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ルーレット5

 ベクトルを変化せられるということは、その値をゼロにしてその場にとどめておくことも可能だということ。


「じゃあね」


 そして大量の吹雪を思いっきり、少女にぶつけた。

 もろに食らった少女は錐揉みしながら吹雪の渦にとらわれる。体が銃弾の雨にさらされる人形のように暴れていた。

 そして吹雪を解除したときには、その場に力なくドサリと倒れていた。

 普通に考えて息はしていないだろう。


「ま、こんなもんかな」


 しかし流石の強さだ。

 箒自体が宙に浮くことならまだ理解できるが、それでどうして俺が振り落とされないのかが少し疑問だった。普通なら安定しない座面にバランスを崩すこと必至だが、まさか俺自身のベクトルを操作してコントロールしてくれていたとは。


「すごい優れものだな。これがたかがルーレットで当たったアイテムのうちの一つだと考えるとおそろしいな、俺の能力」


 さてこれからどうするかと俺は周囲を見渡す。

 気付けば周囲の人々が俺から逃げ出していた。

 うーん、逃げているものを見るとつい追いかけたくなるのが動物の定めだよな。


「食らえ!」


 俺は未だ宙に滞在していた吹雪をかき集め、逃げ惑う人々へと差し向ける。

 やはりというべきか吹雪の威力自体は最初よりも下がってしまっているが、それでも人間を苦しめるには十分なほどの力は残っているようだった。流石は魔法で生み出された雪といったところか。


 再び放たれた吹雪は、人々のことごとくを蹂躙していった。

 致死させるにはおそらく十秒近い時間が必要で、それが面倒くさかったので吹雪を竜巻状に展開して、人々を宙に投げ飛ばすことで死なせることにした。数十メートルから落下したのでは、流石に生き延びるのは厳しいだろう。

 しかしながら、中にはそれなりの強者がいたらしく、俺の方に向かって突進してくるような男も数人いた。

 ただ所詮は俗物の一人に過ぎず、男ら単体のベクトルを変化させて宙に舞わせたあと勢いよく地面にたたきつけた。

 頭の方から突っ込むように操作したので、首が思いっきりへし折れて本来合ってはならない方向に曲がってしまっていた。目をひんむいた表情や首の骨のゴリゴリ感がちょっとグロかったのでやった後に後悔した。


 そうしてあっという間にこの広場の掃除が完成した。

 立っている者はこの場におらず、全員が地に伏してぐったりとしていた。

 多少無残な死に様をさらしている者もいたが、出血の類は比較的少なかったため綺麗に片付いたという印象だ。


「ふぅ、我ながらよく分かんない展開に持ち込んでしまったな。ここは普通俺が正義の味方として街に乗り込んで、悪魔とかいう悪の元凶をぶっ倒して街のヒーローになるというおいしい展開が待っていただろうにな。ヒロインっぽい子もしゃしゃり出てきたし、絶対そっちの路線の方が異世界転生的には正解だったんだろうけど、どうだこの有様は。それらを一切無視して全部ぶち壊してやったぜ。ワイルドだろぉ?」


 王道に反し好き勝手やってかなりすっきりとした気分になっていた俺だったが、さて、これからどうしたものか。


「まぁ暇だし街の方にでも行ってみるか。この力なら大抵のやつには負けないだろうし」


 俺にはかなりの自信があった。

 この魔法の杖の効果は先にも言ったとおり、周囲のものに加わるベクトルの向きを自由に変化させられるというもの。その変化の裁量は、俺の意思で操ることができる。

 いわゆるマニュアル操作を現時点ではしているわけだが、しかしながらこれを完全なるオートモードにすることができることにも気付いていた。

 つまりこれがどういう効果を発揮するかといえば、俺の周囲にとんできた物のベクトルを、俺の意思とは関係なしに自動的に変化させることができる。このときベクトルの操作を反転させるように設定しておけば、飛来物は絶対に俺に当たることはない。全てが俺に向かってくる方向とは逆の方向に反射されるというわけだ。


「つまりほぼ無敵というわけだな。まぁもしかするとベクトルが不規則に変化するような飛来物なんかもあるかもしれないけど、それも設定でどうにかなる範疇だろう」


 というわけで早速街へと繰り出してみることにした。

 魔法の箒に跨がり、街の上空へと向けて舞い上がる。

 立ちこめてきている灰の煙も、ベクトルを操作することで俺に近寄らないようにすることができるため、それによる障害は一切無い。しいていうなら視界が妨げられることが些かもどかしかったが、煙の少ないところを選べば十分に眼下を俯瞰することができた。


「うーん、これは終わってるな」


 街の様子は思った通りの地獄だった。

 全ての建築物が赤々と燃え上がり、無事な建物など存在しないのではないかというほどの有様。


「これはもう救いようがないな……まぁ元々助ける気なんてそこまでなかったんだけど。でもあれか、人間はほぼ全滅だけどこれをしでかした加害者張本人は未だどっかにいる可能性が高いよな?」


 そう思った俺は、街の上空を横切って、上からそのご本人を探してみることにした。

 

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