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ルーレット13

 俺は現在危機的状況にあった。

 なんか知らんが、いきなり矢を放たれたかと思うと、周囲をおじさんたちに囲まれていたのだ。

 ど、どうしろってんだよ! 俺武器とかなんにも持ってないんですけど!

 死ねっていうのか!?


「おい、お主どこからきた? 答えなさい」


 老人が威厳を醸し出しながら尋ねてくる。

 俺はあそこが縮み上がる思いだった。

 だめだ。これは目が完全に据わっている。

 何か返答を間違えたら確実に殺される。


「いやー、ちょっと道に迷っていたらオアシスを見つけましてね。ちょっくら寄ってみただけなんですよ」

「こんなところで道に迷うだと? これまで何をしていた」

「あ、さっきはなんかストームドラゴンとかいう魔物に追われてて、そいつから逃げているアフロの少女に出会って」

「なに!? マジキキにあったのか!?」

「あいつ、どこをほっつきあるいて!」

「そ、それで! マジキキはどうなったんだ!?」

「お前が助かってるってことはマジキキも助かったんだろ!?」


 村人は何やら大慌てで言葉をまくし立てている。

 どうやらあの子はこの村の出身の子だったようだ。


「あ、すみません。その子のことに関してなんですけど、ストームドラゴンに追いつかれそうだったので足を蹴り飛ばして脚部を負傷させて、まともに移動できなくしてからおってくるストームドラゴンに食わせました。いやー、予想通りドラゴンの足は止まってくれましたよ。あの子とっても優秀な人材ですね、囮として」

「……ころせ」


 次の瞬間、おたけびをあげながら男共が襲いかかってきた。

 あ! しまった! こんなことを素直にいったら、同じ村の仲間は絶対に怒るに決まってる! なんでこんなことに気がつかなかったんだ!?


 だがもう後悔しても遅い。

 村人たちは、もの凄い剣幕で、もう絶対に逃がさんとばかりに四方八方から俺を囲んできている。ああ、もう無理だ。ただでさえ弱っちい俺がこんな強そうなやつら複数人に囲まれて勝てるわけもない。逃げることすら不可能に近いだろう。もう終わったな、ついに俺の人生はここでついえるんだ。


 そして剣が眼前まで迫ってきて、その剣をよけるでもなく甘んじてうけた俺は――


 ――その剣が届く前に、景色がかき消えた。



「え?」



 気付けば俺は人混みの中にいた。

 周りを見てみると、例に漏れず中世風の街並みが広がっている。

 どうやら俺はどこかの街に転移したみたいだった。


「た、助かったのか? でも一体どうして……」


 考えてみたが、思い当たる節は一つしか無い。

 そう、この天使の羽ただ一つしか。


「また能力が発動した? あれ、ちょっと待てよ、これまでに発動したタイミングって……」


 俺は過去の発動した状況を思い浮かべてみた。

 これまでにこの能力は三回発動している。

 そしてその全てにおいて共通することがただ一つだけあった。

 恐らくだが、


「この能力は……俺を導いている」


 そうとしか考えられなかった。

 ごくごくシンプルな思考だが、あながち間違ってはいないのではないだろうか。

 まずこの能力で亀が向かいに来てくれる範囲まで案内してくれた。

 そして二回目に発動することで、おそらく目的地である砂漠に転移。

 さらに三回目で、危険を回避するために、羽の能力でどこか違う地へ飛ばしてくれた。

 そう推理することができるのではないだろうか。


「あの姫も砂漠に俺のパートナーとなる存在がいるって言ってたしな。あれ、パートナーだっけ? 協力者だっけ? まぁいいかどっちでも。とにかくそういう推理だとしたら、ここに飛んできたのも何かの理由があったりするのか?」


 俺が首を傾げていると、ふと近くを通りかかる人の声が耳に入った。


「おい、アンジャン様の演説が始まるらしいぞ!」

「うそだろ、どこだ! はやくいこうぜ!」


 そういって二人の男は一目散にどこかへ駆けていった。

 うーん。このタイミングでこのイベント。何か匂う気がしてならない。


「もしかすると、この男たちの会話を聞かせるためにこの羽はこの場所に転移させたのでは?」


 たまたまかもしれないが、考えれば考えるほどそうとしか思えなくなってきた。


「仕方ない、行ってみるか」


 何もすることがないのだ、行ってみるだけただというもの。

 俺は男たちの後を追いかけて、演説があるという方向へ走った。




 演説はすでに始まっていた。


「えー! ドーナツというものは! とってもおいしくて! とっても素晴らしいものなのです!」


 広場に大勢の人が駆けつけていた。

 そして一つ高くなった高台の上に、一人の幼女がマイクのようなものを片手に何か叫んでいる。

 少女はとても愛らしく、アイドルのような子だった。


「えー! だからこそ! みなさんドーナツの歌を歌いましょう! ドーナツの歌を歌えば、みんな幸せになれるはずです! さぁ、いきますよ! ドーナツは~甘くて~酸っぱくはなくて~辛くもなくて~とにかくやーばーいー♪ でもそんなにはヤバくなく――」


 そして何やら歌い出した。

 おい、何だこれは。

 全部バカだった。

 バカとしか言いようがなかった。


 何がいいのか知らないが、広場に集まっている人達もみんな楽しそうに歌っている。

 俺はこの状況が怖くなった。なんなんだ? 人格破綻者の集まりかここは。

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