ルーレット16
アイドルの少女をぶっ殺してしまった俺は、手が思いっきり汚れてしまっていた。
「うっわ、だるすぎる。マジでどうしてくれんだよ。もう死にたい。この子のように」
俺は苛ついてしまって、その鬱憤を晴らすために少女を足蹴にした。
何度も何度も蹴りまくった。もう原型がとどまらないってくらいに蹴ってけって蹴りまくる。やがて俺の足が痛くなった。
「クソが! こいつは死んでまで俺に刃向かってくるのかよ! このクソ女! きめぇな死ね! 死ね死ね死ね!」
ダメだった。
俺は己の中からあふれ出てくる激情を、収めることができなかった。
どうしよう、このままじゃ本当にどうにかなってしまう。
俺はこのまま壊れてしまうかもしれない。ああ! 早くこの思いをどうにかしないと! くっそ! どうしたものか!
「ぐがあああああああああ!!」
すると、突如として俺の背後の地面が盛り上がった。
そこからは、なんとストームドラゴンができきた。
「ふっ、丁度良いぜ。俺の憂さ晴らしになってくれるっていうんだからな!」
俺はストームドラゴンに向かって走った。
だが攻撃をするべく蹴りを加えようとしたが、俺の足が当たる瞬間に、俺の景色はかき消えた。
「うわーん! またかよーん!」
俺は発狂した。
丁度良いところでこの能力が発動しやがる。
ウンコかよ、マジでこの能力、全然使えねえな。全然俺の言う通りにならないし、もうこんな能力いらねえよ! くそ! くそ!
「おい、お主! また戻ってきおったか」
するとそこは前に訪れた村だった。
あれだな、殺されそうになって街に転移したときの村だな。
あ、丁度いいや! まあいいよもうこいつらでいいだろ!
よし! 俺の憂さ晴らしになってくれよ!
「でああああああ!」
俺は今度こそ渾身のパンチを食らわせようとしたが、俺のパンチが相手にあたろうとした瞬間、俺の景色はかき消えた。
「うわーん! またかよーん!」
最悪だよ! またこれかよ! で、今回はどこなんだ? マジでどこなんだ?
周囲を見てみると、俺は中庭のような場所にいた。
なんだ? めちゃくちゃ綺麗に整えられてて、すごく雰囲気が出てる場所だぞ?
しかもうお! なんじゃこりゃ! めちゃくちゃデカい城が建ってるんですけど!
え、てことはこれはあれか? もしかしてお城の庭に転移してしまったパターンか?
だとしたらこれはマズいんじゃないか? 普通に捕らえられてしまうかもしれない。
いや、でも待てよ?
逆にここで暴れたりしたら、間違いなく兵士達が近づいてくるよな? そこを返り討ちにしたら、めちゃくちゃストレス発散になるんじゃないか!? うん、すごい良い考えだ!
「あら、どなたかおいでになったのですか?」
俺がそう考えたところで、傍から声がかかった。
そこには小綺麗なブランコがあって、一人の女性が腰掛けていた。
うわ、なんかめっちゃ美人だな。カーキ色の温かなウェーブの掛かった髪がとても美しく、きめ細かな肌は染み一つない、しなやかで麗しい肌に思えた。
「あ、すみません、不法侵入しちゃって」
だが少しおかしいのは、その美人さんの目が閉じきっていることだった。
普通人と話すときは、目と目を合わせて話すもんだろ?
そんなことを知らないほど、この人がバカだとは思わない。
だとすると考えられることといえば、この人が意図的に目を閉じているか、それとも目を開けられない状態にあるか……。
「あら、もしかして道を間違えられたのですか? それはたいそうお困りでしょう……。確かに王都はたいへん広いですから、無理はない話かもしれません」
あれ、なんだこの人、めちゃくちゃ優しいぞ?
しゃべり口調もそうだが、なんか気遣いみたいなのが感じられて暖かい感じというか……自然と心がぽかぽかとしてくるな。ていうかなんで目をあけてないんだろう? 聞いてみようか。
「あー、はい。あの、ちなみになんで目を閉じてるんですか?」
「ああ、それにつきましては大変申し訳ございません。私、少々前に病にかかってしまいまして、現在目が開かない状態なのです。不快に思われたのでしたら申し訳ございません」
女の人は深々を頭を下げ謝ってきた。
へー、随分気品のある人だな。
でもそうか、やっぱりこの人目が見えなかったんだな。
それは不自由だろうな。可愛そうだな。でもあれか、逆にこういう可愛そうな人を苦しめることで、すごい背徳感を感じることができて、ぞくぞくするかもしれないな。うわ、なんか想像したら武者震いしてきた。一遍ぱぱっとやってみるのも悪くないかもしれないな!
「おい! お前殺してやろうか!」
俺は叫んだ。
まずは脅してたっぷり後悔させてやるのだ。
「あら、あの、申し訳ないのですが、それは私に対して仰っているのでしょうか?」
「そうだ! 死ね! 死ね!」
「えーと、そうですね。それはできません」
「なんでだよ! 命乞いしたって無駄だぞ! 俺はもうお前のことをぶっ殺すってきめたからな! その目が悪くて困り果ててる状態から、俺が解放してやる! 死ねばそういうのも感じなくなるだろ!」
「私はこの国の王の側室にございます。それも労働奴隷からの登用でございますから、私が私の処遇を決める権利を、私は持ち合わせていないのです。全ては王が管理されることですから」
「はぁ!? 何言ってんだよ訳分かんねぇこと言ってごまかしてんじゃねえぞ!」
俺はぶち切れてしまったのだった。よし、もうコイツころす。




