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ルーレット22

 おいマジかよなんでまた景色が変わっちまうんだよ。

 もう俺はなにかした方がいいのか? いや、でもこれはもう目の前の塔に登ってみるしかないんじゃないか? それしか絶対にない気がする。


「目の前に塔があって登らないなんて絶対にありえない! 俺の能力があればきっとこの塔だって攻略できるはずだ!」


 俺は意気揚々と塔に向かって歩き出した。普通に考えれば地表、一階部分に出入り口のようなものがあるだろう。


「うん?」


 そう思い歩き始めたのだが、まもなくもしないうちに目の前から一人のおじさんが歩いてきていた。塔から出てきた感じだった。


「少年よ……この塔に挑戦するというのか?」


 おじさんは重々しい雰囲気を携えながら、そんな風に尋ねてきた。え、マジでだれだ? なんか結構普通のおじさんというか、服装もこの世界によくある一般的な私服みたいだし、特に武器や変わった装いをしているというわけでもない。これはまったくよくわからないぞ。


「あの、おじさんは誰ですか? 時と場合によっては、僕はあなたを攻撃しなくてはならないかもしれません」


「……私はこの塔の護り人だ。この塔には何人たりとも通すわけにはいかない。当然お主もここで退治させてもらう」


 え、なんて言った今、護り人だって? 何を言ってるんだ、普通の人にしか見えないぞ。もしかして人間の皮をかぶった化け物とでもいうのだろうか。いやいや、そんなわけないよな。


「冗談はやめてくださいよ。なんで歳食ったおじさんがそんなことしなくちゃならないんですか。もしかしておじさんは人間ではないというんですか?」


「無論この塔には人間では歯も立たないような魔物がうじゃうじゃと生息しておる。この塔は神が作りし塔だ。そもそも人間が挑むということすらが間違っているのだ」


「おじさんはこの塔の一員とでもいうんですか?」


「私は本来は無関係のものだ」


「だったらなぜ僕の進行を阻止しようというのです? 関係ないというのであれば、僕がその塔に挑もうが何をしようが問題ないじゃないですか」


「……私もかつてはこの塔に挑戦しようとした身だ」


「……え?」


「そう、大切な仲間とともにな。そして私はすべてを失った。仲間の中には将来的な婚約を交わした者もいた。私は未来のすべてを奪われたのだ……だからこそ私はこの塔を護らなければならない。愚鈍な人間が、これ以上この塔の生贄にならないように、私はこの生命が尽きるまで、この塔から人間を護ると決めたのだ」


 次の瞬間、おじさんからまばゆい黄色い光がほとばしった。

 いや光というより、覇気と言った方がしっくりくるかもしれない。

 その覇気は周囲の草木、岩、空気、すべてのものを包み込み、撫でるかのような、まるで意志を持っている生き物であるかのように感じられた。

 気づけばおじさんは一本のロングソードを握っていて、その剣はおじさんに比べより一層光輝き、黄金の輝きを放っていた。


「お、おじさんは、一体、何者……」


「すまないが、ここから先は通すわけにはいかない。お前は私の手で殺させてもらう」


 ……お、おいおいおいおいおい。な、なんでこんなことになっちまってるんだ? 

 こんな風になるなんて誰が分かるんだよ。

 俺はただ塔に挑戦したかっただけなのに……

 ていうかこのおじさんヤバいな。もうどうにもならなそうな感じだ。昔仲間をやられてしまったのか知らないが、もう完全に闇落ちしてしまっている。いくらこの塔が危険なことを知っていて、これ以上誰も犠牲を出したくないと思っていたとしても、挑戦しようとするものを殺そうとしてくるなんてもはや人間がやることではない。完全にダークサイド、魔物がやることそのものだ。


「やるしかないのか……?」


 俺は考える。こうなってしまったのもなにかの運命なのではないかと。

 この闇落ちしてしまった悲しきおじさん、いや化け物を、正しく供養してやれるのはもう俺しかいないんじゃないか? おじさんは本来俺とは無関係なのかもしれない。しかしこの塔にここまで縛られてしまっているというのは、あまりに悲しすぎる。分かった、もうこれは俺の出番ということだね。もう僕が正義の味方になって、おじさんを逆に葬り、救ってみせる。

 もうおじさんは死んでるも同然だ。俺がおじさんを殺すことで、逆におじさんを救うことに繋がる。


「おじさん……ごめんね。僕もおじさんを殺す理由が見つかったみたいだ」


 俺はおじさんと同じように気迫を全身にまとわせる。

 できる。俺、いや僕なら勇者となり、おじさんを葬り去ることができる。

 待っててね、すぐにその苦しみから僕が救い出してみせるよ。


「少年、恨むなよ」


 おじさんはそれだけ呟くと、問答無用で斬りかかってきた。

 いや、斬りかかるモーションが一瞬見えただけだ。

 俺の視界に映ったのはその一瞬が限界で、感覚としてはおじさんがその場から消えたように見えた。

 え、ちょっとま、どこ行った……


「お粗末」


 気づけばおじさんの剣は俺の首を捉えようとしていた。

 あ、終わった……





 シュン。




 俺の視界はかき消えて、大自然の崖の上にいた。

 うわーんまたかよおおおおおおおおおおおおーーん!! うわーん!




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