続き7
翌朝、三人は現地野菜や果物等がふんだんに使われた朝食を摂り、親切な村人に何の追加料金かわからない料金を請求されたが、手持ちの現金が少なかったため「お金無い」のジェスチャーをしたところ、村人は無言でルークの首についているアクセサリーを指してきた。アデルとヒデミさんがルークを見るとルークは
ルーク「マジで?これお気に入りなんだけど??」
と、言ったが、
結局それを犠牲にして何の追加料金かわからない料金を支払うと村を出た。
村人から聞いた話では、とりあえず村の先にある森を上に進むと5番目の曲がり角に着くとのことだったのでその通りに進んだ。
ルーク「あんなところに村があるなんて思わなかったよね!風呂も気持ちよかったし、足裏マッサージ、マジでバチクソ痛かったけど、今凄く調子いい!あ!なんかお姉さんたちもいつもよりお肌がつやつやしてるね!」
ルークはお気に入りのネックレスを奪われたことをすでに忘れたようだった。
アデル、ヒデミさん「えっ?ほんと?」
ルーク「ほんとほんと!」
アデルとヒデミさんはお互いの顔を見合わせると
アデル「本当だ、ヒデミさんお肌がつやつやできれいになってますよ。」
ヒデミさん「やだ~、アデルさんにもそうおっしゃっていただけるとすごく嬉しいです!アデルさんもつやつやでより一層素敵ですよ!」
アデル、ヒデミさん、ルーク「やだ~うふふ~!」
そんなことをチャラチャラと話していると目の前に広い湿原が見えてきた。
アデルは湿原に入る前に杖になるような枝を探すことにした。
アデル「お二人さん、湿原に入る前に杖を用意しましょう。湿原には滑りやすい場所や落とし穴のようになっていて一度落ちたら救出不可能な箇所があるので足元を杖でつつきながら前へ進みます。」
ルーク「へぇ・・」
ヒデミさん「さすが、アデルさん!」
そして各自1本ずつ自分たちにちょうど良い枝を持ってくるとそれを杖代わりにして地面をつつきながら進んだ。四時間ほど歩くとまた森が出てきた。森の中の上り坂をを進むこと二時間、また、石や岩のゴロゴロと目立つ山肌が出ているところへ出た。五番目の曲がり角はそこから目で見えたが位置的にはだいぶ遠い。今いるところから五番目の曲がり角に戻ると、地図の道を逆に戻る形になるのでそこへは行かずに今いるところから先に進むことにした。
1時間くらい地図通りに進むと道はどんどん下りはじめまた森の中へ入った。そこからさらに3時間ほど坂を上ると、あたり一面、白い石灰岩で覆われた場所に着いた。石灰岩の割れ目からは水蒸気が噴出していて少し硫黄のにおいが混じっていた。
このような場所では火山性ガスの危険は否めない。アデルは周りを見回した。するとあちこちに石灰岩が下に落ちたような窪みがあり、その窪みの中には湯気がうっすらと上がる白く濁った温泉があることに気が付いた。
アデル「ルーク!、温泉あったよ!」
ルーク「ホントだ!やばい!!あちこちにある!」
ヒデミさん「ちょっと待って、あそこに人らしきが倒れていませんか?」
アデルは、えっ!また?今度は誰だ?と思いながら
ルークとアデルはヒデミさんの指さすほうを見た。湯気の向こうにはっきりとは見えないが人の姿があった。
ルーク「人だ!」
3人は急いで近づいた。その全身白でラインに金色のジャージ姿の人物はあおむけに倒れていた。
倒れていたのは金髪の、間違いなく一緒にハンター認定講習を受けた若者だった。
アデル「・・この人、いっしょに試験を受けた人だ!」
ルーク「兄貴?」
ルークの顔から血の気が引いた。
ヒデミさんとアデル『えっ?お兄さん??』
特に近くでガスが出ている感じはしないがアデルは近づいて呼吸と脈を確かめた。呼吸も脈もあった。頬も少し赤みがある。ただ脈は速く体温が高い。。
アデル「大丈夫だよ、ルーク。お兄さん生きてるけど、どうしたのかな。一旦応急処置としてタオルを水で濡らして皮膚の露出しているところを全部拭いましょう。」
ルーク「何で?」
ルークは動揺して居ても立っても居られない様な感じだった。
アデル「多分湯あたりな感じもするけど、万が一微量のガスの場合も考えるとガスの成分が水に溶けやすいから一石二鳥かなと。。」
ルーク「それなら!こっちのが早い!」
アデル「え?ちょ、」
ルークはお兄さんを担ぎ上げるとそのまま一緒に一番近くの温泉にドボンした。
アデルとヒデミさん「うわ!ばかなのっ??」
そしてすぐ
ルークとお兄さん「ああっつあっあっち、ああっつい!無理無理無理無理っっ!!!」
と踊りながら出てきた。この兄弟・・・。
お兄さん「クッソマジで殺す!てめえ誰だよ!!」
と、お兄さんはルークの襟元をつかんで怒鳴った。
ルーク「兄貴・・・」
お兄さん「ルーク?」
ということで、アデルたちはお兄さんが完全に無事であることが分かった。
お兄さんはルークの掴んでいた襟元を離した。
ヒデミさん「源泉なんて大抵は熱いに決まってんじゃない、温度も確認しないで何やってるのよ??」
ルーク「だってあそこに、おじいさんが入ってたから、大丈夫って・・・。」
アデル「おじいさん?おじいさんなんかいたっけ?」
みんなでルークが指さす方、ルークたちが飛び込んだ温泉のほうを見ると、確かに向こう岸の岩陰につるんつるんのスキンヘッドで、真っ白な長い髭を生やしたおじいさんが杖を両手でついたまま半身浴をしているのが見えた。遠目で見て、乳頭がおへその近く?だいぶ下に下がっており、胸板はあばら骨で洗濯板のようになっていた。年を取って色々と下がるのは女性だけではないということをアデルは知った。
アデル「本当だ。」
ヒデミさん「おじいさん、ずっとあちらにいらしたのかしら。飛び込んだり騒いだり、温泉マナーが悪かったことをお詫びしたほうがいいですよね。」
アデル「そうですね、そうしましょう。」
そうしようとした瞬間、老人が目の前からすっと消えた。
みんな「えええ~!!!」
みんなで急いでおじいさんが入っていたところを自分たちが持ってきた木の杖でつついたり、我慢して温泉に手を突っ込んだりて探したがおじいさんはいなかった。
4人はそれぞれアイコンタクトで
「もしかして、見てはいけないものを見た?」
と送りあった。そして四人は頷くと暗黙の了解でこれ以上の詮索はしない、はじめから無かった、ということにした。世の中には人の踏み入れてはならない領域が存在していることを彼らはちゃんと知っていた。
アデル「ところでお兄さん大丈夫ですか?ここで倒れていたのでルークが助けようとしていきなり温泉に入ってしまって」
アデルが話題をお兄さんに振った。
お兄さん「助ける?なに?訳が分からない。」
お兄さんは意外そうに言った。
ルーク「兄貴がそこに死んだように倒れてたから、みんなでガス吸っちゃったのかもってなって、で、そのガスは水に溶けるから温泉で溶かそうと思った。」
お兄さん「ガス?ルーク何言っちゃってんの?俺は寝てただけだ!」
ヒデミさんとアデルとルーク『ええっ!!』
お兄さんの発言に三人は引くというか驚くというか、どちらとも取れる反応をした。
お兄さん「ここに着たら温泉があったからぬるそうなところに入ってしばらくして出て歩いたら急にふらふらしてだるくなったんで寝てたんだよ!」
ああ、単にのぼせたのね‥‥とアデルは思った。
ルーク「何でこんなところで上向いて寝てんだよ。それ絶対おかしいだろ!」
それなっ!と、アデルとヒデミさんは思った。
お兄さん「こっちだってこんなとこに誰か来るなんて思ってねえよ!」
確かに!と、アデルとヒデミさんは思った。
ルーク「兄貴、ところでさ、ぬるい温泉ってどれ?」
お兄さん「ああ、あそこの広めのやつな。あれが一番ぬるくてちょうどいい。」
ルーク「マジ?んじゃ入る。」
ルークは服をあちこちに脱ぎ散らかしながら最後は全裸でお兄さんが指した温泉にドボン!したが出来なかった。温泉はルークの足の膝下半分くらいの浅さだった。
ルーク「・・あれ?」
お兄さん「わははははは!!ルーク、赤ちゃんプールは快適だろ!お前そこでちゃぷちゃぷ泳いどけ!俺を熱湯にさらした罰だ!!」
アデルとヒデミさん『・・・・』
ルークの下を向いた後ろ姿から殺気と思われるオーラが出た。が、
ルーク「俺、スパ銭の寝湯も意外と好みなんだよね!」
と言うとルークはそこに仰向けになった。
ルーク「うわ!これマジ気持ちいいかも。」
アデル「ちょっと、ルーク!ちゃんと前隠してよっ!」
いくら白く濁っているとはいえ影が・・・
アデルは目のやり場に困っていた。
アデルの心の声が「思いっきり出ちゃってるじゃないの!ルークはいったい私たちに何を拝ませたいのだ。」と言った。
ヒデミさん「ほんと恥ずかしくないのかしら。図体ばかりでかくなりやがった子供って感じだわ。全く。」
ヒデミさんは冷たく見下すように言った。
アデルの心の声「ヒデミさん、私はとても恥ずかしいです。男の人の裸は、、、父親の汚いパンツ姿以外見たことがないのです。あんなに筋肉の引き締まったしかも整った肉体は初めて見るのです、、、あああああ、どうしよう。。」
アデルの心の声が偽りのないことを言った。
ヒデミさん「で、お兄さん、本当に入り心地がいいのはどの温泉なのかしら?」
お兄さん「え?ああ、旅館の露天風呂くらいの深さならあっちだな。」
お兄さんはルークの入っている寝湯から10メートルくらい離れた温泉を指さした。
お兄さん「あそこの近くにあるやつは大体ちょうどいい。でも一つだけすごく深い底なしっぽいのもあるから気を付けて。」
ヒデミさん「アデルさん私たちも入りませんか?」
ヒデミさんに誘われてアデルも温泉に入ることにした。二人はルークとお兄さんから見えないように木の杖で目隠しを作り入った。
アデル「はあ~。やっぱり温泉は気持ちいいですね。」
ヒデミさん「ほんとですね!」
すると
ルーク「俺も混ぜて。」
いきなりルークが入ってきた。アデルは咄嗟に目を隠した。
ヒデミさん「ちょっと、ちゃんと中心を隠してくださらない?っていうか、別のところに入りなさいよ!」
ルーク「え?もう一人の俺のこと?カッコイイでしょ?」
もう一人の俺?なにそれ?とアデルは思った。
ヒデミさん「ほら、手で隠して早くここを出なさい。」
ルーク「もう入っちゃったよ。」
アデルは隠していた手をどけた。そしたら真横にルークがいた。
アデル「近っ!」
ヒデミさん「どうせ長く浸かってられないでしょうから、10数えたらここを出て濡れたお洋服とパンツ洗ってらっしゃい。石鹸を貸して差し上げます。」
ルーク「わかった。のぼせてきたらそうする。」
そこへお兄さんもやってきた。
お兄さん「ルークお前のせいで全部服が濡れて体が冷えちまったじゃねえか。俺も入るぜ!」
ヒデミさん「ちょっと、違うとこ入ってくださらない?」
お兄さん「仲間外れは良くないね。」
お兄さんはちゃんとタオルを巻いていた。
アデル「・・・・」
ちょっと、待って、恥ずかしいのか恐ろしいのか、そんな心配より、お願いだから二人とも早くここから出ていってくんないかな~。。アデルの心は悲鳴を上げそうになっていた。
ルーク「あれ?アデルお姉さん顔真っ赤だけど大丈夫?」
お兄さん「なんだ?お姉さんのぼせたのか?」
そういうとお兄さんが立ち上がって近づいてきた。アデルは、やばっ!その親切要らないです!!と言いたかったが、
アデル「フぁ。」
と何とも間の抜けた声しか出なかった。そこへ
ヒデミさん「ちょっと!あなたたちに裸で囲まれたら普通の女子はかなり困るわ!特にアデルさんは思慮深い方なのだから困らせないでくれる?私が対処しますのであなたたちは早いことここから出てご自分たちの臭いパンツでも洗ってらっしゃい。」
と、ルークとお兄さんを追い出した。
ヒデミさん「アデルさん、大丈夫ですか?いったん上がりましょう。」
アデル「ありがとう、大丈夫です。」
さっきのはマジできつかったわ~でもヒデミさんのおかげで助かった~。とアデルはヒデミさんに感謝した。
温泉から出て着替えると、ヒデミさんが飲むための水と、顔の火照りを抑えるための濡れタオルを持ってきてくれた。
ルーク兄弟はというと
お兄さん「この大きさでよくない?」
ルーク「だね。」
と、首にタオルをかけ、パンツ一丁の姿で、小さめの温泉に汚れた服を全部入れていた。そして入れ終わるとルークが杖でグルグルかき混ぜた。
お兄さん「ルーク、石鹸入れなくていいのか?」
ルーク「あっそうだ。」
ルークはお兄さんに言われてヒデミさんから借りた石鹸をそのまま一個丸ごと投げ入れた。それを目撃したヒデミさんが
ヒデミさん「ちょっと!石鹸それしかないのよ!」と叫んだ。
お兄さんが慌てて温泉に手を突っ込んで石鹸を探したがすでに溶けてしまったようだった。
ヒデミさん「全く理解できない。」
アデルはくすっと笑った。
アデル「ヒデミさん、大丈夫。石鹸もどきなら私も作れます。」
ヒデミさん「本当ですか?アデルさんはやっぱり凄いです!でも材料とかありましたっけ?」
アデル「ここの一番熱そうなあそこの透明の温泉とはちみつに入っている蜜蝋のカスとルークが持ってきてくれたチーズとブランデーとあと彼の香水。」
ヒデミさん「ルーク、香水つけてたのですか?」
アデル「あれ?ヒデミさん気が付きませんでした?柑橘系のさわやかな香り。」
その時だ。二人をめがけて変なにおいのする水が飛んできた。
アデルとヒデミさん「くっさ!なにこれ??」
ヒデミさんが後ろを振り返ると、ルーク兄弟が洗濯物をプロペラのようにぐるぐる回して水を飛ばしていた。
ルーク「ほらね!このほうが絞るよりも簡単に水が飛んでいくぜ!」
お兄さん「いいじゃんそれ、筋トレっぽいし!俺両手でやってみっかな。」
二人は両手に洗濯物を持って勢いよくぐるぐる回し始めた。
お兄さん「こっちのが全然早いじゃん!」
ルーク「兄貴、どっちが先に服乾かせるか競争しようぜ。」
お兄さん「いいぜ!乗ってやるよ」
飛んでくる水滴の量が増えた。
ヒデミさん「ちょっといい加減にしていただけないかしら?もっと離れたところでやってください!」
と怒ったが全然聞こえていない。そのうちお兄さんの洗濯物がルークの手に当たった。カチンときたルークがお兄さんにぐるぐる回している洗濯物をぶつけた。
お兄さん「痛って!なんだよ」
ルーク「さっき俺に当てただろ!お返しだよ」
お兄さん「わざとやってねえし。」
お兄さんも仕返しする。
ルーク「痛って!兄貴わざとだろ?」
お兄さん「わざとじゃねえし。」
そしてルークがまたお返しをする。そしてお兄さんがブチ切れる。
お兄さん「ルークお前いい加減にしろよ、マジであったまきた!」
そういうとお兄さんは洗濯物を地面に投げつけてルークに近づく。ルークは洗濯物を回しながら
ルーク「やれるもんならやってみろよ!」
とけしかけた。お兄さんは素早い飛び蹴りでルークを熱々の温泉に沈めた。
ルーク「ああああああああっっつ!あっつつつ!無理無理無理無理!」
ルークが踊りながら飛び出してくるとお兄さんはその姿を見て大爆笑した。かなり本気で怒ったルークが今度はお兄さんに同じことをする。
兄弟がしょうもない喧嘩をしている間に、アデルとヒデミさんは、かけられた臭い水を落とすためもう一度温泉に入った。
そして彼らが追いかけまわしあっている間に次の野営地を探すべく出発の準備をした。




