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1.天使が婚約破棄されるとか私には理解が追い付かない

 田舎の小国、マリネラの第三王女サラは父イアンに溺愛されていた。末子ということもあるのだろう。その将来を心配したイアンは、産まれた直後に持てる力を全て使い、隣国である大国のブルガー王国の皇太子であるタラントと婚約させることに成功した。この婚約により両国の関係は一層、懇意になり、小国であるマリネラにとって政治的にも意味あるものであった。産まれながらにそのような運命を背負ったサラであったが、周りの期待どおり、立派な淑女として成長していった。それと反比例するように婚約者のタラントは……



「サラ様、大変です!」

 年のころ16ぐらいだろうか。1人のメイドが慌てて部屋に入ってくる。その姿にサラは少し驚いた様子で尋ねた。

「あらあら?どうしたの?」

「また!あの皇太子が!」

メイドは顔を真っ赤にして、怒りの表情を浮かべていた。

「まあ、メル。そんなに顔を真っ赤にするとかわいい顔が台無しですよ?」

「あ、すみません。って!そんな場合じゃないんですよ!あの女たらしがまた!女性問題ですよ!」

「あら?今度はどんな問題ですか?」

 メルの表情とは正反対でサラは気にした様子がなかった。

「今度は庶民の女性との問題です!サラ様という婚約者がありながら、この1年で明るみになっているだけで3度の女性問題ですよ!許せません!」

「そんなに怒らなくても。いつものことじゃありませんか」

 確かに、タラントの女性問題はいつものことである。ただ、メルが許せないのはそんなことではない。親が決めた婚約者といえども、小国の第三王女であるサラを明らかに軽んじているその態度が気に入らないのだ。許せないのだ。この天使のようなサラ様をなぜここまで軽んじるのか!メルの心はそのような思いでいっぱいであった。それでもサラはいつも気にした様子もなく流すのであった。

「わかりました。サラ様がそういうのでしたら私はこれ以上、申しません」

「それで、そろそろ出発ですか?」

 急に本題になり、メルは姿勢を正した。

「はい、そろそろブルガー王国に向かいます。本日はサラ様の16歳を祝うパーティーです。いよいよですね」

 サラは少し遠くを見つめた。メルの言うとおりいよいよなのだ。16歳になり開かれるパーティで二人の結婚が正式に公表され、そこから約半年に渡る結婚の儀がスタートする。メルはこれから忙しくなると改めて気合いを入れなおしたのと対照的にサラは少し寂しそうに笑みを浮かべていた。



 絢爛豪華とはまさにこのことであった。大陸全体からみると中規模のブルガー王国であるがこの地方では大国である。マリネラとは比べ物にならないほどの装飾が施さられたその部屋はそれだけで両国の差を感じさせるものだった。

 メルは遠くからサラを眺めていた。他国の要人と歓談しているその姿はこの装飾の中でもなお光る存在であり、そのような存在にお仕えできて幸せだったと思う。この後、タラントとの結婚の儀が全て終われば私の役目も終わることになる。少しの寂しさと今後を憂う気持ち。この国に嫁いでサラ様は本当に幸せなのかと。いや出すぎた真似かと思考を停止する。今は二人の将来を祝福したい。寂しさはそのうち慣れるだろう。そんなことを考えているとメルはあたりの様子に気づく。何やら騒がしい。

「何が悲しくて小国の娘を嫁にしなければならないのか!」

 声が場内に響く。タラントの声だ。その声は相手を心底馬鹿にしたような声であった。王族としても豪華すぎる衣装に隣にはこれまた豪華すぎる衣装に身を包んだ女性が一人。相対する女性、サラは王族としては質素であるがそれを感じさせない佇まいであった。

「我が国は一等。田舎の小国は二等。二等の最上位であろうが、一等とは比べるにも値せず!」

 メルの頭は怒りで沸騰しそうだった。対照的にサラはタラントを穏やかにまっすぐに見つめている。

「それではどうなさいましょう?」

 しんとした場内に凛とした声が響く。周囲もまさか国王同士が決めた婚約をどうにかするとは思っていなかった。小国であろうが賢王と名高いイアンが統治するマリネラとの国交を考えれば政治的にも重要である。ただの皇太子の戯言だろうと誰もが思っていた。

「ブルガー王国、皇太子としてここに宣言する!マリネラの第三王女との婚約を破棄する!」


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