ルーレット7
「うーん、とりあえず悪魔は退治してしまったけどこれからどうしようかな」
俺は悩んだ。
ひとまず悪魔らしき生物を倒すことはできたが、あまり手応えがなかったのもあって特に何をした気も起こらない。あれが本当に元凶だったのかどうか不安になってくるレベルだ。何を言ってるのかもよく分かんなかったし。そんなことに比べればこの異世界雑誌を読んでる方がまだマシだ。料理についての内容で意外と興味そそられるし、家で一人にいるときとか親が料理作ってくれる代わりに料理したりするしな。
「本当にどうしようか」
この街を救う、というのも一つの手かもしれないと俺は考える。
この魔法の箒の力を使えば、ベクトル操作で街に広がっている火の手を消すことができるかもしれない。火の勢いを上に飛ばすとかすれば、きっとそれは可能だろう。試しに近くで燃えていた飛散した家具と思われる物体の炎を飛ばしてみた。火だけが綺麗に上方へと抜けていき、そこには炭だらけになった家具だけが残った。やはりこういう芸当は可能なようだ。
「いけそうだが……でもどんだけ時間が掛かるかわかんないぞこれ」
魔法の箒の能力であるベクトル操作は最強だ。どんな強力な力を持っている奴でも力の向きを変えてやればまず当たることはないし、現在常にこちらに飛んでくる怪しいものを退けるという特殊バリアを張っているので不意打ちの攻撃を食らうことはない。厳密に言えば能力の設定を変えて範囲内の俺に危害が加わりそうな攻撃を自動で排除するようにしているのだ。その危害が加わりそうな攻撃というのがどういう類のものか俺自身もよく分かっていないが、その辺の判断は魔法の箒に全て一任している。俺の見立ててではそれなりのAIがこの箒にはあると俺は思っている。実際有能だし、大丈夫なのではないだろうか。
「しかも今さら人々を救ったところで手遅れくさいし」
そうだな、よし、ならば暇だしなんとか逃げられてた人達を狩って遊ぶか。街の周りにいけば、また最初の人達みたいに避難してきたやつらがいるだろう
よし、そうとなればまず門を探さないとな。恐らくその近くに集まって途方にくれているだろうし。
そう思い、俺が動き出そうとしたときだった。
「おい! そこのお前止まれ!」
突如強気な声がかかった。
見てみると、鎧を着込んだ金髪の女が、指をこちらに突きつけてきていた。
その後ろにも同じ鎧をきた男女が武器を抜いてこちらを睨んできている。
なんだろうか。
「なんですか?」
「こんなところで何をしている? 避難はしないのか? なんでこんな状況にもかかわらずそんなに落ち着いているのだ?」
金髪で碧眼の女はそう俺に尋ねてきた。
どうやら俺を疑っているようだ。
だが残念、この街を燃やした犯人は俺なんかじゃない。
俺がやってきたことといえば、避難した人間を狩ってきたことだけだ。
「もしかして俺を疑ってるんですか? 俺は何もしてないですよ。残念なことにね」
「本当か? 実はやってたりするんじゃないのか?」
「何を根拠にそんなことを言っているのか。断言するが、お前には絶対なにかがある」
「なんでそんなことあなたが決めるんですか? 証拠でも出してみてくださいよ」
「それは私の勘だ。私はこう見えて鼻がきくからな」
「そんな勘嘘でしょ。じゃあ具体的に俺が何をやったというんですか?」
「それはよく分からん、だがとりあえず捕まえて、後でやってきたことを白状させて貰おう。うちにはそういう拷問の類のプロがいるからな」
「まったくもってよくわかりません。一ミリもわかりません。そんなことなら僕は圧倒的に拒否をさせていただきます」
「拒否など許すものか、そんなことを言うのであれば、こちらも暴力的手段に訴えるしかなくなるな」
「そんな、やめてくださいよ。僕は何もやってないじゃないですか。ていうかあなたたちはそもそも誰なんですか? その辺も明かしてないのに捕まえるとかなんとか適当なこと言って、最低の人種ですね」
「そんなことを言われてもな、まだ自己紹介をする機会がなかったからな。じゃあここで名乗るが、我々はこの街を守る衛兵だ。人々の避難活動を行っていたところ、怪しい動きをしているお前を発見したというわけだ。さあ、じゃあお前が何をしたのか洗いざらい話して貰おうか」
「だから何を言ってるんですか。よく分からないんで、本当に。しかもなんで俺なんですか、理由がないと納得できません。あと避難活動を行っていたというのなら、俺なんかに構っている暇はないと思うんだが。大丈夫なのか? あんたたちの救いの手を待っている人達ももしかしたらいるかもしれないんだぞ」
「それは優先順位があるからな。たかが数人の命よりも今回の首謀者を退治した方が結果的に多くの人々を救えるだろう? だからこの行為は我々にとって至極全うであり、だからこそお前を退治しなければならないのだ」
「意味がわかんないでーす。証拠をだしてください」
「仕方ないな。それではその身に直接聞くしかないだろう」
「うそだろ、やるきかよ」
そういうことになってしまった。




