魔神倒れる
静かな攻撃のやり取りを表現できたら良いと考えて書きました。
アドニスの猛攻を凌ぎ勝利したゲイル。とうとう神殿の入り口まで辿り着いた。
中に入るとネイムドの大天使が舞っていた。その内の一人がゲイルの前に舞い降りる。
「我が名はミカエル。アドニス様との闘い大変見事でした。どうです。私たちの陣営に加わりませんか。貴方にはその力量があります。加わって頂ければ永遠の命を授けましょう。」
漢は天を仰ぎしばし考え込む。
「断る」そして剣に手を添える。
「そうでしょうね。そう言うと思ってました。」ミカエルは少し退きながら添える「貴方と戦うつもりはありません。ここは引かせて頂きます。もし、気が変わったら私を呼んで下さいね。」
ミカエルは神殿の奥へ消えて行く。さすがは知将、知恵の天使だけの事はある引き際を心得ている。
漢には追撃する手もいくつかあったが逃げる相手と思い使わなかった。
奥の方から強者のオーラを感じ取ったのも追撃しなかった理由かも知れない。
奥からオーラの持ち主が姿を現す。小柄な老人?の様だ。おそらくは神の一人と思われるオーラーが尋常じゃない。
ゲイルは渾身の突きを放つ。老師は杖の先で剣先を受けると軽く受け流す。
「良い技だ。キレも威力も申し分無い。ただ、ワシにはちと届かんかもしれんのう。」
ゲイルは感じた糠に釘か。猛攻が何かに吸われていく。
戦術を変更し攻撃を続ける。「練」魔法攻撃に切り替えるも、これも杖で受け流される。
天使千体を葬った攻撃であるが効かぬのだ。
ゲイルも同じ様な攻撃の捌き方をするが老人はどこかその上を行く感じだ。
「ミカエル坊の提案を受けておれば苦しまずに済んだかもしれんのう。」
老師は一歩踏みだした。杖先がゲイルをとらえる。ゲイルも杖を腕で払うがまるですり抜けた様に腕を貫き一撃はゲイルの腹に届く。ミシッと鈍い音がした。
「風穴は開かぬか。大したもんじゃ。」褒め言葉らしい。
ゲイルの両足は地につき、口元からは赤い血がスウっと流れ落ちる。表面からは見えないが内臓のいくつかが潰れたらしい。
「お主より、ちっとばかし私の方が強かった様じゃわい。」慢心の笑みを浮かべている。
ゲイルは死を予感したと同時に胸に手を当て秘呪文を唱える。
緑色の輝きがゲイルを包み集束して行く。
「転生の秘術か」と老師
光は神殿の入口へと流れていく。
神殿を抜けると光は4つに分かれ小さな村々へと散っていった。
そして新たな小さな命も4つ地上に生まれたらしい。
希望の光が。。