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ルーレット9

 びしょ濡れになってしまった俺は、ひとまず島に上がって落ち着くことにした。


「ふぅ、マジでどうしたものか、まずこの羽の能力を探るのが先決かなぁ」


 いきなりの事態で取り乱してしまったが、よくよく考えるとこのアイテムが出現した瞬間俺はここにワープしてきたのだ。だとしたらやはりこの羽には特別な能力があるということでいいだろう。

 その羽はまさに天使の羽といって差し支えないような形状のもので、白い羽毛が滑らかな、背中にピッタリフィットしそうなアイテムだった。


「とりあえずこのアイテムの力を解明するかー。いきなり知らない場所にワープしたってことは、ランダムで対象を強制移動させるような能力ってことか? だとしたらそのトリガーって一体なんなんだろうか」


 俺は考えた。

 考えに考えた。

 途中から考えるだけでなく、羽を実際にいじくっていろいろ試してみたりもした。

 ぽんぽんと叩いてみたり、念じてみたりといった基本的なことから始まり、噛み付いてみたり、引きちぎろうとしてみたり、天使の羽らしく背中にひっつけてみたりもした。

 そして背中にひっついてしまったところで取れなくなってしまった。

 結局それ以外何も進展がなかった。


「って、これマジで取れないんだけど大丈夫なの? 空とか飛べないかなー……って思ったけどやっぱり飛べないしさ。はぁ、ひとまず能力の解明は諦めるしかないのか」


 これ以上何をしても進展がないのだったら、無駄に引きずるよりもきっぱりと諦めて他を考えた方が建設的だろう。

 そう、能力の問題を抜きにしても、現在の俺には重大な問題が発生してしまっている。


「ここからどうやって脱出するんだよ!」


 そう、俺は現在小さな小さな孤島にいる。

 あるモノとしたらヤシの木が一本立っているくらいで、あとは小さな石ころと砂利の地面が広がるのみだ。

 周囲を見渡してみても、一面青々とした大海原が広がっているといった有様で、一直線の地平線が無慈悲に始点から終点まで繋がっていた。


「くっそ、無理ゲーだろこれ! 船が通る気配すらないし、第一こんなところに人間が寄りつくのか? 救助を待つような望みある感じじゃないぞこれは」


 救助を期待するにしても、その猶予は限られているだろう。人は食べなくても一ヶ月は生き残れるというしな。いや、水がない状況だから現状はもっと短いか。自分のしょんべんを飲むという禁断の行為を発動してなりふり構わず生き残ろうとしても、おそらく一週間が限度といったところか……


「ぐぅぅ、魔法の箒さえあれば空を飛んで近辺を探索できたかもしれないのに! いや、その箒に代わってこのアイテムが出てきたんだからその仮定は成立しないか。くっそ、本当に考えろ……! この状況を打破する方法を……!」


 そして俺は頭を悩ませ続けた。

 しかし……


「思い、つかない……」


 俺は力なく地面に腰をつく。

 もう終わった。何をどう考えても絶望的な状況だ。俺はもう諦めてここで餓死するしかないのか……


 そう思い俺が絶望した時だった。


「…………ん?」


 ふと、すぐ目の前の海水の中に、何かの影が見えた。

 一瞬気のせいかとも思ったが、どうやらそうではないらしい。


 しばらく様子を見てみると、そこからゆっくりと何かが這い上がってきた。


「亀……?」


 そう、それは亀だった。

 緑の甲羅を背負った、一メートルくらいの大きさのなんの変哲もない亀である。

 しかしその目だけは結構な大きさがあり、かわいらしい雰囲気を漂わせていた。


 俺が警戒するのも忘れ、ただただ呆然としていると、その亀は


「えっと、いきなりなんかすみません」


 唐突に謝ってきた。

 ……はい? なに、何が起こってるんだこれは。

 亀が……喋っただと?


「ごめん、状況がよく分かんないんだけど……もしかして、餓死しそうな俺の食料になりに来てくれたの?」

「そんな自殺願望はございません! いえ、その、驚かせてしまうのも無理はないかと思うところなのですが……実はとある所用を命じられまして……」


 何が何やらといった感じだが、とにかくこの亀は喋ることができ、その知能も人間に劣らないものがあるということは分かった。むしろその丁寧な物腰からは、しっかりとした教育を受けてきた存在であるということがうかがえるだろう。


「うーんと、わざわざこんな島に来たってことは、俺にピンポイントで用があるってことでいいよな?」

「はい、そうですね」

「でも俺たち初対面だよね? どうして俺なんかに会いに来たの? 君は何者なのか、どうやって俺の位置を特定したのかも含めて説明していただければいいなと」

「はい、その辺もろもろはゆっくりと説明させていただきます。ですがその件の説明については移動しながらということでも構いませんか?」

「ん? 別にいいけど……移動ってどうするの?」

「えーっと、とりあえず私の背中に乗って貰えますか?」

「こう?」


 俺は深く考えずに亀の背中に跨がった。

 周りから見ればずいぶんと滑稽な姿に映るだろう。


「じゃあ出発します」


 そうして亀はゆっくりと海の中に踏み出し始めた。

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