません)
ブレスも魔法攻撃を封じられた古代龍は爪や牙を振りかざしての攻撃に切り替えてみたが結果は変わらず。物理攻撃もアルムにはいなされ、オルフェンには受け止められる。
絶命するまで大して時間が掛からなかった。その巨体を地に沈めた圧勝だった。
二人の下でゲイルは修行に励む。気の練り方を教わり、闘気を纏った剣の振り方を教わった。
ゲイルも二人の教えに応えようとどんどん技を術を吸収していく。
ただ、いくらゲイルが強くなっても二人には届かない。
組み手で負かされる度に、模擬戦で負ける度に「お前さんは確実に上達しているよ、焦らなくて良いゆっくりおやり」と二人にはなだめられたものだ。
ある日の事だった南の街に天使が現れたらしい二人が何やら話をしている。
しばらくしてオルフェンが俺の所へ来た。
「免状代わりに俺の剣を鍛えた刀匠が作った逸品だくれてやる。卒業にはちっとばかし早いがな。」オルフェンから予備の一振りの刀を託された。
南の街はオルフェンの故郷だ。早々に準備を終えその日のうちにオルフェンは旅立った。
その後オルフェンは戻って来なかった風の噂によれば、天使を撃破したのち神殿へ向かったそうだ。それ以降の消息は不明である。
神殿へ向かった事を聞きアルムも行動に出た。
「私のお古ですが使って下さい。腐れ縁ですね私も神殿へ向かいますオルフェンを追う事にしました。」古びれたしかし造りの良い鉄甲を託された。
「俺も行きます。」と言いかけたがアルムが手で制す。
「地上の守り手も必要です。貴方はそれに当たって下さい。取り敢えず天使100匹倒す事。これが次の修行です。」
そう言えば100匹倒すの10年かかったな。その時間に恩師の愛情を感じた。