続き6
アデルとヒデミさんとルークは洞窟を出るとその場で荒くなった呼吸を鎮めるため、ゆっくり歩いてから立ち止まった。
呼吸が落ち着いてきたところでアデルはルークに質問をした。
アデル「ルーク、ルークが行ったほうに何かあった?」
ルーク「あったっていうか、居た!」
ルークは少し興奮気味に答えた。
ルーク「リバーオーさんたちが撮影してて俺もエキストラ出演した!」
アデル「へぇ・・あの探検家の?こんなところで撮影やってたんだ。」
ヒデミさん「意外ですね!」
ルーク「そう!俺、鳥の着ぐるみを着たおじさんと戦ったんだけど、おじさんめっちゃ強かった!やられそうになったところで横から水がドカーンってきて、リバーオーさんたちそのまま流されてどっか行っちゃったけど。」
アデルはギクッとした。賠償問題が頭をよぎった。しかしこれは事故だ。故意ではない。制作会社は万が一に備えて保険に入っているはずだからきっと大丈夫!と前向きに自分に都合よく言い聞かせた。
その時、野獣豚が子供を連れて戻ってきた。
ルーク「あ、豚さんが戻ってきた。」
野獣豚は
「グフッ!グォッ!ググゥ」
と鼻を鳴らした。ルークは
ルーク「そうか、無事でよかった。」
と言った。
アデル「無事って?」
ルーク「多分だけど、豚さんが川岸にずぶ濡れの怪しいおじさんが三人居たから気をつけろって言ってる。」
アデル「ルーク、よくわかるね。」
ルーク「なんとなく」
リバーオーさんたちが無事であるということで、安心したアデルたちはまた温泉探しを再開した。
三人と二匹は森の中を進んだ。しばらく進むと森から抜けて小さな沢を見つけた。沢の周りにはたくさんの膝下くらいの大きさの草が生えていた。そして沢の中の浅いところにも水草がたくさん生えていた。沢の透明度は高く水の底まではっきり見えた。
水草の生えていない水底では,底にある小さな砂利が押し上げられては下に落ちるという動きを繰り返していた。間違いなく底から水が湧いている。沢からあふれた水は低いところから落ちるように水路を作っていた。沢の周りは広く湿地帯になっていてかなり先まで見通せた。
アデル「うーん、地形からしてここに温泉はないかな。」
ヒデミさん「もしかしたら6番目の曲がり角に行くまでの間にあるかも知れませんよ。」
アデル「そうですね。」
少し離れたところで草を分けているルークにアデルは声をかけた。
アデル「ルーク、先を目指したほうが温泉あるかも。」
そして3人は野営をした場所に一旦戻った。時刻は15:00。山の日暮れは早いので微妙な時間ではあるが、5番目の曲がり角から六番目の曲がり角を目指して出発した。1時間ほど歩くとだいぶ日が沈んできたのでそこで野営をすることにした。
ルーク「なんか背中がかゆくなってきた~温泉入りたい・・・」
ブツブツ呟くルークを尻目に、アデルとヒデミさんは野営の準備に取り掛かった。野獣豚とルークがいるので、防護柵は作らなかった。
三人が食事の準備を始めると、どこからかお香のようなにおいが漂ってきた。
ヒデミさん「アデルさん、なんか、お香のような香りがしませんか?」
アデル「そうですね・・。」
アデルは急に瞼が重くなってきた。隣でヒデミさんが座った姿勢のまま横に倒れていくのを目撃しながらアデルも意識が遠のいた。
ドンドンドンドコドンドンドンドコ・・・
次にアデルが目を覚ますとそこには激しい太鼓の音が鳴り響き、目の前で大きな焚火を囲みながらポリネシアンダンスのような踊りを踊る部族風の人達と、長い杖を持ち炎に祈りをささげているかのような部族風の人がいた。アデルが手を動かそうとしたら動かない。おかしいと思い、左隣を見たらルークが木に縛られており、右隣にはヒデミさんが木に縛られていた。もちろんアデルも木に縛り付けられていた。
アデル「なにこれ!」
アデルの声でほかの二人が目を覚ました。
ルーク「ええ?ちょっと待って・・木に縛られてる??」
ヒデミさん「どゆことですか?」
アデル「なんか、捕まったみたい?」
すると急に太鼓の音が小さくなった。そして大きな籠に大きな植物の葉を入れた子供が焚火の前にやってきた。
ポリネシアンダンスっぽい踊りをしていた人たちは踊りをやめ、祈りをささげていた人が、杖を子供に渡し代わりに大きな葉っぱを受け取ると何か歌のようなものを歌いながらアデルたちに近づき、アデルたちの顔を目掛けてその葉っぱを振った。
ルーク「うわっ!なになにやばっ!・・へんな液体がとんできた!」
アデルとヒデミさん「冷たっ!」
すると、また太鼓の音が激しく鳴り始め、暗闇から同じような葉っぱを敷き詰めた神輿のようなものに、縄で縛られて座らされた人が運ばれてきた。
ルーク「リバーオーさん!」
アデルとヒデミさん「うそ!本物?」
リバーオーさんはそのまま燃え盛る焚火の上に投げるように乗せられた。
アデル、ヒデミさん、ルーク「きゃーーーっ!!!」
そしてポリネシアンダンスっぽいのを踊っていた人たちが焚火用の薪を炎がもっと大きくなるようにどんどん乗せた。お祈りをささげていた人は歌を歌い続けたまま葉っぱで火を仰ぐ。炎は薪に移りどんどん大きくなっていく。リバーオーさん絶体絶命の危機!その時だ!めっちゃ強いヂャオス役のおじさんが助けに飛び込んできた。ヂャオスおじさんは煙球を地面にたたきつけた。煙玉は割れると煙を放出した。その煙に部族っぽい人たちが動揺している間にヂャオスおじさんはリバーオーさんと、そしてアデルたちの縄をほどき
ヂャオスおじさん「逃げましょう。ここは危ないです。」
と言って森の方へとみんなを連れて走った。全力で走って森の入り口のところまでくると、
「ハイ、カァーッット!!」
と大きな声がした。
アデル、ヒデミさん、ルーク「え?」
後ろを振り返るとキャメラマンさんが先ほどのポリネシアンダンスっぽいのを踊っていた人たちと笑顔で握手をしていた。リバーオーさんも拍手をしながらキャメラマンたちの方へ行き
リバーオーさん「ベリーグッド!サンキュー!アリガト!」
と言った。そしてお金を彼らに渡した。
アデル、ヒデミさん、ルーク「何それ?」
リバーオーさんはアデルたちの方を振り向くと
リバーオーさん「君たちもお疲れさん!今日はここに泊まっていくといいよ!エキストラ代として宿泊費払うから、この領収書に名前書いてもらえる?」
と言った。
アデルたちは意味不明なまま連れてこられた村に急遽宿泊することになった。
だが、村での宿泊はとても良かった。
お風呂とエステが付いていた。香りの強いお花が湯舟にたくさん浮かんでいて、シャンプーやオイルマッサージをしてもらえた。
アデル「最高~!!」
ヒデミさん「整う~!!」
一方ルークはお風呂のあとで足裏マッサージを受けていた。リバーオーさんたちからの愛情のこもった特別な贈り物である。
ルーク「ヴあああああああああああああ!!!痛い!」
アデルとヒデミさんとルークは就寝前にリバーオーさんたちにお礼を言いに行ったところ、彼らは既に次の冒険へ旅立ったとのことだった。
アデル「仕事に熱い方達のようですね・・・。」
ヒデミさん「‥それなんですけど、もしかしてご自身たちの宿泊費を私たちに回してくださったのかも・・。」
アデル「!!そうかも。。」
ルーク「あー、あのおじさん達ならあり得るかも。」
その頃、リバーオー探検隊は次の神秘生物、巨大アナコンダを探しにジャングルの秘境へと船を進めていた。船と言っても手漕ぎのボートである。
その後、アデルとヒデミさん、ルークの三人は村の若い女性から寝室に案内された。
寝室にはそれぞれの荷物がちゃんと置いてあった。ルークの部屋には野獣豚もいた。
その日も色々あったが恵まれた1日だった。




