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ルーレット4

「悪魔ってどういうこと?」


 俺は突如割って入ってきた少女に問いかける。

 少女はピンク色の髪をした強気な雰囲気の漂う人物だった。

 年の頃は十五歳くらいだろうか。俺と同じか少ししたくらいに見える。


「はぁ、こんな状況で言っても仕方ないことだけどね。要するに魔族のこと。あの街は終わりよ」


 少女はため息交じりに答えてくれた。


「はうぁああああ!」


「うるせええ!」


 俺はとなりでなお声を荒らげているばあさんの頭を殴って黙らせた。

 本当に年寄りはこれだから……もう将来絶対老人の世話はしてやらないぞ。


「何やってんの!? あんたもしかして頭が……」

「ん? 俺はうるさいと思ったから殴っただけだぞ? 君だって横で老害がうるさく叫んでたら嫌だろ?」

「だ、だからって殴ることないでしょ!? アンタ頭おかしい! 絶対!」

「そんなに俺をバカにした言葉投げかけないでくれよ。傷つくだろ。うっかり君を殺したくなってくるじゃないか」

「な、なにを言ってるの……?」


 そう言って少女は俺から一歩、二歩と距離をとった。

 まぁそうなるのもうなずける。


 面白くなったので、俺はにぃっと意味ありげに笑ってみせてから、少女の方に堂々と向き直った。

 それに対し少女は次の瞬間、懐に差してあった杖を取りだし勢いよく俺のほうに構えてきた。


「なによ……あんた何がしたいの?」

「いや、別にどうもこうもないけど。その杖はなに? 俺と戦おうとしてるの? どうして? 俺は悪でも何でも無いのに。それこそこんな状況でそんなことしてていいの?」

「あんた何者? ……もういい、早くこの場から去って。こんなところでバカやってる場合じゃない」


 その姿を見て俺はますます面白くなってきた。

 近くの街で災害が起きているというこんな絶望的な状況にもかかわらず、横からよく分からない奴が現れてちゃちゃを入れる。これってシナリオをぶち壊してる感じがしてめちゃくちゃ面白くないか? よし、もうちょっとやっちゃおう。


「いいや、去るわけにはいかないな。そんな敵意を向けられた以上俺も引くわけにはいかない。売られた喧嘩は買うタイプなんでね」

「……じゃあどうするって言うの?」

「それりゃぁ、まあ戦うしかないんじゃね?」


 そして俺は魔法の箒を目の前に浮かせた。

 相手に戦う意思を見せるためだ。


 気付けば周囲の注目が俺たちへと向いていて、ちょっとした喧噪ができつつあった。


「いいのね? こうなっては私、容赦とかしないけど」

「どうぞ、お構いなく。言っとくけどそっちから仕掛けてきたんだから、どんな目に遭っても文句言わないでね」


 すると次の瞬間少女が杖をさっと俺の方に向けてきた。

 腰だめに力強く杖を構えており、表情は真剣そのものだ。


「後悔しないでよ。私だってそうお人好しじゃないの、戦いとなれば、それなりにね」


 その言葉とともに少女の杖の先端が青く光りだした。

 何をするつもりなのだろう? まるで検討がつかない。


「よく分からないけど、悪いわね。『アークブリザートプリズン』――!!」


 そして少女が何やら唱えたかと思うと、突如その杖から勢いよく大量の吹雪が吹き出した。

 その吹雪は瞬く間に俺を捉え、トルネードのように俺の周囲に渦巻く。

 周囲の温度が急激にさがり、前後不覚に陥る。

 なるほど、魔法かと俺は察した。


「悪党はゆるさないタイプだから。ごめんなさいね」


 少女のそんな吐き捨てた言葉が聞こえてくる。

 なるほど、どうやら相当の使い手のようだ。

 まさか異世界での初戦闘が魔法使いの少女とだなんてな。異世界なにがあるか分からないものだ。


 ――だが、甘い。


 俺を完全に取り込もうとする吹雪の包囲網。

 しかしそれが完成する前に、その吹雪は勢いよく弾け、俺の周囲に霧散した。

 俺は無傷でその場に立っていた。


「な、なに!?」


 少女は完全に面食らっている様子だ。

 まぁかなり自信ありげだったし、そうなるのも無理はないのかもしれないが。


「うん、なかなか良い攻撃だったかな」

「何をしたの……!!」

「うーん、まぁこれを使っただけだよ」


 そう言って俺は目の前に浮かんでいる魔法の箒を指し示す。


「コイツの力はただ宙に浮くだけじゃないんだ。これの力は厳密に言えば『ベクトル操作』。周囲にある様々な物質のベクトルの向きを自由に変化させることができるってもんだな」

「べくとる……? 何をいってるの……」

「ああ、そうか、この世界の住民に言ってもわかんなかったか。とにかくこの箒の力で俺に向かってくるはずの吹雪の向きを変えて、逆方向に押し出したって感じかな。まぁなかなか良い攻撃だったよ。この箒がなければ俺は完全にやられていただろうし」


 その言葉を聞くや否や、少女は悔しそうに歯がみした。

 しかしそれも一瞬。次の瞬間には、再び杖を俺の方に構えていた。


「またやる気? うーん、今より強い魔法だと助かるんだけど、また受けるってのも面倒くさいしな。もう終わりでいいかな」


 そう言って俺は頭上に待機させていた『吹雪』を少女の方へと差し向けた。


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