ルーレット19
俺は広大な草原の上に立っていた。
えー! なにこの状況! 謎すぎるだろ! 勘弁してくれよ!
「はぁ、そういうあれか。ちょっとここは一休みしようかな」
なんかいろいろあって疲れてしまった。
まずは一旦寝てしまおう。そうすることで、もしかするとこの後起きたら何かが変わっているかもしれない。この状況もワンチャン切り替わっているかもしれないからな。
そう思った俺はぐっすり寝ることにした。
ぐぅぐぅと寝息をたてて、俺は眠りについた。
そして目が覚めると思いっきり夜になっていた。
「おおおい! 全然かわっとらんやないかい!」
最悪だ。絶対良い感じに変わっているかと思ったのに、こりゃちょっとないな。
「よし! こうなったら突っ走ろう! 何かが変わるかもしれない!」
俺は見渡す限り地平線が広がる草原を駆け回ることにした。
「どりゃああああああ!」
俺は全力で駆け回った。
できるだけ一直線に走る。
逆にそうしないとただのバカだ。そのばを走り回っていたところで、何かが変わっている可能性なんて低いどころの話ではない。
だが駆け回ること、五分。
俺は普通に息切れを起こした。
「ぜぇ。ぜぇ。おい、なんなんだよ! 全然何もないんだが!」
景色はまるで変わっていなかった。
本当に移動したのかと、自分を疑いたくなるかのような変わり映えのなさだった。
「ていうかこれって結構やばくね? 食料とかどうすんの? 俺はそのまま飢え死にしちゃんじゃないの?」
俺は最大のピンチに気付いてしまった。
おおおおい! マジでどうすんだよ! これ本当に死ぬしかないんじゃないのか!?
「いや! 俺は絶対に諦めない!」
俺はひとまず今まで目指していた方向へと歩き始めた。
絶望的な広さの草原ではあるが、無限ということはまずありえない。
どれだけ掛かるは分からないが、絶対にゴールはあるはずなのだ。
俺は諦められずに、草原の終わりを目指した。
二ヶ月後。
俺はいまだ草原を抜け出せずにいた。
「はぁ、絶対俺強くなったよな」
精神的に強くなったという自信が俺にはある。
ゴールを目指し始めてしばらく後、当然のように俺は食糧問題にぶち当たった。
このまま飢え死にしていってしまうのではないか。
ワンチャン自分の皮膚や排泄ぶつを食べて、それを再び出してまたそれを食べるの地獄ループを繰り返さないといけないのかと不安になったが、そんなことをする必要はなかった。
ここは草原だ。
つまり草はわんさかある。
それを喰らうことで、俺はここまでなんとか生き延びることができていた。
草がどの程度の栄養があるのかはよく分からないが、とりあえず消化はよくした方がいいだろうということで、すりつぶした上で胃に流しこんだ。ちなみにすりつぶす際はその辺に石が転がっていたのでそれを利用した。
そう、草原と言っても当然それは自然の中にあるものなので、草以外にも石だったり、昆虫だったり、よく分からない花だったりはそこかしこに存在していた。まぁ微生物とかがいないとうまく循環しないだろうから虫がいるのは当然かもしれないけどな。だから食料に関しても、バッタなりイナゴなり、甲殻類の虫を食べることができた。レパートリーがあるのは個人的にもめちゃくちゃありがたかった。
あとは水の問題だが、それはたまに降ってくる雨によって解消できた。
ずっと快晴というわけではなく普通に雲がかかっていたりもして、一週間に一度ほど普通に雨が降った。当然そんな頻度だから雨が降るのを数日ただ待っているのではとてもじゃないが身がもたない。だから俺は草を利用し水を漏らさない籠を編んだ。それをいくつも作り、雨を蓄えておくことで水分の問題を解決したのだ。最初の方は編むのにかなり苦労したが、そこはやることのない身、ありあまる時間を駆使しみるみる間に上達していき、今では完全なるテクニシャンになっていた。正直結構自信はある。もはやこの世界に俺以上に草編みができるやつなんていないんじゃないだろうか? そのぐらい極めた感触はあった。そして極めすぎて、今は簡易的な家を作っている途中だ。やっぱり周りが囲まれているかそうじゃないかで結構安らぎ度合いが違うし、作れるものなら作った方がいいと思ったのだ。
そしてそれはなかなかにうまくいきつつあった。
さらにはイスやテーブルなんかも作ってみたりした。
草をめちゃくちゃ束ねないといけないので結構大変だったが、思ったよりもうまくいった。なにか念じただけで草が自動的に動いて俺のイメージをトレースしてくれるような、そんな感覚。俺はまるで草と一体になったような気持ちになっていた。もうホント草って最高だ。食べれるし、工作できるし、無料で大量に採集できるし、ホントこれ以上に優秀な素材ってないんじゃないだろうか。俺はもう草が大好きでたまらなくなっていた。
「もうここに住もうかな」
もはやそのレベルだった。
一生を草に囲まれて過ごせるというのであれば、ここに骨を埋めるのも悪くないのかもしれない。
俺は本気でそんなことを思っていて、ここしばらくは場所の移動をほとんどしていなかった。
ありがとう草。俺はやっぱり草と一緒にここで一生を過ごすよ。




