ルーレット2
「これが僕の能力、ですか?」
『そうじゃ。その能力はアイテムルーレッター。ルーレット回すことで、出た目に書かれているアイテムを手に入れられるという能力じゃ』
「へー、でもそれは強いんですか?」
『当たり前じゃ、何もないところから物質を生み出せるのじゃからな、それだけでも人の業を超越しておる。それプラスで出た目にもよるがアイテムは一律に超強力なものになっておるからそれはもうとんでもない能力なのじゃ』
神様が熱心に教えてくれる。
そこまで凄い能力なのか。でもいまいちピンとこないな。こればっかりは使ってみないことには分からないのかな?
「なるほど、でも一体どんなアイテムが?」
『それは使ってみてのお楽しみというところじゃな。まぁ安心せい、お主は転生する世界においては地球人の中でも最高レベルのポテンシャルを秘めておる。当面困り果てるということはないじゃろう』
「そうですか」
『それじゃあ儂からの説明はこれぐらいにしておこうかの。それでは検討を祈ってるぞ』
そうしてぷつりと電話は切れてしまった。
なんかとんでもないことになっちゃったな。
「女神さま、これ返します」
「ああ、ありがとうございます」
そして女神さまにスマホを返却する。
その際に、ホーム画面に可愛い猫ちゃんの壁紙が貼られていたのは見てみなかった振りをした。
「まさか天界神様の声を拝聴することができるとは……」
「あのー、転生の方はしないんですか?」
「あ、はい、それは勿論。それよりも天界神様に一体どんな話を……いえ、申し訳ありません。やはり聞かないことにいたしましょう。これははわざわざ首を突っ込むような件ではありませんね。天界神様があなただけに声をお聞かせになられたというのは何かそれ相応の理由があるはずですから」
そこまで言って仕切り直すように息を整えた女神さまが、改めて俺に向き直ってくる。
「それではこれより転生を行います。覚悟はいいですか?」
「……はい、おねがいします」
そうして俺は転生することになった。
邪の存在を倒す……さながら勇者のような役割をしなければならないようだ。
果たして俺にそんな役が務まるのか。
不安はつきないが、俺はこの能力を信じるほかに道はないのだ。
俺は改めて決心を固めながら、徐々に意識を失っていった。
気付けば、俺は森の中にいた。
「転生、したんだよな……?」
青々とした木々が生い茂り、周囲はまるごと自然に囲まれているというにも関わらず、そこに不気味さは皆無でどこか清涼感のようなものすら感じられた。あまり深くない森……なのだろうか。だとしたらありがたいが、それにしてもいきなりこんな森の中に転生させるというのは、何か考えがあってのことなのだろうか。
「さて、どうしたものか……」
とはいえいつまでもこうして立っているわけにもいかない。
何か行動を起こさなければ始まるものも始まらないだろう。しかし今の俺にとれる手段はがむしゃらに歩き回るという以外には――
「あっ、そうだ、能力があるじゃないか!」
こういう時のためお能力なのかもしれない。
不安はあるが、使ってみる価値はあるだろう。
俺は早速ルーレットを目の前に出現させてみた。
ルーレットの円盤には中心から幾本もの線が外周に向かって伸びており、それによってできる区切りをカラフルに色分けしている。そしてその区切りの中にアイテム名なのだろうか、文字自体は読めるがよく分からない名前が一つずつ並んでいた。
「うーん、出したのはいいけど、こっからどうすれば……スタートとか言えば良いのか?」
すると俺の声に呼応したのか、ルーレットが徐々に回転を始め、すぐに勢いよく回転を始めた。うお、これで能力が発動したということなのか?
その後ルーレットはたっぷり十数秒回転した後、とあるところでピタリととまる。
そしてルーレットの頭にある一本の針が指している部分のパネルが、ピコピコと点滅し始めた。
このアイテムが当たったということだろう。
「えっと、何々……魔法の箒?」
やがてそのパネルは勢いよく光を帯びたかと思うと、目もくらむような閃光を放ち始める。
しかしそれも一瞬で、次に目を開けた時にはそこに一本の箒がぷかぷか浮かんでいた。
直後、背後のルーレットがぽんとポップな音を立てかき消えた。
役目を果たしたということだろう。
「えっと、これがそのアイテムってことだよな?」
竹と藁で作られた、貧相にもほどがある一本の箒。
どう見てもその辺にある安そうな代物だ。
「これが超強力なアイテムってことか? 普通の箒にしか見えないけど……いや、でも宙に浮いてるって事は何かしらの異能が働いてるってことだよな。どうやって使うんだろう……」
俺が悩みながら、ひとまず箒をつかもうと手を伸ばした時だった。
「うおっ! うおおおおお!」
突如箒が高速で動きだし、俺の背後に回ったかと思うと、そのまま股に自分から挟まってきた。
瞬間、大事な部分を強打する。
「あおっち!!!!」
俺は白目をむいてよだれをぶちまけた。
痛いというか感覚が吹き飛んだ。
逆にこれが快感まである。
すごい、色んな意味で凄い!
そうして箒はその状態の俺を乗せたまま、上空へと舞い上がった。
なるほど、どうやら俺を運んでくれるらしい。
だが下半身の快感に浸っている俺はそんなことどうでもよかった。
俺はこの日からMになった。




